中崎町防衛部 Vol.5 <Bパート>  投稿者:Matsurugi


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:CM

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※このCMはフィクションです。
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:EYE-CATCH

:EPISODE:5-A
:THE LAST BATTLE



:17時58分 移動要塞内部・通路

 バタバタバタ……

 通路を慌ただしく駆け去る足音が通り過ぎる。七瀬はその音が完全に聞こえなくなるまで、物陰で息を潜めて身を隠していた。
「どうやらいったようね……」
 壁から身を放すと、振り返ることなく告げる。
「……でも、何故、こちらの居場所がわかったのでしょう」
 後ろにいた茜が問い掛けた。
「いや、大体予想はつくんだけど……」
 そう言った七瀬が視線を向けた先に、反対側の壁に半ばめり込んだ、瑞佳の装甲服があった。
「そんなこといったって〜」
 頭部ハッチから覗く瑞佳の顔が、困ったような表情を浮かべていた。
「……とにかく、こうなったら力ずくででも突破するしかないわね」
 七瀬が気を引き締めると共に、通路の先へと視線を向けた。


:同時刻 移動要塞内部・ブリッジ

 侵入者発見の報により急に慌ただしさを増したブリッジ周辺では、下層フロアでのオペレーターたち――実のところは演劇部の部員だったり浩平らのクラスメートだったりするのだが――のやり取りが盛んに飛び交っていた。
 侵入者の位置に関する正確な情報が把握されなかった事と(人員が不足しているのも理由のひとつであったが)、伝達に支障をきたしている事などがあって、雪見らのいる上層フロアのもとへ報告が届けられたのは、結果的に七瀬たちが侵入してからかなり経ってからのこととなっていた。
「……侵入者の位置を確認……現在、L−3・T−7、セクタA−26を進行中……生体反応は3体……現在再度確認中……」
「やはり、防衛部でしょうか?」
「でしょうね……」
 みあの報告に耳だけを傾けて、雪見と佐織が確認するように会話を交わす。
「D−1の状況は?」
「……まだ、敵の光線兵器に追い掛け回されています……」
「…………要塞内の警備要員は?」
「……セクタA−23に配備されていた要員が現在目標を探索中……発見の報告はまだ入ってません……」
「全要員を第一級警戒態勢で至急配置。B−28に配備している要員もそっちに回るように伝えて」
「……はい……」
 雪見からの指示で、各セクタに待機していた要員にブリッジからの指令が伝達されていく。


:17時59分 町内商業地付近・アルジーノンろ獲地点

 落とし穴にはまり、頭部の一部だけを地上に露出させ停止している白いアルジーノン、つまり南が搭乗していた巨大機動兵器の周囲には、同じ服装で銃を所持した面々が警戒に当たっていた。
 少しでも近付くものがあれば、容易く彼らによって発見されるであろう事が、その状況から想像できた。
 その厳戒体制の中を、南はどうにか隙をついてアルジーノン内部へと潜り込んでいた。あれだけの包囲の中をどのようにして辿り着いたものかはひとえに語れるものではないが、まさに執念の賜物ともいえる。
「危ねえ、危ねえ」
 アルジーノンのコックピットで、南が冷や汗を拭う。
 …………。

 ドン!

「はァ!?」
 警戒に当たっていたひとりの男が、最初にそれに気付いた。
 轟音と共に、彼の目の前に巨大な足が落ちてきた。その振動に彼の体が地面から僅かに浮きあがる。力強く地にめり込んだその足――アルジーノンの足が地面をがっちりと掴むと、巨大な図体が土砂を振り落として徐々に起き上がり始める。

 ズズズズズズズ……!

 人々の前に、再びそのずんぐりとしたフォルムを地上に晒したアルジーノンが、濛々たる土煙を上げながら再起動する。

 グォングォングォン……!

