IRON MAIDEN 投稿者: PELSONA
それは米国第51番州(別名日本)の菓子会社が作ったイベントである。
日本全国の乙女たちが「ちょこれいと」を意中の男性に渡し、告白するという好きな男がいない女の子にとってははた迷惑な、もてる男にとっては念願の、そしてもてない男にとっては悲願の日。
あまたの人々の念願渦巻くその日とは!!
  「聖バレンタインデー」
これは聖バレンタインデーに命を懸けた乙女たちの物語である。

「さてと・・・そろそろ出発しないと間に合わないわね・・・」
蒼い髪の毛を二つに分けた少女・・・いや、乙女がそう言った。
「昨日のうちに作っておいたチョコは鞄に入れたし、後は・・・・・」
傍らにあった日本刀を手にするや、真剣な表情でつぶやく。
「邪魔者をどう排除するか・・・ね」
今、一人の乙女が立ち上がった。


第一話  無言の暗殺者

いつもの通学路を歩いていた七瀬は曲がり角にさしかかっていた。
「!」
背後に気配を感じ、とっさに横に飛ぶ。
  バシャッ!! 
今まで七瀬がいたところには割れたどんぶりと、ラーメンが広がっていた。
『よくかわしたの』
電柱の陰から何の気配も感じさせずに現れたのはかわいらしい感じのする女の子だった。
「・・・あなたも折原にチョコを渡す気なのね」
宝刀『大和撫子』を構え、澪に問いかける。
ちなみに人を切っても安心?な逆刃刀だ。
『そうなの』
「なら・・・消えてもらうわっ!!」
そう言うが早いかスケッチブックに何かを書いている澪の懐へ飛び込むと澪の頭めがけて刀を振り下ろす。
「真剣勝負の最中に余所見をしないことねっ!!」
勝利を確信し、思わず笑みを浮かべた七瀬の視界に入った物は―――
『あまいの』
その文字と共に地面に落ちていくスケッチブックだけだった。
「!」
刹那、背中に熱を感じる。
「後ろかぁぁっ!!」
そのまま後ろに向かって刀を振ると、相手との距離を取る。
一方の澪は代わりのスケッチブックを鞄から出すと2,3メートルほど離れた。
「なかなかやるわね・・・」
『私に不意打ちは効かないの』
にやり・・・と不適な笑みを浮かべる澪。
「・・・・・クッ」
『潔く死ぬの』
その文字を見せると同時に大量のラーメンを投げる澪。
ちなみにラーメンのどんぶりは服の中から出している。
どうやっているのかはしらないが・・・
「はあッ!!」
そしてそのすべてを避け、あるいは切り捨てていく七瀬。
その攻防が10分を過ぎたとき、唐突に澪の攻撃が止まった。
「何よ。余裕でも見せてるつもり?」
服の中をごそごそと探っている澪。
その顔には焦りの色が濃く浮き出ている。
「いまだッ!」
品切れか?と勝機を悟った七瀬は相手に向かって突っ込む。
その時、何かを探り当てたらしき澪が顔面めがけて何かを投げつけてくる―――
・・・避けられないッ!!
  ぽてっ
妙な擬音と共に七瀬の顔面に当たったのはワッフルだった。
「・・・どうやら品切れのようね」
静かにつぶやく。
反対に焦りの色を隠せない澪。
『私たち、気が合いそうなの』
  にこおっ
ぎこちなくほほえむ澪。
「全っ然そうは思わないわっ!!」
ゆっくりと・・・澪に歩み寄る。
『み、右ですか?』
首を左右に振りながら聞く澪。
「YES」
『ひ、左もですか?』
「YES」
単調に答えながら刀の鞘に手をかける七瀬。
『りょ、両方ですかぁ?』
「YESYESYES・・・]
激しく首を左右に振りながら問いかける澪。
すでに目には涙が潤んでいる。
『も、もしかしてオラオラですか?』
「YESYESYESYESYESYESYEESYES・・・・・」
にやり・・・と慈悲のない表情をし、刀を鞘から解き放つ。
『ひっ、ひいぃぃぃぃぃぃーーーーっ!!』
恐怖におびえる言葉までスケッチブックに書き留める澪。
ここまで来れば立派だとも言えるだろう。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ・・・・・・・」
声無き声と共に静かに倒れていく澪。
「おまえが俺に勝てなかった理由はただ一つ・・・」
何故か男言葉を使う七瀬。
全然乙女っぽく無いぞ・・・
「てめーは俺を怒らせたっ!!」
澪に背を向け、勝ちポーズと共に決め台詞を吐く。
『やられたの』
あとには何故かやられたときの台詞が書いてあるスケッチブックだけが残っていた。
                           

