D.S chapter.2 投稿者: GOMIMUSI
  act4


 その名を告げた、金の髪の少女を、シンシアはただ黙って見つめるしかなかった。
 整いすぎて、生気というものが欠けている顔。編み上げた長い髪は、乱れて少しほつれている。そして、その白い顔にはめ込まれているような、青い…というより、碧の瞳。山深い湖を思わせる色だった。
 冷たく、自分を見返す双眸。感情というものはまったく感じられない。だが、それは最初からないから、ではなく、押し殺し続けて心を凍らせてしまった故ではないか…そうシンシアは感じた。
「あなたが…」
 やっと、そう言ったシンシアに、不意にアリザは背中を向けた。
「ち、ちょっと!」
 反射的に呼び止める。振り返りはしなかったものの、その場で足が止まった。
「少し…話を聞かせてもらえない?」
 何を言えばいいかも分からず、ためらいながらそう言った。
「何を?」
 背中から、問い返す声があった。
「何をって…あなたが、どうしてここにいるのかとか。今戦っていたのは誰とか、どうして戦っていたとか…」
 アリザが、ゆっくりと振り返る。
「聞いて、どうするんですか?」
「どうするって…」
 言葉に詰まるシンシア。別に、相手が威圧的に話しているというわけではない。ただ、向かい合っていると感じるのは、体温が下がっていくような感覚。何か恐ろしいものと会話しているような、そんな錯覚。
「私には、話すことはありません…では」
 そのまま、立ち去ろうとする。そのとき、すっとシンシアのそばを誰かが通り過ぎていった。
 コウが、アリザに向かってまっすぐ歩いていくところだった。その姿を目に留め、アリザもわずかに目を見開いて立ち止まる。コウは特に構えることもなく、ごく自然にアリザの前まで歩いていくと、誰も予想できなかった行動に出た。
 ごん、と鈍い音がした。コウが握り拳で、アリザの頭を叩いた音だった。…つまりは、げんこつである。
「………?」
 頭を押さえながら、呆気にとられて相手を見るアリザに、コウは真剣そのものの顔で言った。
「この、馬鹿者。人の家の敷地で暴れ回って、木はなぎ倒す、窓はぶち壊す、あげくに説明もしないではいさようなら、とは一体どういう了見だ」
 ぱちぱち、と二、三度瞬きをした後、アリザは何か言おうと口を開きかけた。だが、その前にコウはアリザの腕をつかんで、家のほうへ強引に引っ張っていった。
「あ、あの…」
「まずは片づけだな。部屋の中、ガラスが散らかって座る場所もないんだ。その後は、お茶でも飲みながらゆっくり話そうじゃないか」
「あの、私は…」
「なんだ、何か文句でもあるのか?」
「………いいえ」
 どこか呆然とした表情のまま、アリザはかろうじてそう答えた。
「ねえ、コウ君」
 シンシアがその様子を見て、不思議そうに問いかける。
「あなた達って、知り合いだったの?」
 コウはそれに返事をする前に、アリザに向かって言った。
「前に、どこかで会ったか?」
「いいえ、知りません」
「俺もだ…というわけで、初対面らしいぞ」
「…ずいぶんうち解けているみたいだったけど」
「気のせいです」
 コウが何か言う前に、アリザが固い声で言った。冗談ではない、と顔中で言っていた。


