[教祖が歌う日]  投稿者:MIO−X


 あー、寒い。
 こんな日に、予備校行くやつはバカだよな。
「・・・」
 俺はバカだが、やっぱり行かない。

 あー、寒い。
 こんな日に、バイト行くやつはバカだよな。
「・・・」
 なるほど、それじゃ、岡田はきっと行ってるな。
(大森はいないだろうけど)

 おコタに足をつっこみ、寝ぼけた頭で、そんなバカなことを考えていたとき
だ・・・
 みかんを貪るように食っていたすずが、ひょっと顔を上げる。
 
 ちりん

 と、髪飾りが鳴って、まるでそれが合図であるかのように、俺は顔を、テレビか
らすずの方に向けた。
「どうした、す―――」
 すずは、全部言わせない。

「あのねあのね! すずはね、きょうそになるんだよ!」

「はぁ?」
「すずはきょうそなんだよ」
 バカちんめ―――
 俺は呆れて嘆息するが、一度燃え始めたすずの情熱は、なかなか消えそうも無
い。
 はたして意味がわかっているのか、しかし、すずは楽しそうに喋りつづける。

「あのね、おかだちゃんもね、ななみんもね、しんじゃなんだよ」
「へいへい」
「ゆうちゃんもしんじゃになるんだよ」
「俺はパス」
「う?」
「あのさ・・・教祖って何をする人なのか、すずは知ってるのか?」

 すずは、ちょっと考えて、それから(やっぱり)楽しそうに言い切った。

「うんとね、きょうそはね、Gばばのものまねをするんだよ! ばばなんだよ!」
「なんでそうなる!」
「う? あのね、おかだちゃんにね、おしえてもらったんだよ」
「Gばばのモノマネを? いや―――」
 だからさ、それが、教祖と何の関係があると言うんだ?
 俺がそう言うと、すずは得意げに胸を張る。
 モノマネを始めるつもりなのだろう、コホンと、一度せき払いをしてから・・・

「アポ」

「・・・」
「あのね、ゆうちゃん! これをね、ぎゃくからよむといいんんだよ!」 
 俺は、すずと暮らすようになってから、自分の顔の次に見なれた存在となった、
白地のハリセンを取り出す。
 すずは気付かず、気持ち良く歌い始める。


「きょうそ〜、きょうそ〜♪ きょそきょそ、きょうそ〜♪ すずはね、きょう
そ〜♪」


 スパーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!



 日本人は、全員ハリセンを携帯すべきだ。
 乱れた世論と、
 倒れ伏し、ピクリとも動かないすずを見て、
 ―――俺はそんな事を思った。


--------------------------------------------------------------------
 初めてカキコします!
 すずうた の雰囲気ぶち壊しですが・・・

 どうぞ、お手柔らかに・・・

http://interq.or.jp/black/chemical/