エターナル6・第2話 投稿者: Percomboy
永遠戦隊・エターナル6

 初めての戦い。何もできずに、あたしは、目の前で仲間が倒され
ていくのを見ているしかなかった。
 あたし自身も倒され、気が付くと、あたしは病室のベッドの上
だった。

・第2話「傷痕」

 病室のドアが開き、人が入ってきた。川名みさき司令長官であ
る。
 みさきが、七瀬に声をかける。
「ようやく、気が付いたみたいだね」
「ええ…」
 七瀬は、そう応えながら、それまでにあったことを思い出してい
る。
 謎の怪獣が襲ってきたこと、自分たちがその怪獣撃退のために出
撃したこと。そして…浩平の乗るエターナルバトラー2号が、自分
の目の前で崩れ落ちる様子…。
 七瀬がそう考え事をしているところに、みさきが話しかける。
「あ、そうだ。浩平君も、さっき、意識を折り戻したんだよ」
「え、折原は、生きているの!?」
 みさきの、その報告に、思わず、七瀬の表情に笑顔が戻る。
 続けて、みさきが一言。
「五体満足とは、いかなかったんだけどね…」
「そう…」
 さすがに、あれだけの目に遭えばそうなるか。七瀬はそう思い、
何となく納得せざるをえなかった。

 みさきは立ち上がり、去り際に、七瀬に告げた。
「そうだ。浩平君の病室は、302号室だからね」
 ドアが閉まる。病室に、また、七瀬が一人だけ。
「そう…折原、生きていたんだ」
 七瀬は、そうつぶやいた。そして、嬉しさのあまり、そのしずく
は七瀬の目から止まらなかった。
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 しばらくして、七瀬は、浩平の病室に向かって、松葉杖をつきな
がら歩いていた。
 302号室の前。ドアは少し開いていて、中の様子が少し分かる。
包帯でミイラ状態の人物に向かって、長森が話しかけているよう
だ。
「せっかく二人きりのところを邪魔するなんて、野暮よね」
 そうつぶやいて、七瀬は、元来た方向へと引き返して行った。
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 302号室の中。長森と浩平の二人。長森が浩平に話しかけ、それ
に浩平が応えている。
「もう、浩平ったら、本当に無茶するんだからぁ!」
「仕方がないだろう。目の前であーゆー状況になったら。」
「だからって、浩平が死んじゃうところだったんだよ」
「なあに、こうして生きているじゃないか」
「だからって…」
 そう言って、長森は、浩平の全身を見る。
 七瀬の命を救った代償に…右腕全体、右脚全体、左脚のひざから
下を失い、全身包帯尽くめ、鼻の穴と口だけが出ているという感じ
であった。
 不意に、長森が浩平に問いかける。
「ねぇ…」
「なんだ?」
「もし、ピンチになったのが私だったとしても、浩平は、かばって
くれた?」
「当たり前じゃないか」
「そうだよね。浩平は、誰にでもやさしいもんね」
「ばかっ…みんな、大事な仲間じゃないか」
「うん。そういうことにしておくよ」

「それじゃ、また来るね」
 そう言って、長森は、病室を後にした。

 ほぼ入れ替わりに、みさきが入ってきた。
「浩平君、どんな感じ?」
「みさき先輩か…あまり良いとは言えないな。少なくとも、走り回
るのは、無理そうだ」
「それだけの軽口が言えるなら、とりあえずは大丈夫だね」
「ああ…」
「心配しなくても、今、義手と義足を作っているところだよ。それ
が出来上がれば、マラソンだって以前のようにできるからね」
「マラソンの授業をさぼる口実にはならないのか、この怪我は」
「ふふふっ、残念でした」
 くすくす笑いながら、みさきは言った。

 浩平は、ふと、気になっていたことを思い出した。
「そう言えば、七瀬は?」
「怪我はしているけど、大丈夫だよ。浩平君の病室を教えておいた
のにな…まだ、来てない?」
「ああ…意外と、薄情なヤツだな。体を張って助けてやったのに」
 あきれた口調で、浩平はそう言った。
「案外、気を利かせてくれたのかもね」
 みさきは、先ほど病室から出て行った人物のことを思い出して、
くすくす笑いながら。
「何に気を利かせるんだ?」
 浩平は、なんのことかわからない様子のようであった。
 再び、部屋の中が静まる。
 浩平が、みさきに訊いてみる。
「みさき先輩…」
「なあに?」
「みさき先輩がいつも見ている世界ってのは…こんな感じなんだ
な…」
「そっか…浩平君も、今は、目が見えないんだね」
「大丈夫だよ。怪我が治ったら、また、目が見えるようになるから
ね」

 みさきは立ち上がり、浩平に告げた。
「それじゃ。早く良くなってね」
「ああ」
 こうして、みさきは、浩平の病室を後にした。
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 夕焼けの、病院の屋上。七瀬はそこにいた。
 そこへ、みさきがやってくる。それに気付いた七瀬が、みさきに
呼びかける。
「あ、川名司令」
「みさきちゃん、でいいよ」
 七瀬は、少し抵抗を覚えたが…。言われたとおりに、改めて呼び
かける。
「み…みさきちゃん」
「留美ちゃん、どうしたの?」
「みさきちゃんは、ここへはどうして?」
「時間がある時には、屋上へ来るんだ。風を感じることができるか
らね」
「そう…」
 七瀬は、そう、気の無い返事を返した。

 しばらく間をおいて、七瀬は、屋上の柵の向こう側に向かって、
誰にでも聞こえるような大きさの声で言った。
「折原があんな大怪我をしたのは、あたしのせいなのよね。あたし
がもっとしっかりしていれば…」
 みさきは、何も言わずに、空に向かっている。
 七瀬が、何かを決意した感じで、続ける。
「そうよね! みんなに迷惑をかけないためにも、あたしがもっと
しっかりしなくちゃいけないのよね! ようし、こうなったら、今
度は失敗しないように、特訓よ! 究極の乙女を目指して!!!」
「がんばれっ! 留美ちゃん!」
 みさきが、声援を送る。
「というわけで、まずはシミュレータで特訓よ!」
 七瀬がそう言った後、ファイトー! おーっ! という掛け声と
ともに、意気揚々と、松葉杖の片方を高々と振り上げ、屋上の入り
口のドアから、七瀬は中へ戻って行った。
 入り口のドアの上に振り上げた松葉杖をぶつけ、そのはずみでバ
ランスを崩して階段から落ちる、というおまけ付きで…。
「ぎゃああああっ!」という悲鳴が聞こえる…。

「とりあえず、みんな、大丈夫そうだね」
 安心した様子で、笑顔を浮かべるみさきであった。

(続く)
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次回予告!
 再生される記録画像。その中にある戦いの記録。
 次々に倒される、永遠防衛隊の戦力。そして、奇跡は起こった。
 次回、第3話「記録」
 永遠の果てには、希望か、絶望か。