 部屋に踏み込んだとたんに、シンシアは硬直した。
 青い毛並みの、大きなしなやかな体躯を持つ獣…パンサー。それが、部屋の真ん中にいたのだ。
 その獣はシンシアが見ている前で悠々と部屋を横切り、くずかごの前に来ると、口から何かを吐き出した。
 遠目に、それが大小さまざまな形をしたガラスの破片だと分かる。
「だいたい、終わりかな…ご苦労さん、ティア」
 アクアが手を振ると、獣は急に溶けるように輪郭を崩し、一筋の水の流れとなってアクアの手のひらに吸い込まれていった。
「幻獣、ですか」
 アリザがぽつりと、独り言のように言った。
「アクア…掃除なんかに幻獣を呼ぶなよ…」
 コウがあきれかえった口調で言った。
「だって、便利だから…」
「イメージってものがあるだろうが。こんな雑用に使うもんじゃないぞ、幻獣なんて」
「でも…」
 アクアはうつむき加減のまま、聞こえないような声で何かを言った。
 ――わたしは、戦うだけの力ならいらないもの。
 コウは軽く肩をすくめて、背後を見る。そこには金の髪の少女が、彫像か何かのように立ちつくしていた。
「どうやら掃除の手間が省けたな…ヴァーミリオン、っていったな。本名は?」
「…アリザ。アリザ・リヴィスです」
 答えた声は固く、表情もやや険しい。怒っているのか、それとも警戒しているのか。
 コウは適当にその場の全員を紹介した後、身振りでいすを示した。アリザは少しためらうような間をおいて、静かにそのいすに腰掛ける。
 てとてと、とマイオがキッチンのほうから小走りに近寄ってきて、伸び上がるようにしてアリザの前にお茶のカップを置いた。背が低いので、背伸びをしないと届かない。アリザは、ためらうような間をおいて言った。
「ありがとう」
 にこっと無邪気な笑みを残して、マイオはまた小走りに、その場の全員にお茶を配って回る。その様子を、アリザは少し見つめていた。
 ふと、視線がテーブルの向かい側に座っている人物にとまる。漆黒の長い髪、光を映さない瞳…ミスティ、といった。黒竜亭で会った覚えがある。
 うつむくようにして、何か考えている様子だ。そのミスティに、先ほど彼女の頭をはたいた、コウという青年が話しかけている。
「ミスティさん、どうしたんだよ…顔が暗いぞ」
「コウ君こそ」
 ミスティは弱々しく笑って、顔を上げた。
「声が元気ないよ。女の子に囲まれているっていうのに」
「…あのな」
 何とも言えない声を発したコウに、ミスティは小さく吹き出した。
「なんでもないよ。ただ、予測できなかったのが…ちょっと、悔しいなって」
「予測できなかった?」
 コウは驚いたように言った。
「未来視の巫女が、未来を読み違えたっていうのか?」
 未来視の巫女。その単語に、アリザは身をこわばらせる。
(未来視の…予測されていた?)
 罠にはめられたような焦燥感が、急に胸にわき上がる。しかし、ミスティの次に言った言葉がそれをうち消した。
「私も全部が見えるわけじゃない、そう言ったでしょ。アリザちゃんがここに来るのは、本当に私にも意外だった…きっと、シュン君は私がここへ来ることで、君たちに炎舞羅を渡すか、その手がかりを教えようとしている、そう思ったんだね。彼は私達のことをかなり気にしている。そして、アリザちゃんは氷禍魅を追ううちに、ここへ辿り着いてしまった…つまり、私がここへ来たことで未来が少し変わったんだね」
 はあ、とため息をつくミスティ。
「私は私に関する未来だけは、見通すことができない。私自身が、この世界では異分子だから…私の存在自体が、この世界の事象をゆがめてしまうから。だから、今まで極力神殿からは出ないようにしていたんだけどね…」
「つまり、ミスティさんは、アリザと俺達を会わせる気はなかった、ってことになるな」
 コウは、納得のいかない顔で言った。
「アリザが炎舞羅を持っているんじゃないのか?」
「それは………内緒」
 ミスティは、少し苦しそうな顔をして言った。とたんに、ルウが噛みつくような勢いで言った。
「なによ、それは! 世界の存亡がかかっているっていうときに、内緒ってことはないでしょうが!!」
 ミスティはしかられた子供のように身をすくめた。かなり苦悩しているらしい。
「…やっぱり、納得できないよね…当たり前だよね」
 コウはしばらく考え込んでいたが、やがて肩をすくめた。
「ま、いい。とりあえずは情報交換といくか」
「ま、いいって…全然よくないでしょ!」
 今度はコウにくってかかるルウ。が、コウはとりあわない。
「シュンを目の前にしながら、何もできなかったのが悔しいのは分かるがな。ここはミスティさんを信じてやれよ」
「けど…」
「ミスティさんは、今まで何度か俺達にアドバイスをくれただろ。そのとき、隠し事はしても一度も嘘を言ったことはない。彼女が大丈夫だってんなら、大丈夫なんだろ」
 そう言い切ったコウに、ミスティが嬉しそうに顔をほころばせた。
