二人のしいこ −2− 投稿者: KOH
前回のあらすじ

 ある朝、学校へを走る浩平と長森の前に立ちはだかった謎の詩子。
 そして突如、教室に現れた謎の詩子。
「さてはお前偽者だなっ!」
「…浩平。この詩子は本物です」
 詩子をかばう謎の茜。
「偽者はあそこにいます」
 そして謎は謎を呼ぶ。

 うん。概ねこんな感じだね(やや嘘)。

 二人のしいこ −2−

「偽者はあそこにいます」
 茜が指差したのは教室の前のドア。そこには髭と柚木がいた。
「へぇ、私の偽者ね」
 感心したように呟く柚木。
 お前、もっとこう、驚くとかいう反応はないのか?

  ***

「はじめまして。今度皆さんとクラスメートになる北川 椎子です。よろしくお願いします」
 …北川…椎子。
 どこかで聞いた名前だな…って柚木と同じ名前か。
 あれ?長森も首を傾げている。
 しかし、見れば見るほど柚木にそっくりだな。
「んあー。席だが里村の後ろにしよう。南、机は廊下にあるから、持ってきてくれ」
「はい」
 ちなみに現在、柚木は元椎名の席に座っている。

  ***

 そして休み時間。
 男どもが北川の周りに壁を作る前に、柚木が北川の前に立った。
 どうするのかと見ていると。
 ビシーッ!
「さてはあなた、偽者ね?」
「はい?」
 顔を上げ、そう言った直後、硬直する北川。
 うん、これが正しい反応だよな。
「あ、気にしないで。一度言ってみたかっただけだから」
「…詩子。最近、浩平に似てきました」
「ええっ? 悪い冗談はやめてよ」
 柚木は心底嫌そうな顔をしてそう言った。
「ちょっと複雑な心境だが、偶然にもオレも同じ意見だ。茜。悪い冗談はやめろ」
 オレがそう言うと茜は不思議そうな顔をしてオレと柚木を見比べた。
「冗談ではありません」

  ***

 先ほどから、かれこれ一分。柚木の顔を見たまま北川は固まっていた。
 そりゃそうだろう。
 柚木が異常なだけなんだ。
「あーーーーっ。分かった」
 ガタン。と音を立てて立ちあがった長森が凄い勢いで走ってくる。
 そして北川の前に立ち、じっとその顔を見詰める。
 長森。お前、そういう趣味があったのか?
 見詰めること三十秒。瑞佳の中で何かが一致したらしい。
「北川さん。椎ちゃんだぁ!」
「はい?」
 どっかに行っちゃっていた北川が帰ってきた。
「私だよ。長森瑞佳。瑞佳だってば」
 思い当たる節があるのだろうか、北川は考え込むように人差し指をあごに当てる。
「……長森…瑞佳…みずか……………あ、ひょっとして……幼稚園で一緒だった瑞佳ちゃん?」
「そうっ、そうだよ私だよ。憶えててくれたんだぁ」

  ***

 しかし、こうやって見ると本当に見分けがつかないな…。

 今、柚木と北川は体操服を着ている。
 柚木は茜のを強引に借りて。北川は自前のだということだが、二人とも胸の名札は隠している。
 同じ服を着て、こうやって並んで口を閉じていると、どちらがどちらか見分けがつかない。
 とりあえず右をしいこ一号、左をしいこ二号とでも呼ぶか?
 でも、その場でぐるぐる回ったりしたらまた見分けがつかなくなりそうだ。
「茜は見分けられるか?」
「分かります」
 間髪を入れずに答える茜。
「こっちが詩子です」
 すっと腕を上げ、右の柚木を指差す。
「やっぱり茜には判るみたいね」
 茜に指差された方の柚木は驚いたようにそう言った。
 という事は当たりか。さすが、幼馴染は違う。
「凄いわね。私、こうしているとまるで鏡を見ているような気分になるのに…」
 左側の柚木…つまり北川、も驚いているようだ。
「どうして判るんだ?」
「そりゃ、茜と私の仲だもん。愛の力って偉大よね」
「違います」
 あっさりと言い放つ茜。
 あ、柚木、しゃがんで床にのの字書いてる。
「んで、茜はどうして判ったんだ?」
「体操服が古いのが詩子です」
 なるほど。
 北川は転校してきたばかりだけあって、体操服が新品。
 対する柚木は茜の体操服を着ている……柚木、気持はわかるが目の幅涙はやめろ。
「じゃあ、もしも二人が同じ服を着ていたら見分けつくか?」
「……」茜は暫く柚木と北川さんを見比べ、次いでオレの顔を見た。「判ります」
 柚木、踊るんじゃない。
「どうやって見分けるんだ?」
「言っても良いですけど、きっと嫌な気持になります」
 …嫌な気持?
 茜の目は真剣だ。
 茜が言うからにはきっとそれは嫌な方法なんだろう。
 しかし、ここでこの二人を見分ける方法を会得しておかないと、柚木にどんな悪戯を仕掛けられるかわかったもんじゃない。
「…いいから教えてくれ」
「浩平に似ている方が詩子です」
「こんなのとどこが似ているんだー!」
「こんなのとどこが似ているのよー!」
「…息もぴったりです」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

