中崎町防衛部 Vol.1 <Bパート>  投稿者:Matsurugi


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:CM

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※このCMはフィクションです。



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:15時26分 廊下

 4人は図書室を離れ、歩いていた。
「……これから、どうするんですか?」
 茜が七瀬に問い掛ける。
「……警察にでも届けますか?」
「そんな事いっても……信じてもらえるかしら、あんな事……」
「無理だと思います」
「いや、断言されても……」
「よくわからないけど、無理だと思うな」『むりなの』
「…………」
 七瀬の疑惑は、茜どころか、みさきと澪にも否定されていた。
(最も、後のふたりは半分は面白がっているように、七瀬には思えてならなかったが)
「でも……ひょっとしたら私達全員口封じに消されるかもしれないのよっ……!」
 それでも七瀬は、未だにこの事態を深刻そうに捉えているようであった。
「……発想が飛躍し過ぎです」
 一方の茜は、全く取り合ってはいなかったが。
「あっ、七瀬さんっ!」
 と、進行方向からの声に4人が顔を向ける。
 小走りにやってきたのは、瑞佳と繭だった。


:15時28分 同場所

「と、いうことなんだけどっ……」
 瑞佳の話を聞き終えて、七瀬は不敵な表情を浮かべた。
「……これで間違いないわ……明ら……っ……に、この学校の……とっ……こかで、何か……行われている……だーーっ! やめんかいっ!!」
 七瀬は真剣な表情でセリフを言った……つもりだったのだが、
 髪にじゃれつこうとする繭を避けながらの言葉だったため、
 それは、まるっきり間の抜けたセリフになってしまっていた。
 しかも、その後はお決まりのように繭に飛びつかれることになってしまい、
 もはや、話を先に続けられなくなってしまっている。
「? 何かあったの?」
「……別にたいしたことではないと思いますが」
 (七瀬の事はほっといて)瑞佳の問いかけに、茜が変わって図書室での出来事を話す。
「うーん……でも、それと私の見たものと、何か関係あるのかな?」
「……それはわかりませんが……どちらにしてもこのまま放っておくわけにもいかなくなったようです」
「どうするの?」『するの?』
 と、みさきと澪。
「……とりあえず、考えがあります。行きましょう」
 そう言って、茜は廊下を歩き出す。
 その後を追って、瑞佳、みさき、澪も同じく歩き出す。
「あっ、ちょっと、待……って、ギャーーーーーーッ!!!」
 七瀬だけは、繭と戯れてて(違うって)それどころではなかったが。


:15時38分 職員室

「んあー、不審な人物に、怪しいロボット?」
「……はい」
 茜が職員室にて事の顛末を話している相手は、彼女らのクラスの担任、髭である。
 考えがあるということで茜についてきた七瀬たちであったが、
 予想もしてなかった場所に連れてこられた事に、七瀬は戸惑いを隠しきれない。
「……あのー」
 そもそも、いきなりこんな突飛な話を聞かされて、どれだけ教師が信用するというのか。
「……やっぱり、警察に……」
 七瀬が声を掛けようとした時。
「んあー、だったら、防衛部に行くといい」
「って、あるんかいーーーーっ!!」
 極めて普通にそう対応した髭に、七瀬は思わずベタな突っ込みを入れる。
「んあー、場所はだなー……」
「良かったね」『良かったの』
 でも、みさき、澪は何も不思議がる事無く単純に喜んでいた。
「……行きますよ」
 独り頭を抱える七瀬を横目に、髭から場所を聞いた茜は、そこに向かうべく職員室を出る。
「はあっ……この学校って一体……」