 コウはアリザに向き直ると、今まで話し合った内容を簡潔に説明する。あまり簡潔すぎたので、それをシンシアが補足することになった。そして、話を聞いたアリザはほとんど表情も変えず、端然と背筋を伸ばして座ったままだった。
「とりあえず、そういうことなんだが」
 まとめに入ったコウに、アリザは視線をひたと合わせた。
「それで…私にどうしろと?」
 あまりに平静な声だった。ルウは、聞いた内容を本当に理解しているのかと危ぶんだ。
「氷禍魅を壊そうとしていたんだろ。今はまずい、そういうことだ。あの剣がなかったら、魔界を消滅させることができなくなる」
「だったら、そういう運命なのでしょう」
 ごくあっさりとした、冷たい声でアリザは言った。
「ちょっと…そんな言い方ってないでしょ!」
 また激高するルウ。
「あんたは、この世界がどうなってもいいって言うの。みんな死んでしまってもいいっていうの!」
「かまわない、とは言いません」
 アリザはルウの怒りを、正面から受け止めるように言った。
「仕方がない、というだけです。本来、世界は三百年前に滅びているはずだったのではありませんか。それを回避するために、どれだけの犠牲が払われたか…あなた方は知っていますか?」
 ひたと見つめられて、ルウは息をのむ。
「何が言いたいの」
「支払われた犠牲ほどの価値を、この世界が持っているのか疑わしい。そういうことです」
 言って、アリザはいすの背に体重を預け、目を閉じた。そうすると、彼女がひどく華奢で、はかなげなものに見えた。
「…あんたが言ってる、犠牲ってなんのことよ?」
「知らないというのは、幸せですね」
 揶揄するように言って、アリザはまた目を開き、ルウを見つめる。一瞬ひるみそうになるが、強気で正面からそれを見返す。
「たとえば、そちらの…マイオさん、といいましたか。彼女の一族についてですとか」
 びくん、とマイオが身をすくませた。
「マイオ? 地族だが、それがどうした?」
 コウの問いかけに、アリザは首を振る。
「私からお話しできることではありません。そこまで無神経ではないです…けれど、私達は大きな借りを抱えていて、それをまだ支払っていないし、これから先も支払える見通しはない。そういうことです」
「意味が、分からないわね…」
 いらいらしながらルウは言った。
「つまり、どういうこと? あんたは、地族が滅びることになった三百年前から生きていて、それを見ていたとでも?」
「まさか。私は地族ではありませんし、そこまで長寿ではありません…家に伝えられている話がいくつかあって、そのことについて話しているだけです」
 アリザの細い指が、膝の上で組み替えられた。唇をなめて、軽く湿らせる。
「別のお話をしましょうか。かつて魔界にこの世界が接触したとき、魔族と呼ばれる生き物が、こちら側に入り込んできたことがありました。その姿を見た人は誰もいません…しかし、それは人間そっくりの姿をしているという噂が飛び交い、直後から生まれてくるようになった異能者の子供が、多く虐殺された時代がありました。それはご存じでしょう?」
 コウが、重い息を吐き出すように言った。
「魔族狩りの時代か…」
「はい。異能に生まれついたものにとって、災厄の時代でした。…悲しいことではありますが、仕方のないことでもあります。獣魔もまた、同時に出現していたのですから。一定の姿を持たず、しかも凄まじい破壊力を持っていたあの怪物達に、当時の人間が対抗できるはずもありません。人とは弱いものです。恐慌にかられて、そのような行動に出ても不思議はありません」
「で、結局何が言いたいのよ?」
 ルウはしびれを切らして言った。
「あんたは、人間はそんな罪深い生き物だから、滅びてもしかたないって?」
 アリザは、それに直接は答えなかった。
「あなたは、あの時代に人が身を守る術を教えたのが誰であったか、知っていますか?」
「え………?」
 意表をつかれて、ルウは目を丸くする。
「たとえば、幻獣。自然界の諸力を従わせる方法。人に突然芽生えた、その力を使いこなすこと…人が、あの短期間に自力で身につけられたと思いますか?」
「…そんなの、分かるわけないじゃない」
 そろそろ、我慢の限界という様子だった。今にも背中に斜にかけている、剣の柄に手がかかりそうな雰囲気だ。
「だから、なんなのよ? いいえ、そんなこともうどうでもいいわ。あんたは、シュンを殺そうとしていたわよね。あいつを知っているの? あいつは何を考えてるのよ?」
「シュン…ああ、氷禍魅を持っていた男の方ですか」
 一瞬怪訝な顔をして、すぐにうなずく。
「いいえ、以前にお会いしたことはありません。でも、彼が何をしようとしているかなら、だいたい見当がつきます」
「アリザちゃん…」
 ミスティが、思い詰めたように呼びかけた。だが、アリザは顔を向けようともしない。
「…何をしようとしているの?」
 ルウは、訊ねた。アリザは変わりのない、無感動な声で答えた。
「あなた達とは逆です。きっとこの世界を消滅させることで、魔界を破滅から救おうとしているのでしょう」


