オチなし劇場「To ONE 第2話」 投稿者: 白久鮎
ぴんぽーん、ぴんぽーん。
「浩平ちゃん、学校行こう」
今日も瑞佳が俺を迎えに来ていた。
「私が用意してるから浩平ちゃんは服着替えてきてね」
「ああ」
毎日毎日起こしてもらってるおかげで俺は最近遅刻してない。
しかしこんな事を繰り返してると俺の「彼女プロジェクト」の進行に影響が出る。服を着替え瑞佳の待つ玄関に向かいながらそう考えていた。
「瑞佳、明日からは俺一人で学校行くから迎えに来なくていいぞ」
歩き出しながら瑞佳にきりだした。
「えっ、でも心配だもん、前にもそんな事言って遅刻したじゃない。だから明日も明後日も迎えに来るよ」
「そうだったか」
「うん」
瑞佳が明るく答えたので何も言い返せなくなってしまっていた。
「じゃあ明日も頼むわ」
「うん!」



その後昨日のテレビの話題などで盛り上がっていると目線の先に留美をとらえた。
こいつは黙っていればそこそこ、いやかなり可愛い奴なんだが・・・。
「あら、おはよう、お二人さん。しかし瑞佳もたいへんね。こんな甲斐性無しの旦那をもって」
あった途端これだ。
「おい、誤解を招くような事言うなよ。俺がいつ瑞佳の旦那になったんだ。な、瑞佳」
「う、うん・・・」
「まあ、それはいいとして。浩、この前の賭け、忘れてないでしょうね」
うっ・・・、そうだった。俺はこの前強引に付き合わされた賭けでこいつに大負け食らってしまったんだ。
「ちょうど瑞佳もいるし今日の放課後、ヤック、カラオケツアーに決定ね。勿論あんたのおごりで」
「いや、俺今日はちょっと用事が・・・」
言いかけた俺を遮って
「あんた約束やぶるの?この前の賭けの時なんでも言う事聞くっていう約束だったはずだけど。次回の留美ちゃんニュースのトップ項目決定かな」
「うっ」
言葉に詰まった俺に瑞佳が助け船を出してきた。
「留美、浩平ちゃん用事があるって言ってるんだし、今日は許してあげてよ」
「瑞佳は黙ってなさい。こいつにそんな用事あるわけないわ」
す、鋭い・・・。
ここはこいつの言う事を聞いておいた方がいいかもしれない。こいつのニュースのネタにされたら、ある事ない事噂になってしまう。そんな事になれば「彼女プロジェクト」がまた一歩後退してしまう。
「わかった、長岡」
「やっと観念したか。・・・?」
と、言った後、何かに違和感を感じたらしい留美は、
「名字で呼び捨てにするな」
そんな事で怒るなよ、と言いかけたが
「じゃあ、どう呼べばいいんだ。お姫様」
留美はちょっと考えて
「うーん、長岡さんとか、長岡様とか、留美ちゃんとか・・・」
留美が言い終わらないうちに
「じゃあ、ななぴー」
「って誰がななぴーよ」
「勿論お前が」
と言ったもののどうしてそんな名前が浮かんだんだろ。
「もう良いわ。とにかく約束したからね、今日の放課後よ。約束破ったらニュースだからね」
もう一度念を押して留美は言った。
「ああ、わかったよ」
「最初からそういえばいいのに」
「浩平ちゃん、留美。時間時間」
これまで俺と留美のやりとりを黙って聞いていた瑞佳が突然口を挟んできた。
「あっ」
「二人とも走るぞ」



そういって今日も騒がしい一日が始まるのだった。



後書き
調子に乗ったオチなし劇場第2段。
前回登場しなかった留美初登場。
役柄は勿論、長岡志保です。

>紅涙 妖魔様
感想ありがとうございました。
>個人的には七瀬を志保とかにしてみても面白かったかも。
七瀬を志保にというのは考えてたんですけど前回の下校編のテーマ(誘うが断られる)に合わなかったんで今回の登校編で登場ということになりました。

>雫様
>折原少年の事件簿
いやあ何というかこのシリーズ面白すぎです。
個人的には先輩の言葉にくるものを感じます。
「みんなきてくれてありがとう」とか「がんばれば・・・」とか。

それではここまで読んでくれた皆様ありがとうございます。
感想、ご意見、苦情などなんでも承っています。
以上、白久鮎でした。

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