第二話  猫たちの女王

空き地にさしかかったとき―――
「にゃお」
すさまじい殺気と共に聞こえる猫の声。
「誰ッ!」
空き地の中のくぼみから現れたのは一匹の黒猫だった。
「ただの猫・・・か」
「ただの猫じゃないよ」
突然、声をかけられ振り向く。
「・・・瑞佳」
「悪いね、七瀬さん。浩平にチョコを上げるのは私だけで十分なんだよ」
振り向いた先には何故か猫のきぐるみをきた瑞佳が立っていた。
「・・・瑞佳。一つだけ聞いてもいい?」
「そう。素直にあきらめた方が身のためだよ」
「そのきぐるみ・・・何?」
「バトルスーツだよ」
・・・どう視ても戦闘用には見えない。
ちなみに尻尾はぴょこぴょこ動いてる。
「・・・・・変だと自分でも思わない?」
「へ、変じゃないもんっ!浩平だって似合ってるって言ってくれたもんっ!!」
真っ赤になって答える瑞佳。
・・・折原の前で着たのか
「そ、そう。良かったわね」
冷や汗を出しながら返答する七瀬。
「もう言い残すことはないみたいだね・・・」
言って構える瑞佳。
「これだけは・・・譲れないわ」
そして七瀬。
にらみ合うこと数刻、先に動いたのは瑞佳だった。
「ねこぱぁーんちっ!!」
ジャンプすると、何処から出したのかゴムボールを投げつけてくる。
「・・・・・・・」
無言で切り捨てる七瀬。
「くっ・・・なかなかやるわね」
焦りの色を濃く出しながらつぶやく瑞佳。
「パンチじゃないじゃない。」
淡々と、至極当然な意見を言う七瀬。
「じゃ、じゃあみんなお願いっ!!」
  にゃぁ ミャー みゅーっ(?)
長森がそう言うと、周りから野良猫が集まってくる。
「あのぉ〜もしかしてフクロですか?」
数百匹の猫に囲まれ問いかける七瀬。
「みんな行ってえっ!!」
無視して号令を出す瑞佳。
  フギャーーーッ
それを合図に数百匹の猫たちが一斉に七瀬に襲いかかっていった。
「クッ!!」
と、同時に飛ぶ七瀬。
ジャンプした七飯はそのまま鴉に捕まり、瑞佳の頭上へと移動する。
・・・明らかに物理的法則を無視しているが。
「しまったっ!」
護衛の猫さえも攻撃に出した瑞佳を守っている猫はもういない。
「アンヌムツベ!!」 
またもや意味不明の叫び声と同時に空中から長森に斬りかかる。
  バキイッ!!
振り下ろした刀は瑞佳の肩を打ち付けていた。
「私はだよだよ星人じゃないもん・・・」
遺言?とともに崩れ落ちる瑞佳。
制服を翻し、刀を鞘へと戻す。
「大自然のお仕置きです・・・」
去る人の言葉を残し、七瀬は空き地を後にした。


