茜が「あれ?」 投稿者: 白久鮎
(前回のあらすじ)
茜の誕生日に「あれ」を買いに来た浩平だったが、「あれ」とは
食べ物だった。さらにそれを食べた茜が豹変。
仕方なくホテルで一泊していく事にしたのだった。
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俺は目の前の現実を直視することができなかった。

「浩平、どうしたんですか」

俺が固まっているうちに茜が目覚めたようだ。
きょろきょろと周りを見回している。

「ここ、どこですか」

昨日のことも全然覚えていないのだろう。

「いや、昨日レストランに行っただろう。その後茜が倒れちゃったから」

「じゃあ何で、私浴衣を着てるんですか」

怪訝そうな顔をしている。

「服のまま寝たらしわになると思って着替えさせたんだ」

「そうですか、それは有り難うございます。で、服は何処に置いたんですか」

「あそこに・・・」

と、今度は俺が指差す方向を見た茜がかたまってしまった。
そこには・・・





茜が寝ていた。(便宜上、茜B)

「こ、浩平、どうなってるんですか」

今まで俺と話していた茜(茜A)が聞いてきた。
しかしそんな事聞かれても返答の仕様が無い。
俺自身ついさっきまで固まっていた所だ。

「うーん、どうなってるんだろうな」

本当、どうなってるんだ。
でも茜が二人居るってのも結構いいかも。
これからは「一家に一人茜ちゃん」の時代かも。
そうだ、そうに決まってる。神様がそうしたんだ。
一人は自宅で、もう一人は俺の家で一緒に暮らす。
おー、考えただけで・・・。

「浩平、何考えてるんですか」

俺が妄想の世界に入ってると、出会ったばかりの頃の冷たい瞳をした
茜Aがこちらを睨んでいた。

「いや、どうしようか考えていたんだ」

「そうですか」

冷たい瞳で答える茜A。

「うっ、ま、まあ起こしてみるか」

「はい」

なんとか誤魔化せたようだが。
まあこのまま見てても仕方ないし。
とりあえず、茜Bを起こす事にした。

「おーい、茜起きろー」

体を揺すりながら呼びかけた。
しかしまだ寝ている。

「おーい、起きないと色んな事しちゃうぞー」

しかしまだ寝ている。

「キスしちゃうぞー」

しかしまだ寝ている。

「本当にしちゃうぞー」

そう言って行動に移そうとした時

「あ、浩平、おはようございます」

茜Bは目覚めたようだ。
うーん、何度見ても寝起きの茜は可愛い。寝起きじゃなくても可愛いが。
と、そんな事考えてる場合じゃない。
これからの事を考えないと。
そう思って茜Aの方を見ると顔を赤くしていた。
怒っているようで、羨ましそうな表情だった。

「茜、どうしたんだ。顔赤いぞ」

「私もあんな風に起こして欲しいです」

小声で呟いた。

「えっ、何か言ったか」

「何でもありません」

と茜Aと話してるうちに茜Bも事態に気付いたらしい。

「な、何で私がそこにいるんですか」

「何でっていわれても、それを考えてた所なんだ」

三人とも沈黙。
何かを知っているかと期待した茜Bも、事態に驚いているだけで何らかの
有効な手だてを持っているとは思えない。
どうしたものか。

「「浩平」」

と言って二人の茜が顔を見合わせる。
聞きなれた自分の声が、全然違う方向から聞こえるというのには違和感があるのだろう。
一方、俺は心地よいステレオサウンドに酔いしれていた。
うん、一人でもいいけど二人だと格別なものがある。
やっぱりステレオだよな。

「浩平、何考えてるのか知りませんけど、どうするんですか、これから」

その言葉で一気に酔いが覚めてしまう。
そうだった、今はそんな場合じゃなかったんだ。

「うーん。マンガだと敵キャラが変身してたりするんだけどな。わざわざそんな事
するやつ知り合いにいないし。茜は心当たりあるか」

「「ないです」」

「敵キャラ説は可能性低いか」

捜査は振り出しに戻った。
最初から一歩も進んでないという説もある。

「じゃあクイズやってみるか、答えらんないと偽者」

「「いいです」」

「よし、じゃあ第一問、茜には幼なじみがいたよな」

「「詩子ですか」」

「いや、もう一人の方。さあ、そいつの名前を答えてみろ」

「答えてもいいんですけど、浩平は知ってるんですか、名前」

そういえば・・・。

「すまん、今の無し。改めて第一問・・・」

・・・。

暫く問題を出したが違いは見つからなかった。

「時間の無駄だったな」

「「はい」」

「じゃ、いいか。二人とも本物ということで」

「「はい」」

考えてても埒があかない。そう結論づける事にした。

「このまま家に帰ったら怪しまれるから、どっちかうちに来いよ」

これは、世間一般でいう所の同棲ってやつ。
毎日朝から晩まで茜と一緒。
俺は再び妄想の世界に入っていた。
茜も俺の考えている事が分かったのだろう。
恥ずかしそうに、でもちょっと嬉しそうにこっちを見ている。

「じゃあ帰るか」

「「はい」」

そう言ってこれからの同棲生活を夢見ながら家路につくのだった。





(後書き)
茜が二人という羨ましいんだか羨ましくないんだか良く分からない物です。
しかし何故茜が二人になったのか。
浩平の妄想の産物か、だよもん星人の陰謀か。
はたまた詩子の策略か。
真相は次回「宅手異楠のお医者さん〜漆原教授の陰謀〜」にて(嘘)





(おまけ)

「千鶴さーん。昨日のことなんだけど」

「何ですか、耕一さん」

「キノコ、使いましたよね。どこのを使ったんですか。例のキノコは庭にまだ
あったから使ってないみたいですけど」

「ああ、実はですね、この間水門の方に行ったんですけど、途中に『ここを叩い
てみて』って書かれたブロックがあったので、それを叩いてみたら、自分で勝手
に走っていっちゃうキノコが出てきたんです。そのキノコを捕まえて料理してみ
たんですよ」

「ちなみにキノコの色は」

「緑でした」





(真の後書き)
前回の茜ちゃん暴れるの感想に「スーパーキノコはどうか」と、しーどりーふさんが書かれてたのでナイスと思いながら、そのまま使うのもなんだしちょっとだけ変えて「1UPキノコ」で書いてみました。
設定としては、すぐに増えるのではなく時間を置いて、その間は性格が変わっちゃう
という副作用があるキノコにしました。
(感想など)
感想じゃないけど、しーどりーふさんのを読んでる時に考えたのは[ONE]の作品中というかゲーム期間の時点で主人公の母親はまだ生きてるんだろうか、ということでした。死んだとは書かれてないと思うし、教団に行っちゃったとだけだったと思う。どうなんでしょう。
澪がマルチというのも、同じ事考えてる人いたんだ、と思って嬉しく感じました。
感想になってないが。
雫さんのは相変わらずテンポがいいですよね。自称ギャグSS書きとしては羨ましいです。茜のセリフが短いが切れがあるというのもいいですね。
さすらいの虚無僧Eさんの予告編っていうのも映画の前にやるやつみたいで煽ってくれますね。続きを書きましょう。いや書いてください。
WILL YOUさんのオリジナル。うーん、私は設定だけでなく話の内容も他の作品からパクってるんで。オリジナルは書いてみたいんですけどね。長編を。
なんか感想というよりグチっぽくなったけど、ここで終わります。

それでは読んでくれた人ありがとう。
以上、白久鮎でした。

http://home4.highway.ne.jp/ayu0912/