 力強い駆動音が、周囲を騒がせながら響き渡った。


:同時刻 アルジーノン内コックピット

「くそっ、バランサーが半分ダメか、全然安定しねぇ」
 アルジーノンのコンディションチェックをしていた南が毒づく。
「バックパックへの回路もまったくのパア……バズーカのトリガーもバカになってやがる……」
 芳しくないアルジーノンの状態を前に、それでも南は動作を開始させた。

 ギゴ……ガギゴ……グゴゲガ……

 軋みにも似た音を立てぎこちなく動きながら、南のアルジーノンが歩き出す。前方の視界には、住井のアルジーノンが映し出されていたが、アルジーノンの機体制御に集中していた南は、その事にまだ気付いていなかった。


:18時00分 移動要塞内部・通路

「! こっちからも誰か来るよーっ!」
「くっ……ひとまず向こうに隠れるわよっ!」
 複数の足音が近付いてくるのを聞きつけ、七瀬たちは目の前の通路の曲がり角を折れ、身を隠す。
 人の声と共に足音が通り過ぎていくのを待つことなく、彼女らは既に別の通路を足早に駆け去っていた。
 潜入した矢先に不意に現れた要塞内の人間に発見されてから、七瀬たちはなるべく姿を目撃されないような行動で、慎重に要塞内の通路を移動していた。しかし、彼女らを見つけるためにやって来たであろう者たちの姿が目に付くようになった現在、彼女らの移動は更なる困難に晒されていた。
 そのため、それらを迂回するための行動を彼女たちは余儀なくされていた。
「……このままではいずれ見つかります」
 と、茜に言われるまでもなく、今のままでは発見されるのも時間の問題なのは七瀬にもわかっていた。しかし、他の対策を考えさせてくれるほど余裕を与えてくれないのも、また現状であった。


:同時刻 町内中心部・アルジーノン、みゅーつー戦闘地点

 聞き慣れた駆動音によって、住井は南のアルジーノンが再始動している事に気付いた。今の今までみゅーつーに追っかけまわされていた住井であったが、いつまでも劣勢に廻ってばかりいるほど、住井もやわではない。
『南! 無事だったか』
 アルジーノンの向きを変えないまま、住井が南に声を掛ける。
『ちょうどよかった。今、こいつを始末するところだ』
 そう言う住井のアルジーノンの正面には、今や満身創痍の体と言ったみゅーつーが浮かんでいた。
 いかなみゅーつーが(七瀬の人格を持つAIによって)不屈の闘志を誇っているとはいえ、四肢をもがれたも同然の状態ではいつまでもその攻撃に耐えれるものではなかった。むしろ、よくぞいままで持ちこたえられたものだ、ということを、数多くの切創が物語っていた。

 ヒュンヒュンヒュン……

 今だ浮かび続けているその光線兵器に対し、住井は今まさに止めをささんと構えをとったままで、その目の前に立っていた。
『手伝ってくれ、みな……』

 ゴン!

 住井が南へその言葉を言い終わろうとした寸前、彼のアルジーノンは、南のアルジーノンにぶん殴られていた。


:移動要塞内部・ブリッジ

「……D−2、D−1を攻撃中です……」
 淡々と告げられるみあの言葉を聞くまでもなく、メインスクリーンに映し出されている光景――南のアルジーノンが、住井のアルジーノンをぶん殴ったところ――は、ブリッジにいる雪見らを含めた全員の目撃するところとなった。
「な……」


:18時01分 町内中心部・アルジーノン、みゅーつー戦闘地点

『何をする!?』
『デートするんだ』
『どうしたんだ、いったい!?』
『俺は、愛にめざめたんだ』
 いきなりの事に、住井は当然の如く南に食って掛かった。だが、南の答えは住井の問い掛けとは全くかみ合ってはいなかった。
『何があったというんだ、南!? おまえの話は、さっぱり見えん!!』
 業を煮やした住井が、ヘルメットを脱いで強い調子で声を荒げる。

 ババン!

