―ミスカトニック大学付属図書館―
深い闇に覆われた大学の敷地内にそれはたっている。
慎と。生物の息吹すら感じさせない建物の中、足跡だけが響いている。
コツ コツ コツ コツ
非常灯の明かりだけを頼りに歩いているのは二人。
一人は何処にでもいるような男。
そしてもう一人。
連れ添うように歩いているのは腰までの長い髪をたなびかせた女性。
その瞳に意志の色はない。
男がその歩みを止めたのは図書館内の最も奥。
重要文献と記された古めかしい本が立ち並ぶスペースにある扉の前だった。
立入禁止
もう何年もそのままであるような扉。
男は。鍵を手にその鍵穴に鍵を差し込んだ。
ガチャッ ガチャガチャガチャ
だが、鍵が合わないのか、壊れているのか。その扉が開く気配はない。
男は。静寂を破るかのように女に向かい言った。
「まなみ・・・扉を破壊してくれ」
女が――まなみはその言葉に頷くと扉に意識を集中させる。
そして次の瞬間。
バキィッ!
大きな音を立て、扉はただの木片と化した。
扉の奥にあるのは階段。
螺旋状に渦巻くその階段は日の光すら届かない地下に向かって続いている。
男は懐中電灯を取り出すと階段を照らした。
「先に進むぞ」
男はそう促し階段を下りていく。
そしてそれに続くまなみ。
二人は久しぶりに外気に触れた階段へと足を踏み入れた。
階段は人一人がやっと通れると言うほどの狭さだった。
作られたのは中世だろうか。
懐中電灯の明かりを頼りに下りる冷たい石の壁に囲まれた階段は何処までも続くように思える。
永遠とも思えるような長い時間の後、二人は狭いホールにたどり着く。
壁際には木で作られた本棚。中央には石のテーブル。
「それじゃ、捜索を始めよう」
男の言ったその言葉に軽く頷くと、まなみは本棚を物色し始める。
男はまなみをしばらくの間見つめていたが、やがて自嘲気味の笑みを浮かべると自分も本を物色し始めた。
『大いなる教書』 Grand Grimoire、『ルルイエ異本』 R'lyeh Text、『無名祭祀書』 Nameless Cults
『セラエノ断章』 Celaeno Fragments、『屍食教典儀』 Cults of Ghoul、『クトゥルー教団』 Cult of Cthulhu・・・
本のタイトルを目で追っていく。
男はこれらの本がどのような物かは分からなかったが、貴重な書物であると言うことは理解できた。
一冊を手に取り、本を開いてみるが単語の一つすら意味は分からない。
この本を手に入れるのに能力者を連れていく理由。
教団の思惑が理解の範囲外であることを痛感すると本を閉じた。
2,30分ほどだろうか。
本をあさるのに疲れた男が休憩でも入れようとしたとき、まなみが口を開く。
「発見しました」
急いで駆け付けるとまなみは手に二冊の本を持っている。
聖書より一回りほど小さいその本は薄汚れた表紙に微かに金の刺繍が顔をのぞかせている。
微かに読みとれるその本のタイトルは
『ネクロノミコン』 Necronomicon
『ナコト写本』 Pnakotic Manuscripts
男は手持ちの目元本のタイトルが一致することを確認する。
「よし。確かにこの2冊だな。お疲れ。まなみ」
まなみにねぎらいの言葉を掛けると、ダミーの本を本棚に入れる。
「いえ。命令ですから」
だが帰ってきた言葉は無機質で、抑制のない声だった。
一瞬、寂しげな目をする男、
だが、すぐに元の表情に戻る。
「ここにはもう用がない。急いで立ち去ろう」
男はまなみを連れ、階段を引き返していった。
この書物が何を生み出そうとしているかも知らないままで。
――PM3:50 校門前――
授業も終わり、自宅へと帰る生徒たちでにぎわう校門前。
その人込みの中に浩平はいた。
「さてと。帰りに商店街にでも行くか?」
隣を歩いている同じクラスの女の子に言う。
女の子はしばらく何かを考えるような仕草を見せたが、考えがまとまったらしくペン持った。
『あまいものがたべたいの』
浩平はそれを見ると笑顔を浮かべて言う。
「そっか。なら山葉堂でワッフルでも食べるか?」
うんうん っと。大きく首を上下に振る。
『はやくいくの』
そう描いたスケッチブックを見せると浩平の腕にしがみつく。
「おいおい。これじゃ走れないだろ?」
軽くたしなめているとき、浩平の視界に見たことのある人がこっちを向いて立っていた。
「・・・悪い。澪。また次にしてくれないか?」
頬を膨らませる澪だったが浩平の表情を見ると絡めた腕をほどく。
それは澪が今まで見てきた中で一番厳しい表情をしていた。
即ち、驚愕。
『先に帰るの』
そう書くと、家に向かって走り出す。
後に取り残された二人は互いに距離を縮めていった。
「久しぶり。元気にしてたみたいだね」
微笑み、話しかける。
だが、話しかけられた浩平は微笑むような余裕はなかった。
ただ、一言を言うので精一杯だったのだ。
「氷上・・・氷上シュンか?」
問いかけられた男は笑みを絶やさずに穏やかに言う。
「どうやら覚えていてくれたみたいだね。うれしいよ」
目の前に立っていたのは消えたはずの男。氷上シュンだった
」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
PELSONA:どもども。一週間ぐらい来ないと言いつつSSを書いてたPELSONAです。
どっぺる詩子:引っ越しの準備じゃないのぉ?
PELSONA:いや、俺がやるのはだいたいやったし。息抜きもかねて。
どっぺる詩子:そうなんだ・・・。でもこれ書くのも久しぶりだよね?何で短編ばっかり書いてたの?
PELSONA:なんか、書けなかった。ま、文章表現力のなさが原因だけどね。
どっぺる詩子:じゃ、作品説明・・・できる?
PELSONA:はい。今回のは・・・・ディープでごめんなさい。特にAパート。知ってる人は何に使うか分かると思うけど。
どっぺる詩子:そこはあえて語らずってことだね。
PELSONA:そういうこと。あと、図書館にあるって設定の本は一部間違いがあります。実際にはおいてない書物も雰囲気作りのためにあることにしました図書館内の描写も適当です。
どっぺる詩子:アメリカまで取材には行けないしね。しょうがないよ。
PELSONA:ま、想像力で補ってるとこも多いので許して下さい。それと感想は14日分から書かせていただきます。
どっぺる詩子:今までかいてくれた人。ごめんね。
PEL&詩子:ではまた逢いましょう〜〜〜
PELSONA:っと、HPもよろしくお願いしますっ^^;左上がSSコーナーへの入り口です^^http://www.grn.mmtr.or.jp/~pelsona/