中崎町防衛部 Vol.2 <Bパート>  投稿者:Matsurugi


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:CM

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※このCMはフィクションです。



:EYE‐CATCH

:EPISODE・2−B
:THE FERRET



:16時18分 中崎町内住宅地

「あのさ……防衛部って、いったい何なの?」
 ようやく立ち直った七瀬が、それまで疑問に思っていたことを口にする。
「あの巨大ロボットのこともそうだけど……、なんで折原がこんなことやってるわけ?」
「なんだ、そんなことも分らんのか」
 浩平が事も無げに返す。
「部と名の付くものといったら、たいていの学校にあるもんだろ? 立派な生徒の教育活動の一環だ。ちゃんと生徒手帳に書いてあるだろ」
「そういうことじゃないわよっ!」
 浩平の相変わらずのペースに、業を煮やした七瀬が怒りを爆発させる。
「なんで一介の学校の部活動がこんなもの(浩平の着ている装甲服を指している)を持っていて、おまけに巨大ロボットと戦ったりできるのよっ!!」
「……まあ、それにはいろいろと長い話があるんだが」
 浩平は七瀬の怒りをなだめようとしたが、すぐには収まりそうもなかったので、とりあえず話を続けることにした。

「防衛部といったら、やることは決まっている。すなわち、怪獣退治だ」
「……は?」
「軍隊じゃ相手にならない敵と戦うのが昔からの習わしってやつだろ」
「でも、私、そんな部があること全然知らなかったよ」
 そう訊ねたのはみさきである。
「まあそうだろうな。表立っては存在しないことになっているからな、この部は」
『どうして?』
「ま、それはいろいろと、な。おおっぴらに出来ないことを活動内容にしてることもあるんでな」
「もっとも、いつも怪獣退治ばかりやっているわけじゃないけどね」
 シュンが浩平の言葉に続けて語る。
「活動記録に残っている限りでは、実際にそうした出動はごく僅かなようだけどな。記録をすべて見たわけじゃないけど」
 浩平がそう言うのは、防衛部の活動記録が途中からしか存在していないためである、らしい。
 つまりそれは、部自体が相当古くから存在していた、という事をあらわしている。
「……それで、どうして、軽音部の部室がそんなことに使われているのですか?」
 今度は茜が訊ねる。
「軽音部は防衛部のカモフラージュなんだよ。その部費も表向きは軽音部だけのものだが、その一部は防衛部で使われているんだ」
「えっ、いいの? そんなことして」
「ちゃんと学校からは承認されている。ま、部が幽霊船みたいなものだからいろいろと都合はつくしな。もっとも、ほんとのことを知った部員のほとんどがこなくなったせいもあるが」
「……じゃあ何であんたはいるの?」
「そうだよ。わたし、浩平がちゃんと部活に出てるところなんて見たことないもん」
「そんな事はないぞ。おまえが知らないだけでちゃんと防衛部のほうの活動はやってたんだぞ。見つかるわけにもいかないから、おまえが知らないのも当然だが」

「……とまあ、そういうことだ」そう言って浩平が話を締め括る。
「…………」
 にわかには信じがたい内容に、暫くはその場にいた彼ら以外の全員が沈黙したままとなっていた。


:同時刻 某所

「へえーっ、そうだったんだ」
 話を聞き終えて、すぐに明るい口調の声が感心の言葉を洩らす。
 普通であればとても信じられないようなことであるはずの事を、たやすく受け入れてしまうのは、その人物の性格のなせるためであろうか。
「……わたしも知ったのはつい最近になってからよ。でも、そんなのがほんとうに出てくるとまでは、今まで思いもしなかったけど」
「でも……」そこに、隣に立っていた人物が疑問を口にする。


:中崎町内住宅地

「誰が、何の目的で、そんな部を設立したの?」
 瑞佳が、最も基本的ともいえる疑問を投げかける。
「……俺は、どこの学校にでもあるもんだと思っていたが……どうした? 七瀬?」
 七瀬が、思いっきり脱力感に苛まれて倒れていた。
「だいたい、もし怪獣や宇宙人が学校にやってきた時に、防衛部がないと困るじゃないか」
「そんなの来るわけないでしょっ!」
「世の中、いつ何が起こるかわからないんだぞ」
「あったとしても、そんな非常識な事態の起こることの方が少ないわっ!!」
「そうか? お前の転校する前の学校にはなかったのか?」
「んなもんあるかっ!!!」
「うーん……そうだったのか……」
「あんた……常識どこかで落っことしてきたんじゃないの……」
「そういえば昨日、そのへんに落っことしてきたかもしれないな」
「そんなわけあるかっ!」
「浩平、ダメだよ〜落とし物は気づいた時に拾ってこないと」
「あんたらね……」

