伝統と革新と(その2) 投稿者: norito
「あ、そうそう。新メニューの方は明日から店に出すから。」

その言葉を聞いたとき、もはや私は目の前の馬鹿息子に何も言う気力はなかった。
要するに私の忠告は全くの無駄に終わったということなのだから。

ワッフルはまだ日本人にとって馴染みの薄い菓子だ。
それだけに買ってくれる「お客様」は大切な存在になる。
山葉堂がTVで取り上げられて以来、確かに売り上げは飛躍的に上昇した。
だがその大部分は「お客様」ではなく「客」によるものだ。
「山葉堂のワッフル」を求めてきた「お客様」ではなく、
「TVに出た店のワッフル」を買いに来た「客」なのだ。

だからこそ私は最初、取材に反対した。
売り上げなどよりうちのワッフルを食べたい「お客様」を大事にしたかった。
何十分も待たずに気軽にワッフルにふれ合う機会を提供したかった。
ワッフルが親しみやすい菓子ということを認識して欲しかった。

しかし、どうやらそれも難しくなってしまった。
山葉堂は良くも悪くも変わってしまった。
新メニューとやらも完全に「客」向けの奇をてらったものだ。
そんなものを「お客様」に売ることには耐えられそうもない。

「潮時ということかな・・・・」

こうして私は、
新メニューにストロベリーとココナッツを加えることを条件に
息子の希望を通した。
そして自身の引退も・・・・・


                            つづく







×××××××××××××××××××××××××××××××××××××というわけで・・・・・・・・・・って親父引退かい!
なんか山葉堂やばいです。
たかが激甘ワッフル店に出すか出さないかだけでこんな大事になるとは。
・・・・・って僕がしてるんですね。(笑)

もはや僕自身にも新メニュー発売日どんな結末が待っているのかわかりません。
(その3)が早く書けるといいのですが。
とりあえずこれが終わったら、他のみなさんのSSの感想でも書けたらいいなあと考えています。
批判でも何でもいいので感想お待ちしています。