伝統と革新と(その1) 投稿者: norito
「だから何度言わせるつもりだ・・・そんなものは売り物にならん!」

・・幾度となく聞いた言葉。
全く親父の頭の固さときたら天然記念物ものだ。
これからのお菓子は革新を求めないとだめだってのに・・・・・

思えばあのときもそうだった。
知り合いのツテを頼んで某有名雑誌の取材の話をもってきたとき。
どちらかといえば「地元では有名」に落ち着いてしまいがちだったうちの店をもっとアピールしようと俺が考えたとっときのアイデアを

「くだらん」

の一言で片付けやがった。

あぶなく取っ組み合いの喧嘩になるところを母さんが間に入り結局取材を受けることに落ち着いた。
その結果”今週のおすすめ”みたいなTVの取材まで入り今では毎日行列ができるほどだ。
いわば俺はこの店にとって救世主みたいなもんなのに・・・

「くだらんことを考えている暇があったら少しはその蜂蜜づけの脳味噌を何とかす るんだな。」

けっ、俺の新メニューに対する当てつけか、それは。
まあいいさ。
すでに客には新メニューの告知はしてある。
売り出すことはもう決定事項なんだよ。
俺はこれ以上の論議の不毛さを悟り、部屋を出た。




「あいつは何もわかっていない・・・。大事なことも。そうでないものも・・」

                                 つづく



・・・ということで今回のSSは山陽堂「あの」新メニュー誕生秘話(みたいな)です。
しかもつづくし・・・・
どうも僕にはキャラ萌えなSSを書くのは難しいみたいです。
だからこんな変化球に逃げてしまいがち。
果たして父と子の確執は続くのか?
はたまた浩平、茜の出番はあるのか?(笑)
現時点ではさだかではありません。

ま、他のみなさんの素晴らしいSSの合間にでも御読み下されば幸いです。