 永い沈黙の後、コウはミスティのほうを見た。
「そうなのか?」
 ミスティは、こくんとうなずいた。その顔は蒼白で、今にも気絶してしまいそうに見えた。
「だ、だけど、なんで?」
 ルウは混乱したように頭を振っていた。理解できない。全身でそう言っていた。
「分からない。どうしてそんなことするのよ?」
「あいつが魔族だった、とかいうのか?」
 コウが言った。ルウは激しく首を振った。
「そんなわけないじゃない! あいつは人間の父親と、母親から生まれているわ。義理とはいえあたしは妹なんだから…少なくとも、あいつのお母さんは人間だったわよ」
「じゃあ、なんで…」
 コウはミスティのほうを見る。ミスティは視線を感じて、ゆっくりと首を振った。話してはもらえないらしい。
「それでは」
 アリザが、いすから立った。
「もうお話しできるようなこともありませんし…そろそろ、おいとまします」
 一貫して、その表情から冷たさが消えることはなかった。氷の張った湖のような、冷たく動かない瞳。
「ちょっと待てよ」
 コウが呼び止めた。
「なんですか?」
「もうちょっと、ゆっくりしていったらどうだ?」
「嫌です」
 即答だった。
「ここにいる理由がありません」
 そして、戸口に向かっていく。ドアノブに手をかけようとしたとき、そのドアが、どんどん、と外から強く叩かれた。
「あの、すいません。こちらに凄く高価そうな人形みたいな顔をした、女の子来てませんかあ?」
 無遠慮な大声が、ドアの向こうで響く。アリザはぽかんとして、立ちすくんだ。
「シトローネ…」
「迎えが来たみたいだな」
 コウは肩をすくめた。あれだけ派手な立ち回りをやってのけたのだ、静かな町中では、どこからでも位置が分かってしまったことだろう。
 アクアがドアを開くと、肩に掛かるくらいの髪の、勝ち気そうな少女がいた。
「あ、アリザ!」
 部屋の中を見たとたん、耳の奥に響くような大声を上げる。今にも抱きついて、わんわん泣き出しそうな様子だ。
「探したんだよお。もうどうしようかと思ったよ…なんの騒ぎだったの?」
「いえ…何でもありません」
 かすかにうつむいて、アリザは答えた。
「そう。言いたくないならいいけど」
 そんな態度にも慣れているのか、シトローネは追求もしないであっさり引き下がる。と、家の中から注がれている視線に気づいて、ひょこっと頭を下げた。
「どうも、よく事情分からないんだけど。迷惑かけちゃったみたいで、すいませんでした。…何か損害あったなら、弁償しますけど」
 コウは戸惑いながら応じた。
「いや、それは…別にいい」
 シトローネは首を傾げ、やや考える。
「身体で返せ、とか言う?」
「言うかっ!!」
 顔を真っ赤にして怒鳴ったコウに、シトローネは朗らかに笑った。
「うんうん、よかった。じゃ、この子は引き取せてもらうね。…このお詫びは、また後日あらためてってことで。それじゃ、またね」
 手をつないで歩いていく二人を、コウ達はしばらく何とも言えない気分で見送った。
「まあ…よかった、かな」
 コウがつぶやいた。それに、アクアがうん、とうなずく。
「何が?」
 ルウが怪訝な顔をすると、コウは別に、と首を振った。
「たださ、ああいうのがいてくれたら…気を張りすぎて、駄目になる心配はしなくていいなってこと」