 ……それはさておき。
「最近はほとんどやることがなくてな。装甲服を(着るだけで何十倍もの力を得られるとシュンがあらかじめ説明した)土研なんかに貸し出してたりしてたが、これでようやく本来の仕事が出来るってもんだ」
 と、浩平は気合いを入れるように言った。
「……ちょっと聞くけど……」
 横合いから、七瀬が(もはや何を言ってもまともに取り合わないだろうと思ったのか)質問を投げ掛ける。
「あんたら、実戦の経験あるの?」
「心配するな」即座に浩平が返答する。「おれたちはプロだ」
「いや、プロって……」
「防衛部である以上、負けることなんかなく、負けないからこその、防衛部なのさ」
 そういって浩平は(どんな根拠でそう言えるのかわからないが)胸を張ったのだった。
「…………」
 七瀬は、もはや何も聞く気になれず、頭痛を堪えるのがやっとであった。
 代わりに、茜が問い掛ける。
「……それで、これから……」


:16時23分 某所

「どうしますか?」
 その場に立ったままの人物が、それまでと変わらぬ落ち着いた口調で話し掛ける。
「別に悩む必要はないわ。計画は予定通りに進行する。たとえ、どんな障害が発生しても、ね。ある程度は予想していた事態なんだし」
 話し掛けられた方の人物も、今まで通り変わらぬ口調で答える。
「ま、いまのは“あの人”の受け売りだけど」
 そう言って、彼女はそのままの姿勢で、その場所全体に響く声で宣言する。
「全員、そのまま対処。予定のスケジュールに変更はなし。作戦を続行。アルジーを再起動させて」


:同時刻 中崎町内住宅地

 ガクン……!

 停止していた巨大ロボットが妙な音を上げて再び動き出したのを七瀬たちは目撃した。
「動き出したわ!」
「いよいよきたようだね」
 落ち着き払った態度で、シュンがその様子を見ながら答える。
「……その倍力服とかいうものだけで大丈夫なんですか?」茜がシュンに問い掛ける。
「大丈夫、他にも備品はあるよ」
 そう言うと、シュンが手元で何かを操作した。ピ、ピ、といった電子音のような音が聞こえてくる。
 それからしばらくして。

 ガシャン……ガシャン……ガシャン……

 アルジーの背後から、何かが近付いてくる規則的な音が響いてきた。
 その音に反応したアルジーが、後ろを振り返る。
 そこに見たものは。
 アルジーの体長よりも更に高い物体が立ちはだかっているのが、まず見えた。
 全体はひょろひょろと細長い感じで、たとえるなら痩せ細った体格をした背の高い人間と言った所であろうか。
 だが、外観はとても人間には見えないぐらい、異質なものであった。
 人の骨格標本に見られるような足に相当する部分が、地面をがっちりと踏みしめており、ほんの少し外側に開いたそれは、カメラの三脚を思わせた。
(実際にはそれは5本ついていた)
 それが、その物体の構成要素のほぼ2/3を占めていた。
 そして、三脚でのカメラが載っている部分に相当する場所、つまり足の付け根の上部には、巨大な円形をしたものが乗っかっていた。
 すり鉢上の形をしたそれが縦になって脚の部分にくっついており、その凹みの底部から細い突起状のものがまっすぐ垂直に突き出ており、先端は小さな球状になっている。
 ちょうど正面から見ればひとつ目を思わせるその部分は、何かによく似ていた。
 それは。
「防衛部といったらつきものの、パラボラ光線砲ってやつだな」
 浩平が新たに住宅地に登場した巨大兵器を、そう説明する。
「あ、ああ……」
 七瀬は、口をパクパクとし、声にならない声をあげたまま、今日何度目になるか分らないほどの唖然とした表情になる。
 しかし、アルジーの行動は迅速であった。
「甘いわねっ! 光線兵器は、機動兵器に弱いのよっ!!」(恐らくはアルジーに搭載されているであろう外部スピーカーからの声が)そう告げると、アルジーが地響きを立てながら、その光線兵器に向かって突進してくる。
 互いの巨体が激突するかと思われた、一瞬。

 ゲシッッッ!!!

 カウンターの飛び蹴りを食らい、地面を擦り建物を破壊しながら数百メートルもの距離を後退させられたのは、なんとアルジーの方であった。

 ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!

