エターナル6・第4話 投稿者: Percomboy
 永遠戦隊・エターナル6
 体に負った、あの戦いの傷は癒え、次の戦いまでの間、あたした
ちは、つかの間の休暇を楽しんでいた。

・第4話「休息」
 そこは、永遠防衛隊の、医療施設の玄関。
 七瀬が、医者や看護婦に見送られながら、そこを後にしていた。
「長い間、お世話になりました」
 七瀬が、深々とお辞儀をしながら、礼を言った。
「もう、こんなところに来るんじゃないぞ」
「お元気で〜!」
 医者や看護婦のその言葉に、ふと、七瀬は「あたしは、刑務所帰
りの元囚人か?」などと思ったが、その言葉はとりあえず飲み込ん
で、笑顔でそこを去った。
「しゃばの空気も、久しぶりよね」
 そんな言葉を口にしながら…。
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「いらっしゃいませ!」
 ここは、「ワッフルショップ・雪ちゃん」である。やってきたの
は、浩平と長森の二人。中には、先ほどの声をかけた、店長にして
現在ただ一人の店員である深山が、額に汗をして忙しそうにワッフ
ルを焼いているところであった。
 現在、中にいるのは、深山の他には、常連客である茜が、カウン
ターで黙々とワッフルを食べているだけ。
 すでに結構な量のワッフルが、深山のそばに積み上げられている
のを見て、浩平は、思わず質問をする。
「すごい量のワッフルですねぇ。どうしたんです?」
「今、焼き上げたのよ。みさきがもう少ししたら来るっていうので
ね」
 深山のその言葉に、なんとなく理解した浩平と、その受け答えに
疑問を抱く長森であった。
「川名司令は、たくさんの人と一緒に来るの?」
 長森が、浩平に質問した。
「いや、たぶん、一人で来るんだろ」
 浩平が、何をバカなことを、そういう感じで応えた。
 長森は、やはり、理解できない様子であった。

 さて、二人は、奥のテーブルに座った。
 浩平が、右手を頻繁に動かしている。この前の戦いで失った腕の
代わりに付いた義手であるが、ぱっと見では、生身の腕との違いは
わからない。
「浩平、どんな感じなの、その腕は?」
 長森は、浩平に聞いてみた。
「うん、ホント、良くできているな。感覚といい、何から何まで、
もとの腕と変わらないような気がする。足の方も、全く問題が無
い」
 不意に、浩平は、右腕を伸ばして、長森の左の胸に触った。
「きゃっ!」
 思わず、自分の両腕で胸を隠すようにして、浩平から距離を離す
長森であった。
「いや、悪い悪い。不意に腕が動いてしまってさ」
 いたずらっぽい笑いを浮かべながらそう言う浩平に対して、思わ
ず、浩平をにらみつける長森であった。
「しかし、感触とか、そのままだな。ホント、良くできているよ、
この腕は」
 しばらくにらんでいた長森だったが、不意に口を開く。
「…浩平、わたしの胸を触りたかったの?」
「へ?」
 いまいち、言葉の真意をつかみかねている浩平に対して、長森は
頬を染めながら続ける。
「浩平だったら、良いよ、触っても」
 お互い、真っ赤になりながら見つめ合う二人。長森が、ついに、
浩平の両の手をつかみ、自分の胸に押しつける。
「浩平、どんな感じ?」
「あ、ああ…やわらかくて、気持ちいいぞ。お前はどうなんだ?」
「なんだか、変な気分になっちゃうよ」
 お互いに思いっきり赤面しながら、そんなやりとりを、二人で交
わしていた。
 ふと、横から、ゴホンという咳払いが聞こえる。そっちの方向を
見ると、注文のワッフルを持ってきた深山が立っている。
「え〜と…ここ、そういうお店じゃないから、できればよそでやっ
てくれない?」
 深山のその言葉に、思わず離れる、浩平と長森。
 カウンターから、その様子を見ていた茜が、にらみつけながら、
一言つぶやく。
「…不潔です」
 浩平と長森の二人は、ワッフルを包んでもらって、そそくさとそ
の場を逃げ出した。

「お前があんなことをするから、追い出されたんだぞ、ばかっ!」
 浩平は、さも長森だけが悪いように、そう言った。
「だって、先に触ってきたのは、浩平の方なんだもん」
「だからって、ふつー、あーゆーことをするか?」
 全くお前は…そんなことを浩平はぶつぶつ言いながら、二人で街
を歩いていた。
 やっほー、みーずーかっ! 女の声で、そう呼びかけられた。
 声をかけられた方を見ると、長森の親友である佐織が、一人でい
た。
「あら、佐織じゃない」
「よう、稲木、久しぶりだな」
 長森と浩平が二人でいるのを見て、佐織は続けた。
「あらあら、今日はデートだったの?じゃましちゃって、悪かった
わねぇ」
「やだぁ、佐織ったらぁ」
 思わず赤面する長森。
「そ、そんなんじゃねぇよ。勘違いするなよ!」
 大慌てで、思いっきり否定する浩平。その様子に、少しむっとし
た長森。
「だいたい、俺たちは、そんな関係じゃない。こいつも、きちんと
した恋人でも作ればいいのに」
 そういう風に、ぶつぶつと続ける浩平。不意に、長森の表情が暗
くなった感じであった。
 佐織が、浩平に耳打ちする。
「そんなことを言っていると、せっかくのかわいい彼女が、誰かに
取られてしまうわよ」
「だーかーらー、そんなんじゃないって言っているだろう」
 あきれたように返す浩平であった。
「うふふ、まあいいわ」
 佐織のその言葉に、やれやれという表情の浩平。逆に、浩平から
切り出す。
「んで、稲木の方は、今日はどうしたんだ?」
「デートよ、デート。ここで待ち合わせ」
「あ、そーなんだ」
 長森が、意外そうな感じで言った。
「なに、瑞佳。私がデートだなんて、そんなに変?」
 意地悪そうな口調で、佐織がつっこむ。長森が、あわてて応え
る。
「べ、別に、そんなことないわよぉ。んじゃ、わたしたちはおじゃ
まだよね」
「そうね、こっちも、お二人さんのじゃまをしちゃ悪いもんねぇ」
「そんなんじゃないって」
 浩平が、佐織の言葉に対して、また否定した。
「じゃ、またな」
「それじゃ、佐織、またね」
「ばいばい、瑞佳、折原君」
 こうして、浩平と長森は、その場を離れた。