「やっぱり、馬車で来ればよかったねえ」
 シトローネは歩きながら言った。
「あんまり慌てていたから、つかまえる暇もなかったんだけど」
「通りに出たら、頼みましょう」
 アリザも幾分穏やかな声で応じる。
「そうだね。宿は街の反対側だし…歩くの面倒だもんね」
 スバルは決して、小さな街ではない。その街を、ほとんど縦断してアリザのところへ文字通り、駆けつけてきた、ということか。
 彼女の運動能力は並はずれている。それはその距離を走破して、ほとんど息も乱してないことだけでも分かる。しかし、だからといって、その行為が軽いものになるわけでもない。
 心底、心配してくれたのだろう。それが、分かる。
「どうかした?」
 アリザが立ち止まったのに気づいて、シトローネは振り返る。いえ、と首を振って、アリザは言った。
「でも…シトローネが、私を嫌いだったらよかったのですけど」
 それは、もう何度口にしたか分からない言葉。薄い笑みを浮かべて、シトローネは気軽に答えた。
「無理なこと言わないでよ」
 そして、自然に手をのばす。アリザはそれを取るしかなかった。


 そのころ、ミスティ達もコウの家の戸口に立っていた。
「まだ話すことはたくさんあるけど…いっぺんに話すわけにもいかないから。今日はもう帰るね」
「神殿を空にしておくのもまずいだろうしな」
 コウはうなずいて言った。シンシアが、その言葉にため息をつく。
「いつも開店休業みたいなものだけど…」
「そこまで言うことないじゃない」
 ミスティは頬を膨らませた。わずかに、張りつめていた空気がゆるむ。
 歩き出した二人を、何を考えたかアクアが追いかけていった。足音に気づいたミスティが振り返る。
「何?」
 問いかけに、立ち止まったアクアはじっとミスティの顔を見ながら言った。
「さっきの質問の答え」
「質問?」
「魔界とこの世界、どちらを選ぶか…」
 ミスティはうなずいた。ふと、背後に立っているシンシアのことが気になったが、先を促す。
「それで?」
「私は…あの人がいる世界を選ぶ」
「…そう」
 予想通りの答え、ではある。だからこそ、哀しい。
「でも、私は」
 続けてアクアは言った。
「あなたが好きじゃない。あの人を、危険に導いていくあなたが」
「うん、分かってるよ」
 かすかにほほえんで、ミスティは言った。
「だから、私はね」
 背中を向けながら、アクアは言い足した。
「あの人が無事なら、どちらの世界も滅びてかまわない」
 そして、小さな獣のような身軽さでまた駆けていった。それを見送るミスティ。
「ねえ…」
 シンシアが緊張をはらんだ声で言った。
「あれ、アクアさん、よね?」
 ミスティはまた前を向いて、何も言わずにうなずいた。そして、一人で歩いていってしまう。
 それを、シンシアは慌てて追いかけていった。
**********
――いや〜、ここも久しぶりだ。
美沙「…連載やってる人間が、そんなことでいいの?」
――よくないんだけどね。それなりに、読んでくれる人がいる以上は。
美沙「で、今回遅くなった原因は?」
――アリザと、アクア…という気がしないでもない。
美沙「どうして?」
――書きにくいのよ。アリザは抱えてるものが段違いだし、アクアは第二形態があるし…。
美沙「人間扱いしてないわね…第二形態って?」
――気づいた人ほとんどいないだろうけど、アクアは普通自分のことを「わたし」って言ってて、前に書いた分のラストでいきなり「私」になるの。
美沙「今まで変換ミス、しなかった?」
――…自信ないです。いい加減ですいません…。

>SOMO様
すいません、忘れてた…(^^;
ホレ薬、ですか。恋愛ゲームでは王道(そうか?)。

>本間ゆーじ様
浩平を見た七瀬の顔、どんなんだったのか…ちょっと怖い。
けどおまえさん、元々剣道部で腰痛めたんじゃなかったのかい。

>サクラ様
広瀬以外で犯人って、いったい…? 帰っていった中にいたりして。
というか、なぜに繭がからんでくるのか…。
ラブレター、個人的に「お兄ちゃんを誰よりも愛する妹」ってのが…ぐあ。

>北一色様
なぜ軍艦がマグロ漁船になっているのかが気になる…で、銃器や発信器やキノコが気にならないって言うのも、凄いと言えば凄いな(笑)。

>YOSHI様
なんか、凄いことしてますね。んなにいっぺんにネタが思いつかない頭なんですが、自分。
真っ白に燃え尽きた南が哀れ…。

もうそろそろ見放している人もいるんじゃないかと思いますが、まだしつこく続けます。だってまだ幻獣が八頭全部でてないし、シトローネも活躍ないし。
キャラはとりあえずそろいました。今回…新キャラ、と言えないこともないのがでてるし。
こんな世界滅びてしまえ、みたいな方向には持っていきたくないですが。もともと、人間のダークサイドって書きたくないんですよね…。この話も、善悪を色分けすることはないです。はっきり言って、ヒロイックファンタジーというより純愛アドベンチャーかも(笑)。
章の数は全七章くらいで終わらせます。書くことが続けば、だけど。というわけで、気長におつきあいください。
今回はこのあたりで。ではでは。

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