中庭にて 投稿者: PELSONA
季節は冬で、今は昼。
茜は今日も寒さに震えつつ、食事をとっていた。
その2メートルほど離れたところでパンをかじってる俺。
う〜む・・・
会話がない。
木枯らしの吹く中、無言で食事をとり続ける二人・・・
端から見たら変な光景であろう。
いや、実際変だ。
別にナンパ目的でここにいるわけじゃないから良いんだが・・・
と、いうわけで。
まずは当たり障りのない会話で楽しいランチライムを演出しよう。
「う、うまいぞっ!!今日のジャムパンはっ!!!」
茜がこっちを見てる。
作戦成功だ。
「懐かしい中にもふくよかで上品な甘さが口中に・・・」
凝視。
その形容詞が人を形作ったと言っても良いほど、こっちを見てる。
はっきり言って、ちょっと怖い
「広がって・・・・・」
あまりにも冷たい視線に耐えきれなくなって俺は口を閉じた。
「続きは?」
あまりにも無慈悲な言葉。
「いや・・・もういい・・・」
俺にはそう言うしかできなかった。
と、茜が口を開く。
「・・・パンが泣いています」 
はいぃ?
訳が分からない
「茜、悪いがもう一度言ってくれないか?」
「パンが泣いています」
聞き間違いではないようだ。
「・・・味がわからない人に食べられるパンは泣いています」
「へっ?」
意外な言葉。
「そのジャムパンを作っている会社は契約した沖縄の農家の砂糖黍しか使ってません」
「は、はぁ・・・」
「ジャムに使う苺にいたっては遺伝子改良の結果、本来の0,5倍もの甘さを引き出しているんです!!」
なんか、熱演してる。
こんなにしゃべっている茜を見たのは初めてだ。
「あなたに食べられるパンは可哀想です。たとえるならばそう・・・」
ちょっと視線を中に漂わせると
「砂糖を入れ忘れたワッフルのようです」
と言った。
「・・・茜、すまなかったな。」
「・・・・はい。」
「俺、これからはもっと味わってパンを食べることにする。」
「・・・冗談ですけど。」

 ウソかいっ!!

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感想は次回にでも書きます〜