「わたしじゃ、浩平の恋人には、なれないのかなぁ…」
 ふと、長森は、浩平の横で歩きながら、そうつぶやいた。
「長森、何か言ったか?」
「ううん、なんでもないよ」
 浩平の言葉に対して、あわてて笑顔を取り繕いながら、長森はそ
う応えた。
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 司令室に顔を出した七瀬。早速、繭による「髪引っ張り」の洗礼
を受けていた。繭が、七瀬のお下げ髪にぶら下がっている。
「ぎゃぁぁぁっ!痛い!痛い!」
「みゅ〜!みゅ〜!」
 何とか繭をふりほどくのに成功した七瀬。
「ひん…帰ってきて、いきなりこれなのね…」
 涙を流しながら、もうどうしようもない、そんな感じでつぶやく
七瀬。
 ふと前を見ると、澪が、スケッチブックを七瀬と繭の前に掲げて
いる。
『面白そうなの。私もやるの』
「やらんでいいっ!」
 七瀬が怒鳴る。澪がその迫力に後ずさりする。そのすきに、また
繭が七瀬の髪に飛びつく。今度は、澪も飛びついた…。
「ぎゃあああっ!いい加減にしなさいよ、繭、上月さん!!!」

 しばらくして。澪と繭は、お昼寝中。七瀬は、エターナルバト
ラーのシミュレータに座っている。
「目標をセンターに合わせてスイッチ、目標をセンターに合わせて
スイッチ…」
 ばしゅっ!ばしゅっ!という音と共に、シミュレータ内の仮想敵
が破壊されていく。射撃訓練のようである。しばらくは、おとなし
く撃っていた七瀬であったが…。
「だあぁぁっ!ちまちまとこんなこと、やってられるかぁっ!」
 そう叫んで、武器モードを近接攻撃モードに切り替え、ビーム
ソードを展開して突撃をかける。
「えいっ、えいっ!このっ!」
 ソードで、思う存分打ちのめして、仮想敵を完膚無きまでに破壊
した七瀬であった…。
「はぁっ、はぁっ…ナメないでよね、あたしは七瀬なのよっ!」
 ふいに、背中の方から、ぱちぱちという拍手の音と、留美ちゃん
すご〜い!という声が聞こえる。
 七瀬がそちらを振り向くと、巨大な紙袋を持ったみさきがいた。
 思わず七瀬は、みさきに聞いてみる。
「みさきちゃん…何、それ?」
「あ、これね。『雪ちゃん』のワッフル。食べている時間が無く
なったから、残りを包んでもらったんだよ」
 この大きさだと、少なく見積もっても100個はあるだろう。あき
れながら、七瀬はそれを見ていた。
「…私のだからね、あげないよ」
 みさきは、意地悪そうにそう応えた。
「いや、まあ、そんなつもりじゃないけど…」
 七瀬は、それに対して、思わずそう言った。
「…冗談だよ。1個ぐらいなら、あげるよ」
「今は、ワッフルを食べる気分じゃないから…」
「そうなの?『雪ちゃん』のワッフルは、おいしいのに」
 みさきは、こころもち残念そうな雰囲気で、そう言った。
 七瀬は、既に、そのワッフルの量を見ただけでおなかいっぱい、
という感じであった。浩平から、みさきは大食家である、とは聞い
ていたものの、改めてそれを見せつけられると、何とも言えないモ
ノがある。浩平が言うことだから誇張たっぷりのデマのようなモノ
だろうと思っていたのだが、どうやら先に聞いた内容には、誇張は
一切無かったようでもあった。
「それじゃ、またね」
 みさきは、そう言って、その場を後にした。
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 大量のワッフル…しかし、その残りは、既に50個を切っている感
じである…を食べながら、みさきは、コンソールで電子メールを確
認していた。
 その中の2件、メールの内容は、「エターナルスーツ完成」「エ
ターナルロボの変形・合体機能組み込み完了」という内容であっ
た。
「これで、次の戦いからは、少しはマシな感じになるかもね」
 そう、笑みを浮かべるみさきであった。
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次回予告!
 謎の怪人が、街に現れる。怪人退治のために、永遠戦隊は出撃す
る。
 そして6人は、彼らに与えられた、新たな姿を、そこに出現させ
る。
 次回、第5話「変身」
 永遠の果てには、希望か、絶望か。