こんな僕に誰がした(前編) 投稿者: T.Kame
 
 誰の人生にも、一度は輝く季節がある・・・
 
 そのころの僕は・・・

・・・

   First Days

プルルルル プルルルル
・・・なんだ?今ごろ

プルルルル プルルルル
ガチャ

「(はい・・・折原です)」
「(あっ、折原君?私です、深山)」
浩平「(おはようございます)」
深山「(おはよ。でね、例の仕事の件なんだけど・・・)」
深山「(考えてくれた?)」
浩平「(はい・・・で、やることにしました)」
深山「(ほんと?うん、じゃ 明後日の朝9時までにスタジオに入ってて)」
浩平「(わかりました)」
深山「(それじゃ、またね、浩平君)」
ガチャ

深山さんか、あの人とも高校時代の頃から知り合ってたっけ?
長いものだな、もう6年か・・・・あの日から・・・・・

ふぅ、なんかやる気がしないな。ま、いいか折角の仕事だしな。

 俺は今、俳優をやっている。きっかけは、僕は高校2年の時にほんの2ヶ月位ではあったが、演劇部に
入っていた。そのときの部長であった深山さんに大学を卒業後、オーディションに応募してみたらどうか
と、誘われたので、あまり乗り気ではなかったが、ろくに就職先もなかった俺は、応募することにした、僕
の演技自体はあまりたいした事はなかったのだが、どうもその時の監督にえらく気に入られてしまったら
しい。結局、その舞台が終演してからも時々呼び出されたりした。
 ともかく、今では一応は、深山さんの事務所(大学を卒業後設立したらしい)に表向きは俗すことになっ
てはいるが、あくまでフリーの俳優として生活している。
 明後日は仕事だ。今日と明日は、のんびりしていよう・・・
 
 とにかく、この頃仕事が多い。俺ぐらいの年になれば、他のやつらなんかは、すでに結婚していたり、今
まさに恋愛の真っ最中だ。俺にも、恋人の一人はいてもいいと思うのだが・・・
 この間も、深山さんの、結婚式があったばかりだ、たしか、相手の人は・・・・誰だっけ?・・・大福?
 ま、そんな細かいことはどうでもいいか。

 あまり充実はしなかったが、この2日間をのんびり過ごした。

   Second Days

ジリリリリィィィィィ ジリリリリィィィィィ

・・・ん?朝か?

ジリリリリィィィィィ ジリリ・・・・ガチャ

・・・朝、前は、うるさい幼なじみが毎朝お越しに着てくれたもんだな・・・鬱陶しかったけど今思うと、悲しい
もんだな・・・

 いかん、いかん、なに朝っぱらからブルーになってんだ。俺は・・・

そして、俺はスタジオに向かった。

あっ、深山さんが来た。
深山「おはよう、折原君」
浩平「おはようございます」
深山「折原君、悪いんだけど、今日、いつものADの人がこれないらしいのだから、予定を変更してもいい?」
 またか、俺の仕事はどういうわけか、ADまで専属になっている。だから、こういうの事はよく起こることだ。
浩平「いいですけど・・・じゃ、今日の俺の仕事は?」
深山「昨日私の事務所に入ったばっかの娘の演技指導してくれる」
浩平「は?俺でいいんですか」
深山「大丈夫よ、あなたの指導力は私が見込んでるんだから、それに、今日の相手はあなたも知ってるしね」
浩平「はぁ」
深山「澪ちゃん、入ってきて」
浩平「み、お?澪だって!!」
 すると、あの頃の少女の面影を少しも残っていない、大人の女性が入ってきた、おそらく名前を言われな
ければ、気づかなかっただろう・・・
 澪は、俺をみるなり服の袖にぶら下がってきた。
・・・はは、こういうところは、あの頃と変わってないな。
 俺は、何故か心の奥底で安心していた。あの頃と変わっていない一面を見ることができて・・・

浩平「それじゃ、始めるか」
うん、うん

 今日は結局、1日中、澪の演技指導をしていた。
 終わった頃には、すでに赤い日は、闇の中に消えうせていた。

 帰るとき、深山さんに呼び止められた。

深山「折原君、今日はごくろうさま。今日の中止の分は明日やることになったから。同じ時間にここで」
浩平「わかりました」
深山「それから・・・」
深山さんは、何かを言おうとしたが、口をつぐんでいた。
深山「ううん、何でもないわ。それじゃ、明日」

