欠けた月は廻る act2 投稿者: PELSONA
 今日も教室は騒がしい。
 「おはよーっ」
 仲良くしている女の子のグループに挨拶してから席に着く。私の席は、窓側の一番後ろ。その後ろにあった机は持ち主がいなくなると同時に運ばれていったみたい。持ち主のいなくなった机は今でも持ち主の帰りを待っている。待っている。待っている。
  
  永遠に恋人たちは「ココロ」の不思議で結ばれるから
  愛しい人よトキメキの中で 震える思い今も残ってるの?
  巡り会う奇跡の中で24時間「好き」と言ってたね
  時間の流れがすべて想い出に変えるけど
  寝てもさめてもまだ君を愛してる

 誰にも聞こえないように、そっと、つぶやく。この曲のタイトルは「恋人」。折原の家に行ったとき借りてきたCD。初めに進められてたのは聞きづらい物ばっかりだったけど、後から進めてもらってポップスは気に入ってよく聞いている。持ち主のいなくなったCDは私の家。いつか返せるときが来ることを信じて毎日、毎日聞いている。
 「七瀬ーっ。七瀬は欠席かぁーっ?」
 あれこれ考えてるうちに私の名前、呼ばれていたみたい。
 「あっ、ハイ。」
 「んあーっ。もっと早く返事をするよーに。朝から寝ぼけてちゃイカンぞ」
 先生はそう言うと、次の人の名前を呼ぶ。考えに没頭すると周りの声が聞こえなくなるのは私の悪い癖。誰だって熱中することあるよね。なんて自分に言い訳。HRが終わると教室はまたにぎやかに。さてさて、今日も張り切っていきましょうか。
 
 「ただいま」
 靴を脱ぎながら、そっとつぶやく。この時間、家に誰もいないことはわかってるけど。部屋に入って、制服を脱いで。そして私はシャワーを浴びに、一階へ。
  ザーーーーーッ
 頭から熱いシャワーを浴びるのは気持ちが良い。不安も、悲しみも、一緒に流してしまおう。体を丁寧に拭いて、まだ水分の残る髪をブラッシングしながらドライヤーで乾かして。しっかり乾いたのを確認すると髪を一つにまとめて、ドレスに袖を通す。
 このドレス。こうやって着るのは何回目だろう。今日は、今日こそは折原が着てくれる。そんな淡い期待を抱きながら公園に向かう。
 公園の。ちょっと高台みたいになってるところ。そこの木の下で私は待ち続ける。眼下に広がる景色では子供たちが遊んでる。その顔は皆、幸せそう。たまにこっちを指さしながらなんか言ってるみたい。
 「ママ、何であの人あんな服着てるの?」
 「指なんかさすんじゃありません。あっちで遊んでらっしゃい。」
 風に乗って聞こえるのは、そんな言葉。このドレスも、髪型も。気に入ってるし、それなりにかわいいとは思うんだけど、こんな場所はあまりに場違いすぎるから。周りを、他人を気にするのはやめて。たとえ、それが無駄でも私はこの場所、このドレスで待ち続ける。無駄じゃ、ないよ、ね?

  何よりも大切なあの人に この場所で
  伝えたくて 伝えたくて あふれそうな想いを寄せた
  暖かな優しさと 少しだけのぬくもりを
  抱きしめて 抱きしめて いつまでも離さないよ
  
 部屋のBGMはもう2トラック目。今日も折原は来なかった。乙女を待たせるなんて、なんて奴。部屋に入るとドレスを脱いで、きちんとしまう。しわになっちゃったら厭だしね。無駄じゃない。無駄じゃない。そう信じていれば必ず戻って来るって自分に言い聞かせて。
 
 おやすみなさい。私は、王子様のいないシンデレラ姫。
 私、今でも、今でもこうして待ってるってご存じですか?

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ども。その2をお送りします。
これで終わりです(笑)
3までの予定が合ったんですけど一つにしちゃいました^^;
こんなの七瀬ぢゃないと言うそこのあなた!
目をつぶって下さい(爆)
でも読んでくれるとうれしいかも^^

読んで下さった方、感想を下さった方、ありがとうございました。