第三話  盲目の剣士

数多の敵を倒し、七瀬は校門前についていた。
「いるんでしょ?出てきなさいよ」
ある民家のインターホンに向かって言う七瀬。
借金の取り立てに見えないこともない。
「私ならここにいるよ」
がらがらがら と玄関から出てきたのは川名みさき。その人だった。
「じゃ、早速始めようよ。早く渡さないと食べちゃいたくなるから」
ドラム缶いっぱいにはいっているチョコに目をやってそう言う。
「いくら何でも多すぎると思うけど」
「そうかな?」
「そうですよ」
「そうなのかな?」
「そうですよ」
「そう・・・なのかなぁ・・・」
極一部の人にしか分からないようなネタを繰り広げる二人。
それは良いとして。
「シルバーチャリオッツ!!」
先に仕掛けたのはみさき先輩だった。
一瞬で懐に飛び込むとサーベルで空中に打ち上げられる。
と、同時に全方向からの斬撃。
「ブラボー・・・おおブラボー・・・」
つぶやくみさき先輩。
「クッ!」
それを何とか受け止める七瀬。
「守ってるだけじゃ勝てないよ」
目が見えないと言うのに的確な攻撃をしてくるみさき先輩
・・・このままじゃやられるっ
そう思ったとき、突然疾風がまき起こる。
   ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!
「留美っ!!おまえの信念とはその程度なのかっ!!」
   ドンッ!!
「風が止んだとき、電信柱の上にたたずむ人影があった。」
驚きが隠せないと言ったように言う七瀬。
「し、師匠?」
師匠と呼ばれたその人物は人差し指をビシイッ!っと立てて言った。
「留美っ!おまえは戦いにおける死を覚悟しているなっ!!」
怒気を含んだ声と共に大ゴマになる。
「・・・はい」
と、七瀬。
「甘い!練乳蜂蜜より甘い!!甘すぎるぞおーーーっ!!」
 バァァァーーーーンッ!!
目だけアップになると言葉を続ける。
「その信念はそれで結構。だがおまえのことを待っている人たちはおまえが死んだことを聞いてどう思う?」
「・・・・・・・」
「生と死を分ける一歩。その一歩を踏み出したとき、おまえはもっと強くなれる!!愛する人をおまえの手で守ってやることが出来るのだっ!!」
「がぁーーーーーーんっ!!!」
口でショックを現す七瀬。
「さあ、その思いを、力を見せて見ろおっ!!」
「分かりました!師匠!!」
瞳に炎を燃やしながら七瀬が答える。
「・・・よくわかんないけど、もう話は終わったの?」
問いかけるみさき先輩。
待っててくれるなんてやっぱり先輩はいい人だ。
「ふっ・・・今すぐ相手をしてあげるわ」
偉そうに言う七瀬。
その瞳には絶対の自信がこもっている。
「シルバーチャリオッツ!!」
その声と共に斬撃を出してくるチャリオッツ。
その攻撃をバックステップでかわし、刀を鞘に戻す。
「くらい・・・やがれーーーっ!!」
突進と、同時に見えるは九つの閃き。
「よくわかんないけど、まいったって言っておくよ・・・」
そして倒れゆくみさき先輩。
「飛天御剣流 九頭龍閃・・・遂に完成したわ・・・」
静かに目を閉じ、感慨に耽る七瀬。
「師匠・・・ありがとうございます・・・」
「ふっ・・・雛はいずれ巣立つものよのう・・・」
滝のような涙を流しつつつぶやく師匠。
そうつぶやきが聞こえた時、師匠の姿はもう見えなかった。


第四話  絶対の防御壁

みさき先輩を打ち破った七瀬は校門へと足を進めていた。
「ここまで来れば後少しね・・・」
自然と足取りは軽くなり、頬もゆるんできている。
「並み居る敵を蹴散らしてチョコを届ける・・・乙女にしかなしえない技よね」
「・・・待って下さい」
ぽつり、と。つぶやくような声が聞こえ七瀬は振り返る。
振り返った先。中庭の中央に人影がある。
「里村さん・・・あなたもなの?」
「・・・ホワイトデーには三倍返しです」
淡々と答える茜。
・・・やっぱりチョコレートワッフルなのかなぁ・・・
作者の戯れ言は無視するとして。
「そう・・・所詮乙女は拳と拳でしか語ることの出来ない哀れな生き物・・・」
刀に手をかけ、言い放つ七瀬と
「違います」
即座に否定する茜。
「と、とにかくっ!邪魔するのなら切るわっ!」
ごまかすように声を張り上げる七瀬。
なんだか滑稽だ。
「そうですか・・・それではあなたを、殺します」
  ヒュウゥゥゥーーーッ
静かな殺気を放つ茜。
と、同時に周りの気温が下がったような錯覚を覚える。
「殺せる物なら殺してみなさいっ!」
答える七瀬は突進すると、いきなり大技を放つ。
「命短し恋せよ乙女!一撃必殺、九頭龍閃っ!!」
だが!
「・・・厭です」
そう言った茜の元に七瀬の刀が届くことはなかった。
茜に触れるすれすれの所で刀が止まってしまうのだ。
「ば、馬鹿なあっ!!」
驚愕の表情を浮かべる七瀬。
一瞬躊躇するが刀を構えると再び突進する。
「くっ、九頭龍閃っ!!!」
「・・・厭です」
  ピキィィィンッ!!
金属音がし、再び刀が寸前で止まる。
「あなたの攻撃では私に攻撃を当てることはできません」
静かに茜が言う。
「人の持つ力ではATフィールドを破ることは不可能なのです」
絶対無敵の防御を誇る相手は絶対負けることがない。
即ち、イージス理論。
それを実践しているのが他でもない、茜だった。
「そう・・・なら人でない物の力ならどう?」
そう言うと、不適な笑みを浮かべながら刀の柄に手をかける。
「宝刀、大和撫子の真の姿、見せてあげるわ」
静かに言いながら柄に細工をするとかちゃ と音を立てて刀身がはずれる。
「・・・なにをするつもり?」
柄だけになったそれは七瀬の剣気を食らい、刀身として形をなす。
「・・・光の剣ですか?」
「ちがうわっ!」
ムキになって否定する七瀬。
ちょっと怪しかったりする。
「使う物の生命力をエネルギーにする妖刀。ムラサメがこの刀の正体よ」
  バアーーーンッ!
効果音と同時に、刀を構える。
「無敵の盾はすべてを砕く矛にて破れるは道理!だが形をなさぬ矛ならば砕けることはないっ!」
訳の分からない説明と共に七瀬が刀を構える。
「・・・行くわよ」
  ヴンッ
答えるように刀がその輝きを増す。
「・・・厭です」
そして対するがごとくATフィールドを展開する茜。
「ほえろ、ムラサメブレードッ!真・魔人剣っ!!」
刀身を形作る剣気が刃となって襲いかかる。
  バシュウウウウッ
「クッ・・・」
七瀬の生命力を上乗せされたそれはATフィールドを切り裂いていた。
と、残った衝撃波で吹き飛ぶ茜。
「どう?もうATフィールドに意味はないわよ」
勝ち誇ったようにそう言う。
「・・・・・わかりました。私の負けです。」
スカートをについた砂を払いながら茜が言った。
「イージス理論が破れた今、私があなたに勝つすべはありません」
静かに。そう言う。
「・・・あなた。なかなかいい腕だったわよ」
さわやかに笑みを浮かべ、握手を求める七瀬。
今、一つの戦いがここに新たな友情を生み出していた。
「・・・厭です」
前言撤回。


