新たな身体 第2話 投稿者: enil
前回のあらすじ
 閃光に包まれ、意識が薄れていく中、彼女が俺に出した
条件の内容、それは「1年のあいだ、あいつが俺を忘れないようにサポートする」
ことと、「彼女がなぜこんなことをしたのか?」に対する答えを探す事だった。
そして彼女が与える新たな身体とはいったい何なのか?
俺は今、あいつのいる現実(いま)の世界に帰ろうとしている。

新たな身体
本編 第2話 「こんな身体にするんじゃねぇ」

3月15日、その日はさわやかで晴ればれとした天気だった…。
「今日は良い月が見られそうだよ…。」
ふと、誰かが空を見上げそう言った…。

 目が覚めると俺はある部屋のベッドの上に仰向けの状態だった。白い天井があたり一面に見渡せた。
 ここはどこだ…。
俺はあたりを見渡そうと思い身体を起こそうとする。そして、部屋のドアの横にあった鏡を見たとき、
 ぐあっ…。
俺は驚いた。いや信じる事ができなかったと言った方が良かった。
 おい、嘘だろ…なんなんだこの身体は…。
ピンク色の身体、赤い眼、リボン、平べったく大きな足、かわいらしい口、鼻、手、そして頭の上にある大きな2つの耳とおまけの髭。
 うさぎのぬいぐるみではないか、あいつにプレゼントした…。
そうであった。これが彼女の与える「新たな身体」であった。かつて、俺が「バニ山バニ夫」などと名づけ、ある時税込み9240円で買ったあのぬいぐみである。
 いったいこんな身体でどんなサポートをしろというんだ…。


そう思った時、あたりが闇に包まれ、ふと声がした。
 それはじぶんがかんがえるんだよ…
あの子の声だ。
  それとあなたはじぶんのしょうたいをあかすことができないの…
 あなたはこのせかいにそんざいしてないから…
 ちがうからだとしてこのせかいにそんざいしているから… 
 だからあなたのそんざいをかくさないといけないの…
 そうしないとあなたはもどれなくなる…
 ほんとうのからだでこのせかいに…

 包まれた闇が拭い払われ、部屋に静寂が戻る。
つまりはこう言う事だった。自分の本当の身体はもう、この世界に存在しない。
そのかわり、俺の「意識」という存在をこのぬいぐるみに移し変えた。
そして、元々この世界に存在しない自分をこの身体でアピールすれば…。
与えられたこの身体で一生暮らしていかなければならなくなる。
 俺は言葉を失った…。
どうすればいい、このまま一年間どうやってあいつに接すれば良いのだ。
だが、考えていても仕方が無い、やるしかないのだ。
この身体で一年間、俺の本当の身体と存在を唯一知るあいつの為に
俺のことを忘れさせないように…。


 まだ午前の9時だと言う事と、あいつは学校へ行っていていなかった事がせめてもの救いだった。あいつがいたら俺は今の状況に混乱してしまうところだった。
時間はまだ十分にある。
俺はベッドの近くに貼ってあるカレンダーを見て初めて口を開いた。
 『今日は終業式なのかぴょん…。』
ぴょん…。なぜか付いてしまうその言葉に俺は深い悲しみを覚える…。
まあ、嘆いても仕方が無い。とりあえずこの身体に慣れるために身体を動かすことにした。
身体が軽いせいかジャンプ力は相当なものがあった。この部屋の床から天井まで2、3Mぐらいはあるだろうが、ジャンプしたら軽く天井に届いた。そのうえ2本足で立って走ったり歩けるのはなによりも有難い事だった。手も器用に動く、ペンとかの軽いものなら何とか片手で持てるぐらいだが。これで手が丸かったら、まさしく〇〇〇〇〇である。

 『これじゃどこかの3流アニメだぴょん』
そう俺は思ったが、そんな事を考えている暇は無かった。だいたいこんなものをあいつが見たらどう思うだろうか?
 「はは…バニ夫が動いてるよ…幻覚かな…きっと私疲れてるんだよ…。今日は寝よっと…はは…。」
こんなことを言うに違いないだろう。今まで動かなかったぬいぐるみが、いきなり動いたりするのだから。
じゃあどうやってサポートする?
まあ、ここでそんなことを考えていてもしょうがない。
俺はこの部屋から出て学校へ行くことにした…。この家の玄関の鍵をはずし、この家を出た時、俺は思った。
 『考えていても始まらないぴょん、まずは行動だぴょん!』
その時の彼の姿は輝きに満ちていたという…。(近所のおばさん談)

3月15日、その日はさわやかで晴ればれとした天気だった…。

To be continued
 
「予告」
終業式中の学校へ行った俺の前に立ちはだかる数々の生徒達。
バニ山バニ夫の姿で隠密行動中の俺はうまく学校内潜入し
ある部屋にたどりついた。そこで閃いたある
秘策とはいったいなにか?そしてあいつとは
いったい誰なのか?(そんなのわかるっちゅうねん!)

次回 新たな身体
本編 第3話 「ある秘策」
をお楽しみに…。
 
ぐあっ、皆様お待たせしました。enilでございます。(初めて見た人、初めましてです)
やっとこうして第2話を書く事ができましたが、いかがでしたでしょうか?どうも意味がわからない人もいるかと思いますが、私のせいでございますのでごめんなさい。

簡単な感想(全体的に見て)
>いけだものさん
各キャラ個人に愛が注がれてます、読んでてそう感じました。それにおもしろいです。

>だよだよ星人さん
心に中に入ってくる作品ですね。感動したです。あう。あなたの作品の属性、ダークなのかライトなのか興味があります。

>藤井勇気さん
あとがき、おもしろすぎるです。(作品も感動させられるものがありました)
ええですねぇ、日常をテーマにした題材は。

>T.Kameさん
うう、こんなんでましたけど、お楽しみいただけましたか?
それにしても、マイナーな3人を作品のメインに使うとは・・・。
なんか好きです。

>もうちゃん@さん
今後の展開をよんでしまうとは、ちゃんと作品を読んでくださってありがとうです。もうひとつの物語り構想はあったんですけど、番外編で使う事にします。

>火消しの風さん
>どういう条件の下にどういう答えが、気になります。」
それはのちのち明かされます。楽しみにしてくださいね。
それにしてもシュンの扱い方がうまいですね、面白いです。

>偽善者Zさん
>ヒロインが誰なのかも気になります。個人的に瑞佳希望(^^)。
多分もうおわかりでしょう、誰がヒロインかは(笑)
>作品全体の雰囲気や構成が詩的なのもいいです。
そんな風に書いた覚えが無いのに、なぜかそうなってしまう・・・。
これが詩人の「さが」なんでしょうか?
「しめさばごはん」、私はだいすきです♪おいしいですよあれは。
個人的に時代劇風なのは好きなのであなたの作品のファンの一人です。
これからもがんばってくださいです。

ということで今回はこれまでです、それでは・・・。