“デートと引きかえに仲間を売ったの”
 アルジーノンが手に持つ一枚のボードに書かれた簡略な(何故か澪の文体を真似ての)文章を、南は返答としてよこした。
『……そーか、よーくわかった』
 わかりやすいといえばわかりやすい理由に、住井も納得した。(というよりせざるを得なかった)
『貴様は防衛部側に寝返った……つまり……貴様と俺はたった今から、敵同士というわけだ』
 ドームを背後にして住井機がビシィ、と南機に向けて人差し指を突き出す。
『俺はドームをぶち抜いて、里村さんとデートするだけだ。敵対しようとどうしようと、そんなことはそっちの勝手だ』
 白と赤の同じ形の機体が、向かい合い、互いを睨みつけた。


:18時02分 移動要塞内部・ブリッジ

「あのバカども……」
 住井と南のやり取りを聞きながら、広瀬が怒りを堪えながら呟いた。
「ま、予想出来たことのようにも思えるけどね」
 詩子の方はむしろ面白そうにそう言った。
「非常停止信号の発信は?」
「……D−2への信号の送信は確認済み……回路の途絶により受信は確認されてません……」
「ちっ……」
 南機をこちらで足止めできない事を知った広瀬が、舌打ちをする。
「侵入者、現在T−6、セクタA−21からB−16へと移動中」
「目標の確認報告は以前ナシ」
「こっちも手間取ってるみたいだね」
 オペレーターからの報告で、詩子も表情をあらためる。
「T−6の警備要員はC−16まで退避。対象ブロックの全隔壁を至急閉鎖。その後侵入者の位置を特定、一番近いスラックルートから目標を捕捉。急いで!」
 雪見の矢継ぎ早の指示に従い、オペレーターたちは各自の作業に取り掛かった。


:同時刻 移動要塞内部・通路

 要塞内の通路を急ぎ駆ける七瀬たちの前の通路が閉ざされようとしていた。
「! 通路が……」
「こっちよっ!!」
 目の前を阻もうとする壁の左側に通路を見つけ、急ぎ七瀬が後ろの二人に指し示す。
「閉まる……!」
 最後尾の瑞佳が駆け去った後に、彼女らが飛び込んだ通路の背後も、壁が降りようとしていた。
「ここもっ!」
 目の前に三叉路が見えるところまで来たとき、七瀬は右手の通路が塞がれつつあるのを見た。間に合わないのを見て取って、彼女は左に向かうよう後ろに合図する。
「!!」
 だが左手に折れた直後、気付いた時には目の前の通路はいままさに行き止まりにならんとしていた。
 通路は既に8割方閉ざされており、空いた隙間は数十センチも無い。とても3人が通り抜けるには間にあいそうもない。
(くっ……!)
 しかし、今から引き返そうにも、他の通路は完全に絶たれてしまっている。後戻りは不可能だった。
「でりゃあああぁっ!!」
 七瀬はその場で止まることも、引き返すこともしなかった。そのまま閉ざされんとする壁に突っ込んでいったのである。


:移動要塞内部・ブリッジ

「セクタB−18・19、13・18区間の封鎖完了」
「T−5・11〜15ブロックの全隔壁、閉鎖を確認」
「侵入者位置、セクタB−12内に捕捉……!!」
 隔壁が封鎖されていく報告が行なわれていく中で、ひとりのオペレーターが突然大声を上げる。
「目標、引き続きB−11へ移動しています!」
「移動してる? どういうこと! 先に行く通路は全て塞いだはず……」
「B−11・12間の封鎖は確認しています! これは、まさか……隔壁を突破されてます!」
「突破ですって!?」
「侵入者、さらにT−4を進行中! そんな……隔壁を物理的に排除しているのか!?」
「そんなバカな! あの隔壁を無理矢理破壊してるってのか?」
「どうやって?」
「しかし、そうとしか考えられないぞ!」
 あまりにも信じがたい出来事に、オペレーターたちが騒ぎ出す。
「……侵入者、セクタB−21からL−4に移動……各ブロックの隔壁閉鎖は引き続き実行中……」
 上層フロアでは、みあによる報告の声が淡々と流れ続けていた。


:18時04分 町内中心部・南、住井戦闘地点

 ガン!