最終話  MIZUKAの世界

最後の障害を突破した七瀬は教室へと向かっていた。
「まってて・・・折原」
これまでの辛い戦いを思い出しながら愛する人の名を呼ぶ。
「色々あったけどやっと・・・やっと私のチョコを渡せるんだ・・・」
と、思わず涙ぐむ七瀬。
「いけない、涙が出ちゃう。だって女の子だもんっ♪」
乙女らしい?台詞を言い、教室へ向かう。
最後の階段を上りきり、教室への扉を開けようとした瞬間。

   永遠はあるよ・・・
       ここにあるよ・・・

視界が真っ白になった。

視界に移るのは美しい風景。
そこに、七瀬はいた。
「ここ・・・何処?」
確か自分は教室へ向かっていたはずだ。
それが何故こんな所に?
自問自答する。
「ようこそ。おねいちゃん」
「誰っ?」
ムラサメブレードを構え、声のした方へ向き直る。
そこにいたのは薄い服を着た女の子だった。
「瑞佳・・・じゃないわね」
瑞佳の面影を感じさせる少女。
その少女が自分の方を見てほほえんでいる。
「おねいちゃん。おにいちゃんにチョコレートをあげるんでしょ?」
「おにいちゃんって・・・折原のこと?」
少女は答えない。
ただ、静かにほほえんでいる。
「おにいちゃんにふさわしいかどうか。わたしがみきわめてあげる」
折原浩平にチョコを渡すのは誰なのか?
七瀬にその資格はあるのか?
そして、最後の戦いが始まった。


 一方、そのころ・・・

「みゅーっ」
「おっ、繭。このチョコ俺にかっ?」
「みゅっ♪」

浩平は幸せそうだった。

」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

PELSONA:みなさま。お久しぶりです。やっとテストが終わりました。
どっぺる詩子:おつかれさま。後は引っ越しだけだね。
PELSONA:D詩子と新居に引っ越すのは4日後。それまでにストックを放出します。一日早いのはネタの重なり防止用^^;
どっぺる詩子:バレンタインネタだからだけだけどね。
PELSONA:まーね。じゃ、作品の説明。
どっぺる詩子:今回のはパロディだらけです。全部で、えっと・・・
PELSONA:細かい?のを併せてたぶん10個ぐらいあるはず。
どっぺる詩子:全部分かった人っているのかな?
PELSONA:さぁ?全部分かった人は言って下さい。抽選で一名にD詩子を一晩貸します。
どっぺる詩子:・・・厭です
PELSONA:だからキャラ違うって・・
どっぺる詩子:いいの。どっぺるだから。
PELSONA:んなむちゃくちゃな・・・
どっぺる詩子:それよりタイトルの説明、忘れてるよ。
PELSONA:あ、そうだ。えっと、タイトルはそのまま「鉄の女」って訳して下さい。けっして中世ヨーロッパの拷問の道具じゃありませんよ。
どっぺる詩子:分かる人あんまりいないと思う・・・っていうか、そんなのあるの?
PELSONA:確かあったはず・・・では、二作品目をどうぞ〜

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