 すさまじい勢いでアルジーが面を引きずる音を鳴り響かせながら、遠ざかっていく。

 ドベベベ……!

 膨大な土煙を上げてさかさまになりながらようやく停止したアルジーを横目に、鮮やかな飛び蹴りをぶちかました防衛部の光線兵器が、すたっ、と着地する。


:同時刻 某所

「!?」
 予想外、いや予測の範囲を超えた展開に、それまで座ったまま戦況を見ていた彼女が、思わず動揺の声ををあげて立ち上がっていた。
 その周囲にいた連中も、それまでの余裕の表情が消え失せ、(1人を除いて)唖然となって今起こった出来事を声もなく見つめた。


:中崎町内住宅地

「見たか!!」浩平の叫ぶ声。「光線兵器の弱点である、機動力・運動性、その両者を克服すべく開発された強靭な足!!」
 その言葉通り、力強く大地を踏みしめる光線兵器の四本の足が、膝にあたる部分から屈み込む。そして、十分に間を置いてバネを溜めると、勢いよく地を蹴って高く跳躍する。
 その先、ようやく態勢を整えなおして起き上がったアルジーに向かって、横に長い放物線を描き、突っ込んで行く。
『どりゃあああっ!!!!』
 ケモノのような叫び声をあげつつ、光線兵器はふたつの足を器用に交差させると、アルジーの頭部めがけてそれを叩き込んだ。

 ベシィッッッッッッ!

 見事に喉元に決まったフライング・クロス・チョップを食らい、アルジーは両手を上げたまま、再度地面に叩きつけられた。
「あれこそ究極の四足歩行型光線兵器、“みゅーつー”だ!!」
「違う……何か間違っているわ……」
 浩平が高らかに宣言する横で、七瀬は最早疲れ切った顔で戦いを見ながら、呟いた。
『でりゃあああああっ!!!!!』
 再び雄叫びを上げ、仰向けに倒れているアルジーに向かっていく光線兵器――みゅーつーはそのままアルジーをこれまた器用にその足で抱え上げると、そのまま足を捻りアルジーを頭部から叩きつけるようにして地面に投げつけた。

 ドガガンッ!

 衝撃を受け、周囲の建築物が朦朦たる埃を巻き上げながら倒壊してゆく。
「あのさ……」
 そのすさまじい戦闘の最中、七瀬が戦いを眺めている浩平に向かって話し掛ける。
「さっきから気になってたんだけど……あの“みゅーつー”とかいうのがさっきから叫んでいる声って……」
「ああ、そのことか」浩平は戦いから目を逸らさぬまま答える。
「みゅーつーには、戦闘様式を学習させるために補佐用のAI(人工知能)を搭載してある。その際に、ある特定の人格形態を設定して、その行動様式の模倣と、AIの学習の手助けが行われるようにプログラミングされている。いわば、擬似人格のようなものだな。それにより、みゅーつーの戦闘時の行動がモデルとなった人格と似てくることになる。声も、そのひとつというわけだな」
「へえ……それで、誰の人格をモデルにしたの?」
 七瀬の周囲の空気が危険なものに変化していた事に、この時、戦闘を見ていた浩平は気付かなかった。
「もちろん、決まってるだろ」浩平が堂々と答える。「七瀬だ」
「そろそろ、フィニッシュのようだね」戦闘状況を観察していたシュンが呟く。
 その言葉通り、アルジー対みゅーつーの格闘戦は、決着が今まさに着こうとしていた所であった。
『うおりゃあああああああーーーーーっ!!!』
一際高く雄叫びをあげたみゅーつーがその足でアルジーを抱え込み、そのまま高々と持ち上げ、一気に背後めがけて落下させた。

 グワシャアァン!!!
 ドゲシイッ!!!

 綺麗な曲線を描いて炸裂したバックドロップが、アルジーの頭部を地面にめり込ませた。
 ……ついでにこの時同時に、浩平の背後からの七瀬の上段蹴りが、(装甲服を着たままの)浩平の頭部に炸裂し、浩平をうつ伏せに地面にめり込ませていた。
「勝手にそんなことに使うなあああーーーーーっ!」
 ……一応、戦闘は終着したが、七瀬の怒りは、今まさに浩平に向けられかねない状況であった。
「自業自得だと思うよ、浩平……」瑞佳が、ぽつりと、呟く。
「うーむ、この蹴りの威力……やはりモデルにして正解だったな……装甲服がなかったら、即死だったかもしれないけど……」
 倒れたままの浩平は、(さすがに七瀬には聞こえないように)そう呟いたのだった。