:15時41分 廊下

 ざわざわ。ざわざわ。

「…………」
 二人組の男が、廊下を歩いていた。
「おい、周りの奴が見てるぞ……」
 いや、あえて言うなら、ものすごく怪しい格好をした二人組、と言い換えた方がいいかもしれない。
 彼らの歩く近辺では、その姿を目撃した生徒達が怪しみの目を向けたり、
 何かをひそひそと話し合っている姿を見ることが出来たからである。
「本当に目立たない格好なのか、これ?」
「仕方ないだろ、知ってる奴に遭わないとも限らないんだからな」
 そう話し合う彼らの出で立ちがどんなものかといえば、黒のサングラスにオートバイのヘルメットで顔を隠し、
 更にその上からほっかむりと工事用のヘルメットを被る(というかのせている)という念の入れようであったが、
 果たしてそれがどうひいき目に見ても、不審人物でないと言い切れるものであろうかは、微妙なところであった。
(しかも校舎内である)
「俺は、余計目立っているとしか思えんのだが……」
「大丈夫だ……あいつを見ろ」
 そう言って、男のひとりが指差した方向に。女子生徒の制服を着た人物が歩いていた。
 ……同じようにサングラスとヘルメットを付けて。
 当然、その姿は一際他の生徒の不審の眼差しの的となっている。
「中崎……あいつは何を考えているんだ……」
 もうひとりの男が呆れたようにこぼす。
「!!」
 突然、男の一人が立ち止まる。
「どうした?」
「よく考えてみたら……里村さんたちの顔を知っているのって、クラスメートの俺たちだけだろ」
「それは、そうだが……」
「じゃあ、別に動いている連中はどうしているんだ?」
「! そう言えば……」


:同時刻 廊下(別の場所)

 その頃、別の廊下では、手当たり次第に通り掛かった女子生徒を拉致するという、
 怪しい装束の集団が目撃されていた。
 (後日の生徒の証言による)


:15時42分 廊下

 (怪しい格好の)男が別の班の連中の動向について頭を悩ませていた時。
「おいっ!!」
 別の男の方が声を上げる。
「見つけたぞ!」
 彼が指し示す方向、そこに丁度、七瀬らが通り掛かる。
「!!」
 当然、その姿は七瀬らも気づくところであった。
(あれだけ目立つ格好なら当然だが)
「よし、とりあえず身柄を拘束して……」
 男のひとりが機先を制して行動しようとする。
 が。
「……沢口」
「!!」
「……沢口」
「……や、やめろ!」
「……沢口」
「やめろおっ!!」
「……沢口」
「やめてくれええええええっ!!!!」
 男(南)が近付くよりも早く、茜が滅びの言葉(南にとっての、だが)を口にする。
 そのために、その場で南は悶え苦しみ出す。
「……もう少し、続けましょうか?」茜が七瀬に向かって告げる。
「……って、そんなことより、今のうちにっ!!」
 いきなりのことで身動きすら取れなかった七瀬であったが、我に返り、茜の手をとってそこから逃げ出す。
「あっ、七瀬さん〜、待ってー」
 その七瀬を追って、瑞佳、みさき、繭、澪も続く。
「ぬぉぐわおぉぉぉぉぉ!!!!」
 彼女らが去った場所では、再度の精神攻撃をくらい、
 すっかり自己崩壊寸前まで追い込まれた南の苦悶の声が未だ響き渡っていた。
「……南森、これ、どうする?」
「面倒だから、放っておけ。今は彼女らを追うのが先だ」


:15時44分 廊下(先の場所の1階下)

 校舎内を、6人は走る。
「それで、その防衛部とかってのある場所は!?」
 走りながら七瀬、茜に訊ねる。
「……確か……」
 茜は少し苦しそうな(表面上はあまり変わっているようには見えなかったが)声で場所を告げる。
 七瀬、それを聞いて、そのまま更に速度を上げる。


:15時46分 別校舎3階

 目的の場所で、七瀬は急停止。
 少し遅れて、瑞佳も駆け込んでくる。
 息を切らしてはいるが、さすがに毎朝の鍛練で馴れているだけあって、七瀬に遅れを取らない。
「ここで間違いないはずだけど……」
「えっ……でも、ここって……?」
 ふたりがその場所の前で逡巡していると、続けてみさきがやってくる。
「えーと、場所はここであってるよねー?」
「あ、はい」
 みさきが確認する言葉に、瑞佳が答える。
「で、どこなの〜? ここ?」
「それが……」
 七瀬が言うのを躊躇っているうち、残りの三人も到着する。
 先の三人に比べると、ついてくるのがやっとといった感じの彼女らにとって、
 七瀬らのペースは相当こたえているようであり、
 一番最後に到着した澪など、ほとんどへたりこみそうな風体である。
「ねえ、ほんとにここなの?」七瀬、茜に再度確認。
「……聞いた限りでは、ここに間違いないはずです」茜、逡巡することなく肯定。
「でも、何で……?」
「……入ってみれば、わかります」
 茜に促され、とにかく6人はそこに入る事にする。『軽音部』と書かれたその場所に。


