ワッフルを食べた帰り道。 オレ達。オレと茜と柚木と澪の4人は、夕方の神社に寄り道していた。 「あ、澪ちゃん、御神籤引こうよ、御神籤」 うん! 元気良く頷いて柚木と一緒に走る澪。 二人して巫女さんに百円玉を渡して、大きな筒を振っている。 「なあ、茜」 オレはそんな二人を見るともなしに見ながら、取り残された形の茜に声をかけた。 「…はい」 「なんで、柚木はあんなに澪を可愛がるんだ?」 「浩平は上月さんの事、嫌いですか?」 確かに澪は可愛いと思う。 茜も澪の事を可愛がっているし、オレとしても、茜達が澪を可愛がる気持ちは分からないでもない。 「嫌いって事はないけどな…」 ただなぁ…。 「柚木の場合はちょっと可愛がり過ぎとでも言うか…」 茜は得心したように頷いた。 「浩平、私の身長、知ってますか?」 「さあ」 オレは茜の事を見下ろした。 ふむ。大体長森と同じくらいだよな。 「…160位か?」 「大体それ位です」 茜は少し嬉しそうに微笑んだ。 「それが?」 「それでは詩子の身長は判りますか?」 えーと…。 結構小柄で、茜よりもかなり背は低いはずだから…。 「150?」 「…大体それ位です」 と、茜が頷くのと同時に。 「えー、152センチだよ」 と、横から柚木が口を挟んできた。 手には御神籤を握っている。 隣では澪が自分の御神籤の文面を真剣な表情で読んでいる。 「2センチ位、誤差みたいなもんじゃないか」 「そんな事ないよ。大きな差だよ。ねえ、澪ちゃん」 うん。と頷く澪。 「はあ…ったく。で、澪、運勢はどうだった?」 にっこり。 微笑み、スケッチブックを見せる澪。 『吉なの』 「そうか、まずまずだな」 「…普通が一番幸せですから。良かったですね」 「私は凶だったんだけど、枝に結べばチャラなんだったよね?」 いつもと変わらない笑顔でそう言う柚木。 ここまで気にしていないって事は、こいつの場合、御神籤を引く事に意味があるんだろうか? 「はい、枝に結べば厄落としになるそうです」 へえ。あれはそう言う意味があったのか。 あれ? 厄落としって事は。 「吉のも結んで良いのか?」 「…確か、良い事は叶い、悪い事は厄を落とすと言う意味がある筈です」 「と、言うわけだから、澪ちゃん、枝に結びに行こう」 うんっ! 頷き、柚木の後を走る澪。 オレはそんな二人を見送り、茜にさっきの続きを聞くことにした。 「で、柚木の身長がどうしたって?」 「上月さんは詩子よりも背が低いんです」 「確かに澪は柚木よりも背が低いな」 頭半分くらいは違うだろうか。 枝に手が届かず、一生懸命背伸びをする澪に、枝を引っ張って結ぶ手伝いをする柚木を眺めながら呟く。 「だから、可愛がってるのか?」 つまり優越感を感じられるからか? だとしたらあんまり感心できないな。 その感情が声にこもってしまったのだろう。茜は少し考えてから言った。 「…浩平、多分勘違いしています」 「勘違い?」 「上月さんは詩子よりも背が低いから、詩子にとっては自分が守ってあげる事の出来る数少ない対象なんです」 「守る?」 「…高い所の物を取るのを手伝ってあげるとか、そういう事を含めた、守る。です。上月さんは詩子にとって、妹のような存在なんです」 いもうと。 「そうか…」 その気持なら良く判る。 枝に御神籤を結んで、わーい。と喜んでいる澪と一緒にはしゃいでいる柚木。 そんな二人を見ていると何となく優しい気持になれるような気がする。 「…あ、そうだ、茜、ちょっと待っててくれ」 そう言えばこの神社にはあれがあったじゃないか。 オレは、巫女さんのところに行って、100円を払い、小さな紙袋を二つ買った。 そして、澪達を呼ぶ。 「澪、柚木、こっちに来てくれ」 「なに?」 と柚木。 その後ろから澪がにこにこしながらついてくる。 …いもうと。か。 確かにそんな感じだよな。 「良いものやるよ」 オレは二人に白い小さな袋を一つずつ手渡した。 「これ、何?」 と、訊ねる柚木の横で、がさがさと袋を開ける澪。 トウモロコシだの小さな豆だのが澪の手の平に零れる。 「ああ、餌だ」 「…え、さ?」 柚木の表情が引きつる。 その横でわーい。と餌を撒き始める澪。 すさまじい勢いでハトが群れをなしてやってくる。 バサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバ サバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサ。 