『そして.......』 投稿者: hohiko
白い.......。
白いと言うよりかは、......痛い。
いや、眩しい......のか........。
あれ?何だろう。
当たり前でいて、この、懐かしい感覚は.....。
.........。
.........。
..........、ああ。
そうか、そう...なんだ。
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(ごめんね。)

唐突に"みずか"が謝る。

「...え?」

最初、何に対して謝られたのかが分からず、オレは戸惑った。

(ごめんね。ただ、いっしょにあそびたかっただけなんだよ。)
(いったでしょ。このせかいはおわっているって.....。)

そういえば、そんなことを言われた覚えがある。
ただ、彼女との会話自体、大部分が謎掛けのようだったので、
オレはその意味を完全に把握し切れずにいたのだが......。

(えーとね、つまり)

彼女は少し申し訳なさそうに続ける。

(さいしゅうてきにキミをこのせかいによんで、)
(とどまらせているのは、あたしのワガママがおおきいの...。)

そうか、つまりはそういう事だった。
お菓子の国を生み出したのは女の子の心だったけれど、
その国の王子様はすでに自我を持ち、
女の子と一緒に遊ぶことを夢見て、
女の子と楽しく暮らすことを願って、
盟約を理由に、自分の住む国に連れ込んでしまったんだ。
女の子の心変わりを知りながらも.......。
『そんなことわざわざ言って欲しくないよ』
あの言葉は......。

(それにそのために、キミにウソついちゃってるし.....。)
(でもでも、いっしょにあそびたかったっていうのはウソじゃないよ!)

必死な表情でオレに向かって訴えかけるみずか。

「うん、わかるよ。キミはみずかなんだから。」

小さい頃、瑞佳に石をぶつけられたときのことがダブリ、自然に笑みがこぼれる。
そのオレの表情を見たせいか、彼女は少しホッとしたようだった。

「それに、結局キミは本当の事を教えてくれたし.....」

続いたその言葉を聞き、彼女は少し照れたように下を向く。
それから、オレがこの世界にこうして居るのは、決してキミのワガママだけが原因ではない。
オレもその一因を担っている。

猜疑心や疑問を抱きながらも、キミが出した嘘の答えに結局は納得してしまっている。
『たぶん・・・・・・・無理だったと思うよ』
『やっぱりね。』
『この世界はあなたの中で始まっていたんだから.....。』
『やっぱりそうか。』
『うん.....。』
キミの嘘。
オレと人との絆に関わらず、オレがこの世界に来ることは運命付けられたものだという嘘。
それを受け入れることで、自分と人との絆が弱かったかもしれないことを、
とりあえず有耶無耶にできる。そんな気持ちがあった。そう思う。

それにオレがこの世界に来る前の数日間。
今思えばあれは、あるがままを受け入れようとしていたのではなく、
ある種の諦めのようなものだったような気がするよ。

そんな事を考えていると、しばらく下を向いていたみずかが、
オレを見上げて(ね?)と、何かを訴えかけるような表情をした。

「うん?」

オレはみずかの視点にあうように、膝を折り曲げしゃがみ込む。




するとみずかはその小さい腕をオレの方に伸ばし、

-----魔法にかかって、眠りについた女の子は

そして、オレの両頬はその彼女の手の中にあった。

-----王子様のキスによって

そして"あのとき"のように、

-----目を覚ます

ちょんとぼくの口にその口をあてた。



その瞬間より次第に薄れ行く感覚。この世界での自分の存在が希薄になっていく。

(もう、こないほうがいいよ。キミはここではかなしそうなかおばかりしてるから。あたしもそれみるとかなしいし。)

「うん、ありがとう......。」

ありがとう....そして、ごめんなさい。僕が生み出してしまった凍れる時の中の少女。
最後に見えた彼女の顔は、

笑顔だった。


-----そして、時が流れ出す

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そう、オレは、帰ってこれたんだ------------。

この世界から消えて、帰ってくる間にどれほどの時間が流れたのだろう。
瞬きをするぐらいの気もするし、何十年も掛けたような気がする。

でも、わかる。
確かに帰ってきた。あの娘が居る処へ。

草の匂いを帯びた風が頬をくすぐる。
日差しが強くて.....、目が痛くて.....、涙が...止まらない.....。

このままこうして寝転んでいたい気もする。
でも、やらなくちゃいけないことがある。
そう、会いに行ってやらなくちゃ。
......違うな、オレが会いたいんだ!

「よし!」

オレは勢いよく立ち上がると、ひとつ深呼吸して駆け出した。
輝く日差しと暖かな風を受けながら。

オレの大好きなあの娘のもとへ。

************あとがき(という名の言い訳)*************
お目汚しを致しました。失礼しました。すいません。ごめんなさい。許して下さい。
.......さて、これは私なりにONEの全体的なストーリーを捉えたとき、途中に挿入される夢のようなものは、
「消えてもう一つの世界へ行ってしまった主人公の、もとの世界へ戻るまでの"みずか"との1年間の心の旅」だと
思って、エピローグ(トゥルーエンド)と本編の間を繋ぐ話として書き上げたものです。

本当はもうちょっと練り込んでから、仕上げようと思ったのですが、ネタばれ掲示板の方でストーリー解釈
が盛んになりつつありそうで、そういうのを拝見して、そっちの考え方に影響を受けすぎてしまう前に、自分
なりに考えたものをまとめあげたかったので書いてしまいました。(書くことによって、考えってまとまり
やすいですから)でも、そのためか説明的な文章が多くなってしまった気がします。
またあくまで「私一個人の」ですから、「おめ〜の所為でイメージ固定されちゃったじゃね〜か、ああん?」と
言われても責任は取れません。勘弁してください。

あと、ショートストーリーの掲示板で「今ならネタがかぶらん!?ちゃーんす!」という邪な.......まあ、いいや。
余談ですが「大好きな」と打とうとして、「d.a.i.s.u.k.i.n.変換」で「大スキン」となってしまったのは
何とも情けなかったです。何やねん「大スキン」って。

基本的に瑞佳シナリオを想定して書いています。(だから草っぱらに寝転んだ状態で帰って来てます)
みんないい子ですが、不幸レベルが高い所為か、みさき先輩と茜が人気在るようですね。
私は
1.瑞佳は主人公が膝枕から消えたとき、今まで主人公のために無理して笑っていたため、少し間を於いてから
  口元に手を当てて声を押し殺した状態で延々と泣き続ける。
とか、
2.「なーに、呪いの人形?」の場面で友人の前で、顔は笑っているんだけど、でもぼろぼろ泣いてる。
   でも、本人は止められない。
とか、
3.ある意味、記憶の中だけでなく、レコーダーによって声がモロに残ってしまっているのが残酷。
  元気出るとかいってるけど、実際は聞くたんびに泣いてるんだろーなー。

とか、いうシーンが勝手に妄想によって創造されたので、この子かな。メインヒロインだし(笑)。

最後に、いろいろ考えさせられる素晴らしい作品を作って下さったTacticsさんと、ここまで付き合って読んで下
さった方に感謝いたします。