:15時47分 軽音部部室内

 ドアを開け、中へ。
 がらんとした室内。その、日当たりの悪い片隅に。動くものの気配。
「よぉ」
「やぁ」
 そこに。二人の男子生徒が立っていた。
「えっ?」
「あんた……」
「…………」
「その声は……」
「みゅー?」
『なの?』
 しかも、それは。彼女らもよく知る人物。
 折原浩平と氷上シュンであった。


:15時49分 軽音部部室前

「しまった!!」
 七瀬らの後を(南を置き去りにして)追ってきた南森が、声を上げる。
「これでは、手がだせないぞ」
「どうする?」
 一緒に追ってきた中崎が、問い掛ける。
「仕方がない、計画の方を急がせるしかないだろう」
「そうだな……、よし、戻ろう」
 頷いて、ふたりは踵を返す。
「……その前に、一応、南を回収しとかなきゃな」


:15時50分 軽音部部室内

「何で、あんたがここにいるの?」
 七瀬が、もっともな疑問を、浩平にぶつける。
「何でと言われても、俺はここの部の所属なんだから、居たところで何の不思議もないだろ?」
 もっともな答えである。
「おまえらこそ、連れ立ってどうしたんだ?」
 逆に問いを返された七瀬は、困惑の顔を浮かべる。
「じゃあ、やっぱり、間違ってたの?」
「何の話だ?」
「実は……」
 茜は、ここに来るまでのいきさつを話す。
「……なるほど、やっぱりな」
「?」
 浩平は一人納得顔であったが、七瀬らには当然その理由は分らず、不思議そうな顔になる。
「それなら、大丈夫だ。間違ってはいない」
「どういうこと?」
「つまり、ここが防衛部ってことだよ」


:15時52分 某所

「……始動、20秒前です」
「最終安全装置、解除」
「動力接続。全回路到達まで、3.07秒」
「ハッチ開放。ルートは6番を使用」
「了解。射出口への移動を開始します」
「進路、クリア。各部正常に作動中」
「最終確認作業終了。全て問題ナシ」
「発進準備、完了です」
 その言葉を受け、それまで作業のやり取りをじっと聞いていた、
 一段高くなっている位置に座す人物が、僅かに顔を上げる。
 一呼吸の間。そして。
「発進!!」
 凛とした声が、辺りに響き渡った。


:15時54分 中崎町内住宅地

 ズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズ……!

 周辺に、重々しい地響きが轟く。
 付近の建物が、細かく振動する。数秒、それが続き。

 ズドドドドドドドドドドドドドド……!

 突如、家屋の幾つかに亀裂が走り、地中から持ち上がるようにして、建物が倒壊する。

 ドン……!

 完全に瓦礫と化した建物の周辺、もうもうと舞い上がる煙の中に、何かの影が揺らめく。

 ズゴ……!

 煙を突き破り姿を見せたのは、球形をした何かの頭部。
 地面から突き出した、それが徐々に持ち上がっていくと、その下から全身の姿が露になる。
 粉塵の中に聳え立つ、異様な形状をした巨躯。
 それは、巨大な人の形をした物体を思わせるものに、人々の目には映った……。



:つづく



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:次回予告

え、え〜と、突然地面から巨大なわけのわかんないものが出てきたんで、
わたし、すごくびっくりしたんだよもん。
いくら攻撃しても全然びくともしないそうだよ、どうなるんだろ〜、はう〜。
でも、そこに新しく正体不明のロボットが登場したんだよもん。
それに乗ってたのは何と……。あっ、これは次回までの秘密なんだよもん。
でも、いったい、これからどうなっちゃうんだろ〜、心配だよ〜。
えっと、とにかく次回もぜったい見て欲しいんだよもん!

(って、浩平〜、この文章なに〜!)
(いや、お前の口調を見事に取り混ぜた完璧な予告だと思うぞ)
(私、こんな言い方なんてしないもんっ)
(立派にしてると思うが……)
(う〜)

<Na:長森瑞佳 スクリプト作成:折原浩平>
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(Vol.2に続く)