innocent world 第四話 『再会』 投稿者: PELSONA
―S県K市 路上―

「・・・ここね」
目の前にある建物を見上げ、郁美は言った。
見た感じ、築2,3年だろうか。
マンションにはいるための入り口には暗証番号を入れるためであろう、セキュリティロック。
そして、その先には管理人室。
高い家賃を払う代わりに安全を保障する。
そんなうたい文句が似合いそうなマンション。
ここに――晴香がいる。

「すいません。302号室の巳間晴香の部屋に行きたいんですけど」
ロックの所についてある『部外者専用』のインターホンから用件を伝える。
「あなたどちらさま?知ってるとは思うけどここは住んでる人の肉親以外は――」
管理人らしき声の主を遮って用件を伝える。
「妹です。今日泊めてもらう約束だったんですけど連絡が上手く行かなくて・・・」
「あら、それはお困りでしょう。今、入り口を開けますから待っていて下さいね」
声が途切れるや、ドアが開く。
単純な管理人だ。確認すら取らず、中に入れてしまった。
どんなに優れたシステムも使う人間次第という事か。
どんなに技術が進んでも結局は人間にかかってくる――。
そんな事実に、私は苦笑した。

  ピン ポーン

チャイムを鳴らしてから数秒。
「・・・・・誰?」
ドアについたスピーカーから声が聞こえる。紛れもない、晴香の声だ。
「晴香?私よ。天沢郁美」
「いく・・・み?ちょっと待ってて、今開けるから」
かちゃ・・・という音がしてロックがはずされる。
そしてドアの隙間から現れる顔。
「久しぶりね、晴香」
久しぶりの――戦友との再会だった。


―晴香宅 リビング―

「それで、急にどうしたの?」
私は驚いていた。郁美の来訪に。
久しぶりに郁美の顔を見たと言うこともあり、うれしかった。
リビングに郁美と通すと、ソファに座るように進める。
「で、どうしたの、急に?」
少し浮かれ気味の私に郁美は言った。
「単刀直入に言うわ。あなた最近、何か感じなかった?」
「何か・・・ってなに?」
私はとまどいの表情を浮かべる。
何が言いたいのか、話の趣旨がつかめないのだ。
「そうね。別の言い方をするわ。『不可視の力』を宿すアイツが何か感じなかった?」
「何も感じてない・・・・・と思うけど?」
訳が分からなかった。
何故、今更あの力の話をし出すのか。
私の大切な物を奪った力の話をし出すのか。
「FARGOが動き出したの。この言葉の意味、わかるわよね?」
郁美は言った。
FARGOが動き出したと。
確かにそう言ったのだ。
「・・・帰って」
低く平坦な声。それは確かに私の口が紡いだ物だ。
「晴香、まだ話は終わってないわ」
「帰ってよぉっ!!」
次は絶叫。
「何をしようとしているのかはまだわからない。だから今のうちに私たちで・・・」
何かを言おうとする郁美の背を押し、玄関につれていく。
聞きたくなかった。
知りたくもなかった。
もう、忘れたはずだから。
「・・・わかったわ」
郁美はそれだけ言うと、玄関から出ていく。
部屋に一人になった私は郁美の言った言葉を反芻する。
  FARGOが動き出したの
その言葉の持つ意味は何か。
不可視の力を持つ物の回収か。それとも別の目的か。
どちらにせよ、不可視の力を持つ自分はねらわれるだろう。
大丈夫。自分にそう言い聞かせる。
そのためにセキュリティ機能を重視してこのマンションに住んでいるのだ。
郁美の身に何かあっても私は大丈夫。
ここにいれば私は大丈夫。
私だけは大丈夫。
  ドクンッ
刹那、私の中の何かが動き出す。
「やめてえっ!!」
正体の分からぬ恐怖に震えながらも私は自覚した。
この力から逃れることは出来ない。

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PELSONA:はい〜。何とか書き上げました。第四話です。
どっぺる詩子 :今回は郁美側の話なんだよね。
PELSONA:そーです。ONEサイドを書いてたからちょっと描写にとまどったけどね
どっぺる詩子 :うんうん。あとはFARGO側の動きを書けば展開が見えてくるのかな?
PELSONA:そう書けるとうれしいねぇ〜
どっぺる詩子 :も、もしかしてまだ決まってないの?
PELSONA:YESYESYESYESYESYESYESYESYESYESYESYESYESYESYESYESYESYESYES・・・・・・