KOHです。
えーと、北川さんですが椎子という名前は勝手に付けましたが、あの北川さんです。
一応、詩子に似ている。と長森さんは言い張っておられましたし(^_^)

次回…続きそうにないなぁ…

以下、感想です。

@藤井勇気さん
これもまた一つの日常1
 みあが良いですね。浩平が帰るまで、繭が何とかやってこれたのも彼女がいたからこそなんでしょうね。次回も期待してます。
感想SS『椎名家の崩壊』
 これはSSですね。
 タイトルですが、誰が崩壊させているのかな?(^^;
 二人のしいこですが、藤井勇気さんの感想を見て思わず路線変更を考えてしまいました(^^;

@T.Kameさん
高根の花だよ...七瀬さん(中崎、男になれ)
 七瀬の人気はこうして作られたのか…あ、でも長森の票も実はひょっとして…水面下では熾烈な戦いがあったのかな?

@WILYOUさん
長森行進曲【短編集】  ≦平和な日々?≧
 ちびみずかが笑えました。それと浩平の日常を侵食する長森ファンクラブ。そして、謎の声(笑)が楽しかったです。
永遠を見つめて
 七瀬、ちょっと狂暴だけどおとなしければ良いかも…澪…そのまんまのような気が…繭…これは怖い…先輩…結構楽しいかもしれない。
真夏の恋人
 永遠の世界でのやり取りが切なくてとても良いです。
 永遠の世界の認識が弱い私には真似の出来ないお話しです。

@雫さん
校内ミスコンテスト(その2)
 なまじ、住井は顔があるだけに…いやなものを想像しちまったい(^_^;
 しっかりと突込みを入れるまめな住井。いいですねぇ。

@スライムさん
同棲−1−
 一つ屋根の下ってわけですね。なんか浩平が健康的になりそうですね。いや、それ以前に寝不足で倒れるか?(^^;
 次回も期待してます。
Moonな日々−2−(後編)
 ううっ…シュンの起こし方…首筋に鳥肌たちました(^^;
 次の展開、期待してます。
 所でこれ、電子レンジャーでしたよね?

@奈伊朗さん
『不思議特捜隊ONE』番外編(激突、封印されし二つの闇)
 みさき先輩がすごくみさき先輩らしく喋るので、とても怖いですね。澪は性格変わってますけどみさき先輩、は完全にそのまんまですからねぇ。続き、どうなるんでしょう、気になります。

@まてつやさん
小さな1つの奇跡
 茜が一番つらい思いをしているのかもしれませんね。
 読み返すほどに、茜の気持が染み込むみたいに伝わってきました。
ケンカしよ?
 多分誰よりも言葉を大切にしている澪だからこその、くだらなくてもいいから。という台詞。感動しました。と、同時に、これ、七瀬でやったら怖いなァと思ってしまった。
 どう考えても口じゃなく、体で喧嘩しそうだし(笑)

@しーどりーふさん
『無邪気に笑顔』の歌詞
 綺麗に曲にあいますね。しかもとても澪らしい歌詞です。
 これ、昔、一瞬だけ出てた幻の歌詞ですよね?出てたって聞いて探してたんです(^^;

@ここにあるよ?さん
2つの完全版
 あ、図書館にあるお話しの完全版ですね。これで読みやすくなりました。
 しかも二本だてだし。ちょっと得した気分です(^_^)