innocent world  【EPISODE 0】 投稿者: PELSONA
  天津祖神おしえのりごちてのたまわく
  もし痛むとこあらばこの十種の宝をして
  ひと ふた みよ いつ むゆ ななや ここのたり
  といひて ふるへ ゆらゆらとふるへ
  かくせば 死れる人も生き返りなむ
  これすなわちいわゆる ふるへのことのもとなり


「さて・・・と。これでやっと一つか。」

まさきはため息混じりに言うと、手に持っている藍色の玉を光にすかしてみる。

「なんで宗主様はこんな物が必要だって言うのかねぇ・・・」

それは光にすかしてみても普通の石と変わりない。
何故、そんな物がわざわざ山中の祠に置いてあるか、まさきには理解できなかった。
ましてや、何故FARGO宗主たる物がこんな物を必要とするのかともなれば、想像すらできない。

「なあまなみ、代わりに普通の石をわたしても判らないんじゃないのか?」

まさきは傍らにいる女性に話しかける。
勿論、本気であるはずもなく、ただの軽い冗談だった。

「それは命令違反になります。」

そんな冗談に対してまなみが返した言葉は簡潔で、面白みのない物だった。
かつてのまなみであれば本気で受け取ってしまいおろおろするか、同じように冗談で返した物だ。
本当に変わってしまったな・・・とまさきは思う。
その変わってしまう大本の原因を作ったのが自分だということも知っている。
だからなおさら、心が痛かった。


一年前、まなみとまさきは恋人同士だった。
まさきが一緒に暮らそうと言ったとき、まなみが承諾の返事をしてくれたときのことを今でもよく覚えている。
まなみは自分のことを好きでいてくれている・・・そう実感ができ、うれしかった。
だが、同棲などするべきではなかったのだ。
その、近すぎる距離や、法的に結ばれる結婚とは違った曖昧な関係。
そんな微妙な関係から甘えが生じ、浮気をしてしまう。
何回も、何回も。

「私、もうこんな関係耐えられない。
 私のことが厭ならちゃんと厭って言って?」

そんな台詞がまなみの口からでるまで、まさきは気付きもしなかった。
自分が彼女を追いつめているという事に。
いつだって自分が謝ればしょうがないと良いながらも許してくれると思っていた。
同棲をしているという事実が。
自分のことを好きだと思っているという錯覚が。
まさきがまなみにとる態度を軽率な物にしていたのだ。

気がつけばまなみは男性不信になっていた。
自分も含めて、男と話すことができなくなっていた。
浮気をするたび、謝るたびにもう浮気はしないと誓う。
だが、しばらくするとまた、他の女の元へといってしまう。
そんなまさきの行動が、彼女に男はすぐ裏切るという事を植え付けてしまったのだろう。
そして、まなみはまさきの元を去り、行方をくらませてしまう。
ただ、風の便りでどこかの新興宗教に入ったという事を聴いただけだった。

大切な物は失ってみて初めて判る。
まさきにとって、それがまなみだった。
必死の捜索の結果、彼女が入ったところはFARGOという宗教団体だと判る。
入信者がすべて女性だという事、不可視の力と呼ばれるものを使えるようになること。
そんな特異な事が目立つ宗教だった。

必死の行動からまさきは教団員として入信することを許される。
一生退団はできないとのことだったが、そんなことまさきにとってはどうでも良かった。
まなみに再び逢えることができるのであれば。
だが、そこで目にした物は修行とは考えられない非日常。
そして、不可視の力という物を得、操り人形のようになったまなみだった。

ロスト体になることを免れたからと言って、普通に生活ができるかと言えば答えはNOだ。
不可視の力を操るには強靱な精神力が必要となる。
その多くは力を押さえつけるだけで精神力を酷使してしまい、操り人形のようになってしまう。
そんなコントロール体に常につきそい、不審な行動をしよう物なら処理する。
その仕事に、まさきは志願した。
どんな理由であれ、まなみと一緒にいてやることが今の自分にしてやれることだと。
裏切りに対する謝罪、そして精一杯の愛情表現だと思っている。
だから、まなみと一緒にいられる限りどんな任務でも遂行しようとまさきは思う。
じぶんやまなみが駒の一つにすぎないと判っていても。


「命令違反・・・か。それじゃあ次の生玉とか言うのを取りに行くか」
「はい」

まさきは先ほど手に入れた藍色の石――死反玉とかいうものをしまう。
そしてまなみに対して言った。

「命令だ。次の神宝の場所を探せ」

命令しないと不可視の力は使わない。
だが、まさきにとってまなみに命令するという事はどうも慣れなかった。
しかし、そうしないと任務は果たすことができない。
まなみの側にいてやることすらできないのだ。

まさきが命令をすると、まなみは目を閉じ、意識を集中させる。
不可視の力を使い、神宝の出す波動を感じ取っているのだ。
やがてまなみの瞳は開かれ、一点を指さす。

「ここから南東の方角にあると思われます」

まさきはまなみにねぎらいの言葉をかけるが、まなみはなにも言わない。
一つため息をつくと南東の方角に向かって車を走らせた。
次の神宝を手に入れるために。

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PELSONA:おーし、なんとかプロローグは書いたぞっと。
どっぺる詩子:そんなにできてすぐ投稿ーってやってるとまた間があくのに・・・
PELSONA:いいの。その方が次ぎも書かないといけない気になるから。
どっぺる詩子:そういってる割にはこの作品。
      5話まで書いたくせにこうやって書き直してるじゃない
PELSONA:ぎくぎくうっ!!!!!
どっぺる詩子:どーせまた同じようになるんでしょ
PELSONA:そっ、そんなこと無いぞっ。
        前向きに善処するつもりだっ!!
どっぺる詩子:どーだか。
PELSONA:そんなこと言ってるとこの作品でおまえはださん。
        それどころか永遠に詩子SSを書かないでいてやるっ!!!
どっぺる詩子:・・・・・・・・・ごっ、ごめんなさい
PELSONA:ふっ、創造主に逆らうとこうなるのだ
どっぺる詩子:(いつか刺してやる)

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