 住井機の拳をくらって、南のアルジーノンが吹き飛ばされる。

 ズズーン……!

『どうした……さっきまでの元気は?』
 低い声で、住井が言葉を投げ掛ける。
『俺は……デートするんだ……デートを……』
 うわ言のように南が呟く。
『女か……どいつもこいつも、同じようなことを……』
 卑下するかのように、住井が吐き捨てた。
『女なんかのどこがいい! 男同士の血の結束以上のものが、この世のどこにあるというのだ!! そんなことを考えるおまえや、ほかの奴らの方が異常なんだ!』
『なに……!?』
『男と男だけにしかわかりえない絆! それこそが最も素晴らしいもの! それ以外にどんな価値があるというのだ!!』
 いつしか、住井が熱に浮かされているように語り出すのを、南は疑惑のこもった表情で聞いていた。
(あいつ……前々からあやしいとは思っていたが……ホントにそうだったのか……)
 南が疑惑を確信のものとして受け止めている暇に、住井が言葉を続ける。
『……それをわからないやつなど……こうしてくれるッ!!』
 起き上がりかけていた南機に、再度住井機が挑みかかってくる。

 ブォン!

『くおっ!!』
 その拳を、南はかろうじて避ける。
『っ……この……! こっちが異常というなら、そっちの方こそ異常なんだっ! お前に俺のセンチでときめきのトゥルーなラブがわかってたまるか!! この(ピー)野郎!!!』

 ドカァッ!

 逆に南が、住井を殴り返す。
『ふっ!!』
 寸前でそれを防御して、住井機が反動で地面を後退する。
『なにをっ! 貴様こそ(ピー)のくせに!!』
 逆上した住井が三度、南に向かっていく。
『うるせぇっ! (ピー)なやつにそんなこと言われる筋合いはないっ!!」
『なんだと! おまえだって(ピー)で(ピー)だろうがっ!!』
『だまれ! (ピー)で(ピー)な(ピー)が言えた義理……』

(以下延々とふたりの会話が続くがあまりにも低次元なため省略)

 バキ! ドカ! グシャ! ベキ! ボコ! グキャッ!

 公な場ではとても口にできたものではない罵詈雑言を飛び交わせて、住井と南はただひたすら拳で殴り合いを続けたのだった。
 しかしそれは、当人同士にしてみればプライドをかけた問題なのであろうが、周囲からしてみればどう見ても子供のケンカというレベルにしか思えない、やり取りなのであった。


:18時05分 移動要塞内部・ブリッジ

 彼らの無意味な殴り合い(当人たちは大真面目だが)は当然、雪見らの所にも筒抜けであった。
「……これだから男ってのは、どいつもこいつも」
 広瀬はもはやまともに怒る気さえ、失せていた。
「ま、もとからあんな連中だしね」
 広瀬とは逆に、ひとり面白がっている様子の詩子であった。
「やっぱり男なんて相手にするもんじゃないわね……」
 その言葉は、表向きは共に賛同する所であったが、内実といえば……
(待っててね……七瀬さん……あなたは私だけのものよ……フフフフフ)
(茜……ラブラブになれるのももうすぐだからね……ふっふっふっふ)
「ふっふっふっふっふ……」
「ウフフフフフフフフ……」
 ……というように、それぞれが不穏当な妄想を抱いているとは露とも知らぬ、ふたりであった。
「…………」
 その一方で、彼女らよりも高い位置に一人は座った状態で、もう一人はその後ろに立って、共に硬い面持ちでスクリーン向こうのやり取りを観察しているふたりがいた。
「……彼らは、自分の行動が自分自身の意思によるものであると、疑ってはいない……」
 呟くような響きで、雪見が話し始めた。
「だけど、ある意味それは正しくて、ある意味では間違っている……」
「彼らが、自分以外の人間の意図によって、操られているというのですか?」
「少し違うわ…」
「?」
「彼らが抱く望みそのものは、自身の意思であることは違ってはいない。けど、本来それは、心の奥底に閉じ込めているはずの望み……」
「…………」
「自身でも、果たされることなどないと思っているはずの願い……でも、今の彼らはそう思ってはいない。それができると思っている。そう、思い込んでしまっている」
「どうして……」
「“連中”にとっては、ただの妄想にしか過ぎないことを、実現可能であるように思いこませるぐらい、かんたんなのでしょうね」
「まさか……」
「少なくとも私は、“あの人”からそう聞かされた。その言葉が、真実であるにせよ、偽りであるにせよ」
「…………」
「彼らだけじゃない。誰も決して気づかない。気づきもしない。私たちだって、もしかしたら自分で認識できないだけで、はじめから操られているのかもしれない」
「そんな……」
「私たちには、どちらなのかわからない。どれが本当で、どれが嘘なのか。最初からすべて、なかったことなのかもしれないし、彼らだって、操られているわけではなく単純に自分の欲望のためだけに行動しているのかもしれない。ただ目の前で行われていることだけが、たしかな事実なんだとわかる。それだけ」
「…………」
「だから、行動するしかない。自分の、たしかだと信じていることだけを、いまは、やるしかない。いまは、ただ……」