:16時27分 某所

「…………」
 その場にいた誰もが、声をあげることすら忘れていた。正面スクリーンを見ていたもの全てが今の戦闘に釘づけとなり、一言も声を発する事無く、その光景を眺めていた。
「……アルジー、沈黙。戦闘継続は不可能です……」
 抑揚を欠いた声の報告の言葉に、ようやくその場にいた人々は、呪縛から解き放たれたように騒然とし始める。
「なかなかやってくれるわね……!」
 椅子に座りなおしながら、最も高い位置にいる人物が呟く。その声は、すでに冷静さを取り戻していた。
「どうしますか?」後ろに立つ人物が問い掛ける。
「まだ、緒戦を落としただけよ。幕は上がったばかりだわ。舞台の本番は、これからよ」
 そして、ほんの少し顔を上げる。
「ハンガーの方は?」
「すでに出撃の準備が進んでいます」
「急がせて。すぐにでも計画をフェイズ・ツーに移行するわ」
 その言葉に頷くと、それまで一歩もその場を動かなかった後ろの人物は、座っている人物の横へと進み、正面にある幾つかのコンソールを操作し始めた。
「総員、第1種戦闘配置。繰り返す……」


:16時29分 某所・ハンガー

「どうやら、俺の出番のようだな……」
 アナウンスの声が響く中、その人物が後ろを振り返りながら、低めに押さえた声で、近くに立つ人物に向かって話し掛ける。
「無人アルジーがやられたわ」
 話し掛けられた方が、きつめの口調の声で返す。
「そうか……わかった……」
 顔だけが露出した、全身を覆い隠す服装に身を包んだ人物はそう言うと、両手で胸元に抱えているヘルメットを持つ手に、力をこめた。
「ところで……」
「何だ?」
「あんた、七瀬さんたちを捕まえにいった時に、一緒に行かなかったでしょ?」
「何のことだ」
「とぼけないで。他の男連中は南も含めてちゃんといってたんだからね。ごまかしても無駄よ、住井君」
「あ、あれは……俺がやるような仕事じゃない」
「なにいってるのよ。いつの時代も肉体労働は男が担当するって決まってるのよ」
「あのな……」
「文句ある?」
「くっ……ふっ、パイロットには、あんな地味な任務は似合わないのさ」
「カッコつけても、後でバイト代から差っ引くように言っとくから、忘れないでね」
「そ、それは、ちょっと勘弁を……」
「(無視)とにかく、出撃。いいわね」
「お、おうっ……(泣)」
 そんな会話が交換された後、ヘルメットを持った人物――住井護を残し、もう1人はその場を立ち去って行った。
 彼らの周囲では、先程から慌しく動く作業員たちの声が飛び交っていた。
「MkIIの発進準備急げ!」
「計画はフェイズ・ツーに入った!」
 無数の雑然とした音が鳴り響くその中心に、アルジーによく似た、しかしその表層は更に多くの装甲に覆われ、より機械的な外見となった赤と白の巨体が2機、あちこちからコードを這わせながら鎮座していた。
「われわれの敵は防衛部のみ! 繰り返す……」
アナウンスと警報の入り交じる中、タラップに乗ってコックピットへと移動しながら、住井は険しい顔付きでヘルメットを目深に被る。
「敵の名は、防衛部!! 繰り返す……」



:つづく



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:たぶん、予告だと思うよ

よくわからないけど、浩平君の活躍で町に現れたロボットは倒されたんだって。
でも、その間に学校の方が大変な事になっていたんだそうだよ。
いったいどうなっちゃたんだろ……。
それで、また新しくロボットが出てきたり、町でいろんな事が起こったりするそうなんだよ。いろいろと忙しそうだよね。
でも、そのロボットを操っていた人たちの正体を知った時は、さすがに私もびっくりしたんだよ。
え? 誰なのかって? それは次回までのお楽しみだよ〜。
……明日も、いい風が吹いているといいね……。

(浩平君、これでいいの?)
(ああ。申し分ないほどの完璧な予告だ)
(何だか恥ずかしいよ)
(そんなことないぞ。どっかのだよもんだよもん言ってる奴よりずっとマシだ)
(あれは浩平が書いたのを読んだだけだもんっ!)
(例えそうだとしても、それをうまくアレンジしてこそプロというものだろ)
(別にプロじゃないもんっ)
(なんだ、自覚の足りない奴だな、根性が足りんぞ)
(はう〜)

<Na:川名みさき>
<スクリプト作成:間に合わなかった為みさきのアドリブ>
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(Vol.3に続く)