何かにひっかかりを覚えたが、気にしないことにした。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
えーーーーーーーん、えーーーーーーーーん
誰かが泣いている・・・・
僕じゃない、いったい・・・?
えーーーーーーーん、えーーーーーーーーん
僕じゃない・・・
えーーーーーーーん、えーーーーーーーーん
みさおのやつでもないんだ・・・
えーーーーーーーん、えーーーーーーーーん
誰?誰なの?
えーーーーーーーん、えーーーーーーーーん
ボクじゃ・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

   Third Days

がばぁ

 目が覚めた・・・・けど・・・目覚めは最悪だ。

 覚めきらないまま、ぼんやりと朝のニュースを見ていた。

『ここ最近、多発している痴漢の犯人が逮捕されました。今朝未明、沢口容疑者は、見回りをしていた警官
に職務質問を・・・』

ピ、

・・・さて、行くか

 TV局に入ると、そこには見知った顔があった・・・監督だ

浩平「監督、お久しぶりです」
監督「久しぶりだな、折原」
 この人が例の監督、名前はよく知らないが、昔どこかの宗教団体に所属していたらしいという噂がある。
監督「どうだ、折原、調子の方は」
浩平「まぁまぁです・・・」
監督「ふむ、そうか・・そういえば、あの娘はどうした?最近は見かけないな」
浩平「え・・・」
 俺は一瞬身をすくませた
監督「・・・そうだったな・・・悪かった、聞き流してくれ」
浩平「・・・はい」
監督「そうだ、また新しい構想が浮かんだんだ、脚本ができたらまた君に見せるから、その時は頼むよ」
 そう言って、監督は去っていった。

さてと、仕事だな。

 今日は、いつものADの人が来ていたので、予定どおり仕事は終わった。
 仕事が終わると、もうすでに、辺りは静かな闇の世界だった。

深山「・・・折原君」
深山さんが俺になんか深刻そうな顔をして話しかけてきた。
浩平「何ですか?」
深山「昨日は、言えなかったけど・・・やっぱ言うわ」
浩平「・・・」
深山「なんで、あの娘と別れたりしたの?」
浩平「・・・」
 わかっていた。ただ、皆、俺の雰囲気で気づいたのか、この話に関しては、誰も俺に聞いてきたりはしな
かった。
 ただの興味本位だけで、聞くような事ではないから・・・でも・・・深山さんは違う。
深山「言いたくないなら、別にいいけど・・・あなた達二人の問題だしね」
浩平「・・・」
深山「これだけは、言いたかったんだ・・・あの娘、今、南くんとつき合ってるらしいわよ」
浩平「・・・」
浩平「だから、どうしたんですか?俺に、何をしろと言うんです。別に関係ないじゃないですか」
 俺はこの場から立ち去った
深山「おりはらくん・・・」
 後ろの方から、深山さんの聞こえた気がした。

 家に帰る途中、一つの人影を見た。こっちの方へ歩いてくるようだ。

・・・神様ってのは、ひどいよな・・・今一番合いたくない奴に合わせるなんて・・・

 俺は歩いた。あくまで他人を装い、自分の涙が相手にわからないようにしながら・・・
 すれ違う時、ふと相手の顔を見た。向こうも他人を装っていた、でも・・・とても、悲しそうに、つらそうに・・・・
今にも涙が溢れるくらいに・・・
 そして、俺たちは、すれ違った。
 俺は振り返らない、きっと向こうも振り返ってないはずだ・・・

 だって、俺たちは他人だから・・・・他人は、黙ってすれ違うんだから・・・
 ただ、俺たちが知り合う前に戻っただけだ・・・つらくない・・・つらくないんだ

 だって、オレタチハタニンなんだから・・・

 
 ・・・・・・な、あかね


 誰の人生にも、一度は輝く季節がある・・・
 
 そのころの僕は・・・ただ・・・熱にうかされていた・・・

(前編完)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
T.Kameです。予告通り、シリアスに決めてみました。
これって、シリアスって言いますよね?

もう寝なくては、感想は、また後ほど書かせてもらいます

それでは