:18時06分 町内商業地付近

 住井・南の殴り合いを町内の別の場所で観察している連中、即ち防衛部の浩平・シュンのふたりは、広瀬ほどには彼らのやり取りを嫌悪感を露にしてはいなかった。
 というよりは、一見、どうでもいい感じで観察しているようでもあった。
 とはいえ、ただ黙って両者のやり取りを眺めていたわけでもないのだった。
「……そろそろヤバイな」
「そうだね」
 一見両者互角に見える応酬であったが、ふたりは冷静に互いに僅かな差が生じていることを見抜いていた。
 南の機体にガタがきている事に、ふたりは既に気付いていたのである。
 それを示すように、ちょうどその時住井機の拳にをくらって、南機が地に仰向けに倒されたのであった。
「仕方ない。氷上、南のところに繋いでくれ」
 浩平がシュンに告げる。


:同時刻 アルジーノン内コックピット

「俺は……デートするんだ……」
 機体を仰向けにされたまま呟く、南の意気込みは衰えていないようであったが、機体の調子は意気込みほどには言う事を聞いてくれそうもない様であった。
 なす術も無く、歯噛みするだけの時間が暫し過ぎた時。
『聞いてるか、南』
 突然飛び込んで来た浩平の声に、南が驚きの表情を浮かべる。
『加勢する。言う通りにしろ』
 言うだけ言うと、一方的に通信が切られる。
「な……! おい!!」
 南が噛み付くが、既に遅い。
「くっ……」
 顔をしかめる南だったが、今の状況では打開策が無いのも確かである。気乗りはしない南だったが、仕方なく向こうからの指示がくるのを待つ事にした。


:18時07分 町内中心部・南、住井戦闘地点

『な……!!』
 住井が目を見張った。彼の目の前で起き上がった南機が、とてつもなく巨大な物体を両手に抱えていたのである。尖った先を住井の方に向け、彼らのアルジーノンの何倍もある長大な矢尻型の姿を晒しているそれは、『永遠丸』であった。

 ガバァッ!!

 煙を巻き上げ地上から持ち上げられた永遠丸で南が狙いを定める。唯一の砲口が向けられた先に、住井機が立っていた。

 ドン! ドンドン!! ドンドンドン!!! ドン!!!!

 天を轟かせ、地をも砕き散らす永遠丸の200ミリ砲が、アルジーノンの装甲を次々と貫いた。
『……!!!』
 愕然とした住井の声にならない叫びが、コックピットから聞こえたようだった。

 ドーーーン……

 砲撃が止み、余韻が最後の残響となって周囲に溶け込んでゆく。そして静寂が戻ると同時に、住井のアルジーノンはどう、と地面に倒れ伏した。



:EYE-CATCH

:EPISODE:5-B
:Be Manipulated Persons
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(次回に続く)