おねめ〜わく 続きの続き 投稿者: Matsurugi
 瑞佳がねこの世界を行き来するようになってからずいぶんとたった
のだが、その間の様々な努力にもかかわらず、浩平のねこ苛めは、
「……全然止めてくれません」
 という有様であった。
 瑞佳もわかっていたつもりではいたが、こうまで執拗である事に怒
る気力も失せて、呆れるばかりであった。
 それで、ふと、瑞佳は聞いてみたのだった。
「ねえ、浩平をわたしの世界に送り込んだりする事は出来ないの?」
「……呼び出す方法は分っていますが、それ以外は今の所……」
「そう……」
 と瑞佳は頷いたのだが、そういえば、ここに来てから何かと騒がし
いばかりだったのですっかり忘れてしまっていたのだが、最初に会っ
たときに浩平に聞きそびれていたことがあったのを思い出した。
 何故、浩平はこの『ねこの世界』に現れたのだろうか。浩平は確か
に、あの時、瑞佳の前であの世界から……。

「確かに、あの時、俺は瑞佳の目の前で、あの世界から消えた。そし
て、えいえんと呼ばれる場所に旅立った」
 瑞佳が浩平に疑問に思っていた事を聞いたとき、浩平はそういって
話し始めた。
「えいえんの世界の中で、俺はそこでずっともとの世界に戻る事を願
った。長森のいる、もとの世界に」
「…………」
「長森のことを思い、長森のことだけを考えて、そこで過ごした日常
の思い出を忘れないように。あの日々を心の中にいつまでも留めてお
けるように。そうして、いつかこのえいえんの世界を終わらせる事を
考えた」
「浩平……」
「そして、俺はえいえんを終わらせる事が出来た。そこから帰ってこ
られた……と思ってた……ところが」
「?」
「俺が、えいえんのせかいから帰ってきて、やってきた所は……こん
な、頭にねこの耳をつけたわけのわからない奴らがうろついている世
界だった、というわけだ」
「……えっと……」
 瑞佳が、何と言ったらいいのか逡巡していると、
「大体、あいつらはもとはねこだったというのに、人間みたいに歩い
て、しゃべって、しかも、そんなのばっかりが世界じゅうにいるんだ
ぞ? 不条理だとは思わんか?」
「で、でもっ……ほら、かわいいしっ……」
 そう言う問題ではないと思うが……。
「あんなんがかわいいとか言う次元の問題か? 長森じゃあるまいし、
俺がそんな所でまともに生活していけると思うか!?」
 その割には、いつもと変わらないように見えたが……。
「とにかく、俺はこんな所でひとりだけでずっと生活なんぞしたくな
いぞっ!!」
「そ、そんなこといわれてもっ……」
 瑞佳にはどうしようもなかった。

「……と、いうわけなんだけどっ・・・…」
 ねこたちの所に戻って、瑞佳はさっき浩平から聞いた事情を説明し
た。
 ねこたちはしばし考え込んでいたように見えたが、やがて、あかね
が口を開いた。
「……もしかしたら、何とかならないこともないかもしれません」
「えっ!どうやって?」
「これまでわかっていたのはほかの世界から人を呼び出す方法だけだ
ったのですが、調べれば、他の方法も判明するかもしれません」
「ほんとっ!?」
「……確証はありませんが……」
 浩平をもとの、瑞佳のいる世界に送り込むことができれば、問題は
解決する。
 その事を話したら、浩平も、それが可能ならと、承知したのだった。
 こうして、ねこたちは、浩平の苛めの魔の手から救われたのであっ
た。

「ようやく、救われた気分だわっ」
「……ありがとうございました」
「よかったね」
 ねこたちが口々にお礼を述べる。(みさきだけは他人事みたいな口
調であったが……)
 ねこたちが瑞佳と浩平の前に立つ。
「……とりあえず、これ以上ご迷惑はおかけしません」
「近づくんじゃないっ、だからって別におまえらと親しくするいわれ
はないんだからなっ!」
 浩平は相変わらずだ、と瑞佳は何となく微笑ましく思った。
 と、浩平が瑞佳の方に向き直り、言いにくそうにしながら、話し始
めた。
「……長森」
「えっ?」
「その……、何だ……、なるべく早く戻ってくるからなっ」
「えっ……」
「こうして会うこともあんまり出来なくなるかもしれないけど、いつ
かきっともとの世界に戻って、今度はずっと瑞佳のそばにいてやるか
らな」
「浩平……」
「それまで……待っててくれるか?」
「……もちろんだよ、浩平っ」
 曇りの無い笑顔で、瑞佳はそう答えたのだった。

 こうして、瑞佳の生活はもとに戻った。
 ちょっぴり、いや、だいぶ変な経験だったけど、終わってみれば、
それなりに面白くも、楽しくもあったように瑞佳には思えた。
 それに、浩平とも約束する事ができたし……。
 いつか、浩平が戻って来る日を待ちわびながら、瑞佳は家への帰り
道を歩いて行った。
 夏休みも終わり近い、よく晴れた日であった。



 と思ったら。
「えいえんはあるよ」
「ここにあるよ」
「……えっ?」

 ぽんっ。

「ぎゃ〜〜〜〜っ、イタイ、イタイ、イタイ〜〜〜っ!!」
「いや、目覚まし代わりにしようと思ったんだが……」
「えっ、えーっ!?」
 瑞佳は、またまた、ねこの世界に呼び出されていた。
「機嫌が悪くなるんだよ」
「……何とかしてください」
 どうやら、瑞佳がいないと、やっぱり浩平はねこたちを苛めている
ようであった。
「わーっ、そこまで面倒見ていられないよ〜っ!?」

おしまい

〜〜〜〜〜

あとがき
どうも、Matsurugi(まつるぎ)というものです。
3回目のSS投稿になります。

というわけで、無事、『おねめ〜わく』が終わりまで書きあがりました。
ひとまず、肩の荷が下りたというところでしょうか。

この話しを考える事になったきっかけは、まあ単純ではありますが、元
になっているコミックが「ねこの世界に呼び出される女の子」が主人公
であるということで、ねこと関連する、という事で、瑞佳に置き換えた
場合どんな風になるか…、というわけで書いたという次第です。

そんなわけで、オリジナルをベースにして、そこにONEのキャラクター
を当てはめた、という感じになっていますので、設定に多少ONE関
連のものを使ってはいますが、あまり深くまでは考えていません。

…しかし、なんで「ねこみみ」なキャラが出てくるものになっているの
でしょうか?
(オリジナルの方に出てくるのは(二本足で立って、服を着ていますが)
普通のねこです、念のため)

一応、この『おねめ〜わく』、続きも考えております。今回登場しなか
ったほかのONEのキャラクターも出演させる予定でおりますので、よ
ろしければ、お読みいただけると、幸いです。
(ひょっとしたら、違う作品になっているかもしれませんが…)

他の方々のSSも欠かさず読んでいます。感想はなかなか書けませんが、
これからも頑張ってください。
また、よろしければ、こちらへの感想もお待ちしております。

という所で、次回がいつになるかわかりませんが…

それでは、失礼致します…