新たな身体 第3話 投稿者: enil
読む前には「リーフ図書館」で、第2話まで読んで下さいな。

前回のあらすじ

俺は再び現実の世界に戻ってきた…。
バニ山バニ夫の姿で…。
しかし、その姿に悩んでいる余裕は無い。
時間は一年間しかないのだ。
俺はやらなければいけない…。
あいつが俺のことを想い続けてくれる為に。
ということで俺はあいつのいる学校へ向かったのだが…。

新たな身体
本編 第3話 「ある秘策」

俺は学校へ向かおうとしていた…。
が、しかしこんな格好でどうやって行けばいい。
あいつの家の前で俺は考えていた。
「そうだぴょん!」
灯台下暗しであった、うさぎの格好なんだからウサギのようにピョンピョン
と行けばいいではないか。
俺は学校へ向かった、あいつのいる学校へ・・。

あれから何分立っただろうか?

俺はいつもの裏道を使い、ただひたすらぴょんぴょんと走っている。
あいつと一緒ならどんなに楽しかった事だろうか…。
冬の何気無い日常生活の一日一日が俺の頭をよぎる。
だが、そんな日常の中に何か足りないものがあるのだろうか?
俺があいつにしてやれなかった事…。いったい「あの子」は何を俺に求めようとするんだ?
いったい何を…。

そうこう考えているうちに、学校へついた。いつも見なれているあの学校へ。
なぜか懐かしく感じるのが不思議だった。
「…。」
それと同時に俺はただならぬ違和感を感じた。なぜだろうか?毎日行っていた学校に今は嫌悪感すら覚えている。
学校と言う存在が俺の存在を必要としていない。例えて言うならそれにあたるだろうか?
嫌な気分だ。
「それでもいくピョン、あいつの為に行くピョン!」
行こう。
俺は決心がついた。

学校の中に足を踏み入れる。中は静寂に包まれていた。今は終業式中で生徒全員で体育館にいるらしい、それは俺にとって好都合なことであるには違いない。
まずはあいつの教室でも行く事にするか…。

俺はあいつのいる教室の中に入った。
教室の中は何一つ変わっていなかった。
だが、そんな教室の中に1人、女の子がいた。
教室の窓の向こう側を見つめるあの子はいったい誰なのか?
それは後ろ姿で容易に想像できた。
…ずか?
俺はそう声を出したかった。
だがこんな格好ではどうすることもできないし、第一俺の存在自体この世界に存在していないのだ、俺の存在をあいつに明かす事はできない。
俺はどうすればいいか迷った。今、あいつを目の前にして何にも出来ないとは…。
悔しかった。この身体にした彼女の事を呪いたくなった。
だがこれは試練だ。くじけるわけにはいかない。
俺が考えているうちに何かが聞こえる気がした。歌だろうか?

このこえがきこえますか あなたにとどいてますか
あなたをわすれたいのに わすれることができない
あなたをわすれることに わたしはおびえてしまうから
だからげんかいまで だからすこしでも
あなたをおもいつづける やみにきえたあなたを
わたしのこころのなかにそっと
いきづかせたいから…

知らなかった。いつもカラオケでは童謡しか歌わないあいつがいつの間に…。
俺は彼女の知らない一面を知った。
俺はまだあいつのことを全然知らない…。そう思い知らされた。
「だれ?」
そう、思っていた矢先、突然、あいつが俺のいる方に振り向き言った。
『はにゃあ!』
俺はやばいと感じ、一目散に教室から逃げ出した…。
「うさぎ…?」
彼女はなかば幻影を見ていたかのようにぽかーんと俺のいた方を見ていた。
だが、いないのを確認するとまた窓の向こうを見つめてこう言った。
「浩平…早く帰ってきてよ、このままじゃ私…。」
そこで言葉は途切れた。それと同時に小粒ではあるが、なにかが頬を伝わっていた…。


俺は放送室の中にいた。
『ふー、あぶなかったぴょん!』
あいつに気づかれていたら今ごろどうなっていたやら…。
だが、いつまでも隠しているわけにもいかない。
うまくこの身体を利用しなければいけないのだ。
だがどうすれば…。
ふとあたりを見渡すと幾多の放送機材がある。
放送機材…。
『そうだぴょん!!』
俺はあることを思いついた。
これを利用すれば…。