人馴れしたハトは、澪が餌を撒くのを待たず、その肩と言わず頭と言わず、とにかく全身に群がっている。 ……ちょっと怖いかもしんない。 澪(の持つ餌)を食べ尽くしたハト達は、すぐそばで餌の袋を持っている人間を発見した。 バサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバ サバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサ。 「ひっ!」 なぜか硬直する柚木。 そして再びハト人間の出来あがりである。 はうー…。 ハト人間柚木の隣で、ボロボロになった澪は、それでも楽しそうに笑顔を見せた。 「面白かったか?」 うん。 ちょっと疲れた感じだが、笑顔で頷く澪。 …しかし、柚木の回りのハト、中々離れないな。 「…浩平、酷いです」 茜が呆れたような声でそう言った。 「酷い? って何が?」 「…詩子はハトが苦手なんです」 は? 「…なんで?」 「子供の頃に、ああ言う目にあったことがあるからです」 茜が指差した先では、柚木がしゃがみこみ、その背中、肩、頭に無数のハトが群がっている。 中には他のハトの上に乗っかって餌を奪い取ろうとするハトまでいて、柚木本体は殆ど見えない状態である。 オレはああいう状態って、なんだか懐かれてるみたいで結構好きだけどな。 澪も喜んでいたし。 しかし、ハト達、柚木から離れないな。 「…所でとっくに餌がなくなっていてもおかしくないんだけど…なんでだ?」 「詩子が餌の袋を握り締めているから、中々食べられないんだと思います」 「なんで、柚木はそんな事をしているんだ?」 実はハトが好きなんじゃ…。 「パニックを起こして硬直しているんだと思います」 ああ、なるほど。 …って、そこまで判っているんなら助けてやれよ。茜。 オレは慌てて、柚木にたかっているハト達を追い払い、餌の袋を奪い取って放り投げた。 バサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバ サバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサ。 ハト達は餌の袋めがけて一斉に飛び立つ。 うーむ、壮観。 「ううっ…ハトは嫌だよぉ…」 後にはしゃがみ込んでベソをかく柚木。 オレを非難の眼差しで見つめる茜。 そして。 なでなで。 しゃがみ込んだままの柚木の髪を優しく撫でる澪がいた。 ハトに襲われてボサボサになった髪を優しく梳き撫でる澪は、いつもの天真爛漫な笑顔ではなく、もっと優しい、聖母のような微笑を浮かべていた。 「…なあ、茜」 「…はい」 「これじゃどっちがお姉ちゃんか判らないよな」 「…とりあえず長女は私です」 そう来たかい。 澪に関しては、みさき先輩と言う強力なライバルがいるんだけど、まあ、いいか。 さて。 取り合えず謝っておくか。 「柚木、ハトが苦手なんだってな。知らなかったんだ。ごめん」 女の子を泣かせたら、理由はどうあれ男が謝るのが筋だ。と由起子さんも言ってた事だし。 「うー…折原君、酷いよぉ」 「ごめん。今度お詫びになんかおごるからさ」 「…うー…」 「ワッフルか? クレープか?」 「…ぬいぐるみが良いです」 「…茜」 「…冗談です」 『お寿司が良いの』 …おひ。 『冗談なの』 「…じゃあ、ケーキ。…ザッハ・トルテご馳走してくれたら許してあげる」 「わかったそれで手を打とう」 「ぬいぐるみ…」 まだ言うか。 『お寿司』 こいつらは…。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 KOHです。 多分初めまして。一部の方は御久し振りです(笑) ONE発売から一周年。という事で、記念にSSをアップしようかと思いまして、少し前に自分のHPにアップしたSSを持ってまいりました。 このSSは主にONEのトレカの情報をベースに書かれています。 トレカの情報に付いては、一部納得出来ない数字(さて、どこでしょう(笑))がありますが、それを除けば良い線ではないかと思っています。 ONEトレーディングカード プロフィールカードより抜粋 柚木詩子 身長 152cm 3サイズ B77/W54/H82 血液型:B+ 好きな物:ザッハトルテ 嫌いな物:鳩 特技:ピアノ では、またです(^^)/http://www.geocities.co.jp/Playtown-Spade/7262/