二人のハーモニー  投稿者:ken-1



元の世界に戻った浩平は、当たり前だが卒業はできなかった、世間的には病気の為一年 の間療養していた事になっている。 
 それでも、留年をして高校には通っている(なんと澪とは同級生になってしまったが)
 そんな彼に毎日、日課の様に会いに来る女の子がいる。
 それは浩平の最も大切な人であり、この世界と浩平をつなぐ絆である『川名みさき』  その人である。
 そして、今日もまた放課後の屋上で二人は他愛もない会話をしながら『日常』を楽しん でいる。


「…っでさ、なんか澪がまた演劇の発表があるんだってさ、物凄く張切ってたぜ」
「わぁ〜楽しみだね、絶対に見に行こうね」
「ああ」
「うん」

 浩平の返答に笑顔になる。

「澪ちゃん部活頑張ってるんだね、もう3年生だもんね」

 柔らかな微笑みで言葉をつづける。

「んっ?」

 そして今度はちょっと小首をかしげ考えこみ、浩平に質問する。

「えっとね、浩平君って、部活には入ってるの?」
「…入ってるな(行ってないけど)」
「え?そうなんだ〜何部なの?」
「ん〜…軽音楽部…ほとんど活動してないけどな」
「えっ!浩平君、楽器を演奏できるんだ」

 みさきの瞳が輝いてる様に見えた。

「ま、好きで入ったんだから一応はできる事にしておいてくれ」
「ねえ、何の楽器ができるの?」

 明らかに興味深々で聞いてくる。

「ギターぐらいかな、弾けるのは」

 頬をポリポリと掻きながら答える。
 柔らかな微笑みは、嬉しそうな笑顔に変わり。

「浩平君のギター聴きたいよ〜」
「うっ…あまり期待されても困るんだけど…」

 するとみさきは、悲しそうな顔でうつむいた。


「ダメ?」

 ―――こうなっては浩平の負けである。

「わかった、それじゃ部室に行こう」

 ――焦って答える。

「うん、嬉しいよ〜」

 ―コロッと笑顔に変わる。

「はぁ〜」


 浩平の軽い溜息。

・
・
・

 みさきの手を引きながら軽音楽部の部室へ案内する。

「学校内はほとんど知ってるけどこの辺はあまり来た事がないかな?」
「用が無いだろうからな」
「そうだね」
「さっ着いた、どうぞ」
「お邪魔しま〜す」

無人の部室に響く。

「ちょっと座って待ってて」

 浩平はみさきを椅子に座らせ、備品のギターを引っ張り出してくる。
 チューニングと弦の状態を確認する……(よしOK)

「おまたせ、何かリクエストはある?」
「あ、うん、えっとね」

 ちょっと考えこむ、やがて顔をあげて。

「弾き語りってできる?曲は浩平君の好きな曲をリクエストするよ」
「ひ、弾き語り〜?冗談だろ〜」

 実は部屋で一人の時は弾き語ったりしていたりする浩平はちょっと動揺する。

「ダメかな?」

 みさきがまたうつむいて悲しそうな顔をする……浩平二連敗。

「わかった、できる、いや、させてくれ」 

 浩平、諦めて開き直る。
 みさきの顔はまたパッと笑顔に変わり。

「うん、ありがとう浩平君」

「少し昔の曲で…みさき先輩は聴いた事は無いかもしれないけど…良い?」
「浩平君の好きな曲なら聴いてみたいよ」
「うん、わかった」
「それじゃ演るよ」
「わ〜」

 パチパチ〜…拍手をしてくれている、そしてギターの音とともに歌い始める。



 目を閉じてごらん 君は何が見える
 今日までの思い出 それとも未来
 今まで僕は過去の湖を泳ぎ ひざを抱えていた
 だけど今はステキな明日が見える
 
 世界中で閉ざされた窓が今 開き出す
 会ったことのない人達の笑い声が聞こえる

 そろそろ君が幸せをつかむ番
 その時は僕も そばにいたい


 手を空高く伸ばしてみてごらん
 何かに触れたら それが未来さ
 背のびしても飛び跳ねてももがいても構わない
 神様はいつか君に気がつく

 世界中の子供の涙はいつかわく
 同じ舟に乗る僕らは なぜ憎しみ合う

 そろそろ誰かが幸せをつかむ番
 その時は僕も そばにいたい

 流行り歌はいくつも町を吹き抜けていった
 東の国から西から笑い声が聞こえる

 そろそろ君が幸せをつかむ番
 その時は僕が そばにいたい



 みさきは静かに聴きいっていた、そして浩平は。

「……みさき先輩のそばには…いつでも俺がいるよ」

 歌のイキオイで恥ずかしいセリフを吐いてしまう。

「…うん…今度は…絶対に約束だよ…嘘ついたら…嫌いになっちゃうよ…」

 その言葉を聞き、浩平はハッと顔をあげ、みさきを見る。

「ごめんね…浩平君のいない時の事思い出しちゃった」

 無理矢理に作った笑顔に、大粒の涙を浮かばせていた。

「俺の方こそ…ホントにごめんな」

 ギターを置き、思わずみさきを抱きしめる。

「…恥ずかしいよ」

 とは言ったものの、みさきは抵抗する事も無く浩平に身体をあずける。
 浩平は抱きしめる力を緩め、みさきの涙を優しくぬぐう、そして…唇を重ねた。

「んっ…」

 上気したみさきの表情がポワンとなる。

「…信じてるからね」

 二人は互いの体温を感じられるように、寄り添うように床に座り直し、

 しばらくはそのままでいた。


「ね 浩平君?」
「何?」
「私が…ギターを弾いてみたいって言ったら…教えてくれる?」
「ああ、良いけど…俺はあんまり巧くはないぞ」
「いいよ、浩平君の奏でる音が好きなんだから」
「他の人に教えてもらっても意味がないよ」
「ああ」
「それでね、上手になったら一緒に弾きたいんだ」
「うん」
「二人で一緒に音を合わせてね」
「二人で一緒に歌うんだよ」
「いいね、二人で一緒に演ろう」



              〜そうだよ…いつでも一緒にね〜





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2回目の投稿になりますken-1です。
前回の投稿でレスをくださった、由代月さん、矢田 洋さん、Percom boyさん
変身動物ポン太さん、WTTSさん、大感謝ですっありがとうございました!

私は読むのが遅いので本日投稿分だけ感想書かせていただきます。

>加龍魔さん「鏡・中1編」
 前のSSを読んでないので(すみません(汗))序盤はわかりませんが、
 茜が三つの約束守れるのか楽しみです。

>から丸&からすさん「見果てぬ夢」
 面白い設定ですね、先の展開が読めなくて楽しみです〜。

>神凪 了さん「White Death」
 なるほどです、「過去との決別」にいたる話なんですね、それにしても
 みさき先輩…可哀想っす(泣)でもさすがに心情とか…上手いっすねぇ…

非常に短い感想ですがホントに読むのが遅いのでご勘弁を(汗)
ではまた投稿します〜♪