キロロ 投稿者: PELSONA
 
 私がその気持ちに気付いたのは、ある事件がきっかけでした。転校したての私は、それまでの自分を捨て、新しい自分――女の子らしい女の子になろうとしました。その努力のかいもあり、私は男の子に人気があるようになりました。でも、そのときに私は考えるべきだったのです。その行動が他の女の子たちからどう思われているのかを。
 それは、初めは些細な出来事でした。というのも、椅子の上に画鋲が置いてあったのです。私の席は窓側の後ろから二番目ですから、そんなところに画鋲が落ちたりすることはありません。これは嫌がらせだと初めに思ったのはそんな出来事からでした。そのときに私は折原という名の男子生徒に犯人を突き止めて欲しいと頼んだのですが、これは決して復讐心が起こした行動ではありません。私は男の子の人気を取ろうとして媚びでいたのではない。ただ、私の理想とする乙女になりたかったのだと言うことを告げ、謝りたかったのです。 彼と、仲良くしている女生徒、長森さんの協力もあり、犯人はすぐに分かりました。私のクラスの女の子グループの中心的存在のHさんです。そのことを折原君から告げられた私は悲しみや、怒りより衝撃の方が強かったように思えます。というのも、私はそれまでHさんとはそう親しい間柄じゃなかったのですが、私に敵意を持っているとは思えませんでした。どちらかというと好意的な物を持っていると感じていたからです。そのこともあり、私はどうしたら許してもらえるかと言うことを自分なりに考え、焼き菓子を作っていくことにしました。乙女を目指していた私は菓子づくりの練習はしていたので味に自信はありましたし、少しでも私の誠意が伝われば。そうと思ったのです。
 結果は残酷な物でした。Hさんは「まずい」という言葉とともに私の作った焼き菓子を投げつけたのです。この時になってようやく・・・というか急激に私の中にある感情が顔を表しました。即ち「怒り」です。この瞬間の私は自分の誠意を踏みにじられたこと、今までの仕打ちなどもあり、本来の自分のように――というよりは「ここに転校してくる前」の自分のように怒鳴ってしまうところでした。私が何故、怒鳴らずにすんだかというと犯人を突き止めてくれた彼――折原君が私の代わりに怒鳴ってくれたのです。
 彼が怒鳴ってくれたときから私の中にあった怒りはまるで今まで何事もなかったかのように消え去りました。何故彼が私の身に降りかかった災難ついて怒鳴ったのか。その驚きの方が私の怒りに勝っていてくれたかもしれませんし、単純に代わりに怒鳴ってくれたかもしれません。今の私にははっきりと前者が理由だと言うことができますが、当時の私――恋という物を曖昧な感情としてでしか表現できなかった私にはまだ彼に持つほのかな恋心にも気付いていなかったのですから。
 あの事件をきっかけとして、私は彼と一緒にいることが多くなりました。登校時、休み時間、昼休み、放課後と私は出来る限り彼のそばにいました。そのころになると、転校当初のように私の周りに男の子たちが群がるようなこともなくなりましたし、彼の前でも自然と女の子らしく振る舞うようになっていました。女の子らしく振る舞うと言っても、自分を作っているのでなく、そうであることが自然になっていたのです。私が長森さんの彼を見つめる視線に気付いたのはそんな時でした。それは友人としてもなく、幼なじみとしてでもない、恋する女の子の持つ視線でした。でも、そのときの私は彼と一緒にいるときが楽しいと思うだけで恋愛感情には気付いていなかったので、漠然と、「長森さんは彼のことが好きなんだな」と思うほどでした。あのときが3人にとって一番良い状態だったのかもしれません。
 恋は女の子を綺麗にする。そんな言葉の通り、クリスマスになる頃には自分の中の曖昧な感情が「恋」であるとはっきりと自覚することが出来るようになしました。何とかしてクリスマスを彼と二人で過ごしたい。そんな想いから、他の子の誘いを断り続けていたのですが、ようやくというか、やっとの想いで彼と二人で過ごす約束にこぎ着けました。その期待と同時に不安も抱えていました。なんせ私は長森さんの気持ちに気付いていから一種の罪悪感のような物を抱いていたからです。しかし、そのときの私にとっては私は初めて大好きな人とクリスマスを過ごせるということが幸せでした。ロマンチックな夜に期待していたのです。長森さんのことを深く考える余裕なんてなかったのです。
 期待通りクリスマスは幸せな時でした。そこに至るまでの経緯としては順調だったとは言えません。クリスマスの夜にキムチラーメン。私の想像力の遙か上を行くようなことを彼がしでかしたからです。結果として、出ていった私を彼は追いかけてきてくれましたし、公園で彼は私の手を取ってくれました。それは、夢に思い描いていたようなダンスパーティの会場ではありませんでしたが、クリスマスという空気の中、そして満天の星の下。それはまるで私たち二人だけのために神様が用意してくれたような、そんなすてきな空間でした。そして初めての口づけ。彼は少々子供っぽいとも言える私の夢につきあってくれたのです。彼こそが私にとっての王子様でした。そして、私を大切にしてくれると言うことが本当にうれしく思いました。
  あの夜から彼と私は「彼氏、彼女」と呼ばれるような関係になりました。彼が私を大切にしてくれていることが伝わってきましたし、私の彼のことを大事に思っていました。友達も、クラスのみんなも私たちのことを祝福してくれているようでした。なかでも長森さんは彼のことをいろいろと教えてくれます。それを聞くたびに私は彼と長森さんの間にある強い絆に嫉妬を覚えます。ですが、酷く辛そうな顔で彼を目で追っている長森さんを視ると優越感に浸ることができます。そんなことを繰り返すたびに私は自分自身に嫌悪感を覚えるのです。
 日に日に私の中の罪悪感が大きくなっていきます。彼をずっと思っていた彼女を差し置いて、いきなり彼を奪っていった私のことを本当は恨んでいるのかもしれません。長森さんの気持ちに最後まで気付いた様子を見せなかった彼は今まで通り、長森さんに接しています。彼の心の中にいる長森さんに私は勝てるのでしょうか。私は本当に愛されているのでしょうか。こんな状態のまま私は彼とやっていくことが出来るのでしょうか。
 恋は残酷です――

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どっぺる詩子:・・・何がやりたかったの?
PELSONA:・・・これ七瀬じゃないよね・・・
どっぺる詩子:タイトルも意味不明だし。読んでくれたみなさんに説明は?
PELSONA:七瀬が過去を振り返って書いた自叙伝って感じにしたかった。タイトルはアイヌ語でココロって意味。
どっぺる詩子:・・・もしかして某千円札のヒトの雰囲気出したかったの?
PELSONA:いえっす。もう満足したからいいや。
どっぺる詩子:ぺるはストック作って無いんだから早く長編書き上げないといけないでしょ?
PELSONA:ん。善処はします。でも今テスト前だから遅くなるよ。じゃ、今回はこの辺で。
どっぺる詩子:この駄文を読んでくれたヒト。ありがとねっ♪
PELSONA:またお会いしましょう〜