そのころ体育館では…

「んあー、今日の終業式はこれで終わりだー。全校生徒は速やかに教室に戻る事、以上」
という声とともに一年生から徐々に個々の教室に戻るところであった。
と、そのとき体育館の四隅にあるスピーカーから妙な声がこだました。
『そこにいる全校生徒の諸君、聞くだピョン!!』
「おい、なんだなんだ?」
「放送室に誰かいるのかよ?」
『俺の名前はバニ山バニ夫だピョン。この地球から遠く離れたうさぎ星からやってきたピョン!』
「うわ、なんかだせぇ名前」
「もうちょっと良い名前つけられないのかしら」
「んあー、誰だ?放送室を勝手に使ってる奴は」
「おー、ちょっと見に行こうぜ、放送室」
『我々の目的は人間との交流にあるだピョン、だから仲良くやっていくだピョン』
「ねぇ、行ってみようよ、放送室」
「なんか面白そうじゃない」
「そうそうどんな○○○○がいるのか見てみたいし」
「んあー、おい!七瀬」
「は、はい」
「お前、放送部の部長なんだからちょっと見て来い!」
「え?私がですか?わかりました。(くっ、何で私が見に行かなきゃいけないのよ!!)」

そのころ放送室では…

『それでは全校生徒の諸君、仲良くやっていこうだピョン!!』
そう言い終えて俺はすかさずマイクの電源を切った。
これで後は、「結果は神のみぞ知る」ってやつになったな。
さて、ここから出るか…。
そう思った時、ものすごい足音を共にあいつは現れた。
「くうぉらーーーー!!、なに勝手に放送室使ってんのよ!!」
すさまじい蹴りが放送室のドアを直撃し、ばたんと大きな音を立てて開かれる、
そしていやに乙女らしからぬ言葉を俺にぶつけた。
「放送部部長の私の身にもなってみてよね…ってうぎゃー!!」
あいつは俺の姿にやっと気がついたらしい。
「う、うさぎ…、なんでうさぎが立ってるの!?さっきしゃべってたのは人じゃなかったの?」
さらに衝撃な事実を俺はあいつにぶつける。
『こんにちは、だピョン』
「ぐあーー!!なんでうさぎがしゃべってんの!?…もう、わけがわかんないわー」
案の定、あいつは混乱してその上、なんか頭を抱えてくるくる回っている。
と、そこに数人の男子生徒が来た。その中の一人が、こう言う。
「おーい七瀬さん、なんか新しい芸でもやってるんですか?」
彼女は混乱した状況からいきなり立ち直ってこう言った。
七瀬「あ、住井君ちょっとみてよー、あそこにいる変なうさぎが立ってしゃべってるのよ」
『「変な」は余計だピョン』
住井「おお!!ホントにしゃべってるよ、いったいどんなつくりなんだ?」
謎の男生徒「おーい、どうしたんだ?住井」
住井「ああ、南、ちょっとこいよ、なんかこのうさぎがさ、なんか二本足で立って人間の言葉しゃべってんだよ」
南「どれどれ?」
『こんにちは、俺の名前はバニ山バニ夫だピョン!よろしくだピョン』
南「おお!なんかすげー!」
住井「だろ?」
南「おーーーい、ここにすげーうさぎがいるぞー!!」
南の一声で、終業式から戻ってきた生徒達がぞろぞろと集まる。
男生徒A「おっ、これがさっきの体育館の声の主か?」
男生徒B「おー!なんか立ってんぞ、このうさぎ」
『生徒諸君、こんにちはだピョン!』
女生徒A「わぁーー♪可愛いーー☆」
男生徒C「すげー!!なんかしゃべってるよ、おい」
男生徒D「これで名前が良ければもっとすごいんだがなぁ…」
女生徒B「ねぇねぇ、うさぎさん、今どこに住んでるの?」
『ん?今住んでるところだピョンか?それはだピョン…』


そのころ七瀬は、と言うと…。
「??!?!?!?!(え、なんで皆この状況を素直に受け入れてるの?おかしいじゃない、変なうさぎがしゃべってるのよ!?それになんで…)」
また混乱していた。

To be continued


・・・
今年最後のSSです。僕の名を知らない方、はじめまして。「えにる」言います。
こんなの書いてます。
やっと3話か・・・。2話から3ヶ月ぐらい経ったかな。
来年はペースを早くして4話まで書きますんでよろしくです。