漢字テスト 投稿者: いちごう
 5時間目‥‥
 浩平達のクラスでは現代国語の授業が行なわれていた。

 「ではこれから期末テストの範囲内で漢字の読み書きテストを行う」
 授業も中盤にさしかかった時、現代国語の教師がいきなり言いだした。
 教室中がブーイングの嵐になる中、七瀬の瞳だけが一点の曇りもなくきらびやかに輝いて
いた。そしてその目は後ろの席の浩平に向けられた。
 「七瀬、やったな。乙女への扉が今開かれようとしているぞ! これで満点でも取る事が出来
れば人気投票は間違いなくおまえの天下だ!」
 浩平の言葉に対し、七瀬は無言で頷く。
 「微力ながらオレも協力してやるからな。だが、これではまだ戦力不足なのでおれが兵力を
かき集めておいてやろう!」
 「ありがとう折原」
 浩平は住井にも協力を申し入れる事にした。
 「さて、あとは‥‥‥」
 浩平は斜め前、要するに住井の前に座っている女生徒に目を光らせた。
 「よし、彼女に協力してもらうことにしよう。ウワサによると彼女は小学生の時『ちびっこ天才
大集合!』というテレビの特番で漢字博士として出演したらしいからな。」

 七瀬、浩平、住井、謎の女生徒。この4人が浩平が漢字テスト満点への秘策としてかき集め
た全兵力だ。
 そしてテストが始まった。

 『問1.暫く』
 (う〜ん、これは確か「しばらく」だったような気がするけど‥‥。念のため住井に聞いてみる
とするか)
 浩平は住井に聞いてみる為に、少し身を住井の方に寄せて小声でボソボソと質問した。
 「ああ、おれも分からないけど、多分「するどく」だろ?」
 住井は口に手を当て小声で返す。
 (「するどく」か‥‥‥。言われてみればそんな気もするな)
 浩平は住井から聞いた答えをさっそく七瀬に伝えた。七瀬は目で『ありがとう』と訴えた。

 『問2.儚い』
 (おっ!これは分かるぞ!「うつろい」だ!)
 浩平は自信満万で七瀬に伝える。

 『問3.微睡み』
 (えっと、「まどろみ」だっけな?)
 浩平が考え込んでいると、住井が横から突っついてきた。
 「おい折原ぁ、問3わかったぞ! 「ほほえみ」だ」
 住井があまりにも自信たっぷりに教えるものだから、浩平はすっかり住井を信用して、その
答えを七瀬に教えた。

 『問4.貶す』
 「問4も任せてくれ!これは「いなす」だ!」
 間髪入れずに住井が答えを告げた。それを浩平が七瀬に伝える。

 『問5.燻る』
 (ふ、こんなのは幼稚園でも分かるぜ! 答えは「かおる」だっ!)

 『問6.誂える』
 (こ、これは難しい。さっぱり分からないぞ。こうなったら強力な助っ人の力を借りよう)
 浩平はさりげなく謎の女生徒の答案を覗き込む。
 (なになに?「うろたえる」 さすがは元漢字博士だ!)

 『問7.烏滸がましい』
 (これはサルでもできるな。「うーろんがましい」だ)
 浩平が教えた答えに疑問ありげな七瀬が疑惑の目を向ける。
 「ちょっと、その答えほんとに合ってるんでしょうね〜?」
 「ああ、まかせてくれ!ほらウーロン茶の字と同じじゃないか」
 「そ、そうだっけ?」
 七瀬は半信半疑ながらも浩平が教えた答えを書き込む。

 『問8.夥しい』
 (ん?こんな漢字、日本にあったか?まあいい、こんな時の為の漢字博士が我々には付いて
いるんだ)
 浩平は再び謎の女生徒の答案を覗き込んだ。
 (ふむ、「いやしい」か‥‥)

 『問9.擽る』
 (‥‥‥何だっけ? ええい、たまには七瀬本人にやらせよう)
 浩平は七瀬の背中を突つくと目で「おまえがやれ」と命令した。七瀬はちょっと自信があるのか、
嫌な顔をせずに了解した。
 「えっと‥‥‥確か「はまる」だったわね」
 七瀬は答えを真剣な表情で書き込んでいく。

 『問10.鯔背』
 (なんだ?「ねこぜ」?う〜んわからん。最後の問題くらい七瀬に任せたいところだけど、ここは
保険を効かせて謎の女生徒の力を借りよう‥‥‥。え〜〜っと、「やらせ」か‥‥‥)
 七瀬は教えられた通りに解答用紙に書き込んでテストは終了した。

 答え合わせが終了し、教師の元に解答用紙が回収された。
 「残念ながら満点はいなかったな。1問ミスで4人が同一トップだ」
 七瀬と浩平は、緊張の面持ちで結果の発表を待ちわびた。
 「中崎、長森、村田、御堂‥‥‥。以上の4人」
 その発表を聞いた途端に、七瀬の顔が落胆の表情に変る。
 「ま、そう気を落とすなって」
 浩平は七瀬の肩に軽く手を置き慰めた。
 「そして0点が1名。‥‥‥七瀬留美」
 「は?」
 「え‥‥?」
 周りの生徒は、七瀬を冷ややかな目で見ながらクスクスと笑っている。
 「ぐすん‥‥」
 そのまま七瀬は今日の授業が全て終わるまで、身動ぎせずに俯いたままだった。

 放課後になって浩平は、気落ちしている七瀬を励まそうとして側にやってきた。
 「あ‥‥‥あのよぉ、七瀬‥‥」
 「あんたなんかを頼りにしたあたしが馬鹿だったわ」
 浩平の言葉を途中で遮るように呟いた。
 「いや、こんな筈ではなかったんだけどな。こっちには強力な助っ人が控えていたわけだし」
 「何よ、強力な助っ人って?」
 「ん?ほら、おまえの隣の席の、茜ぐらいに髪の長い‥‥‥えっと、名前は何ていったっけ?」
 「はぁ? ‥‥‥‥‥アンタ、あたしをおちょくってるの?」
 七瀬は少し表情を険しくして浩平に詰め寄った。
 「おい、なんだよ‥‥そんなに怖い顔して? 誰がおまえをおちょくってなんかいるんだよ」
 「アンタよ!アンタ!! あたしの隣の子は今日休んでるじゃないっ!」
 「おいおい、冗談言うなよ、おれはどうしても解らない問題は彼女の答えを見て、おまえに教え
たんだぞ」
 「あんたこそ冗談言ってんじゃないわよ! あたしがウソ言ってると思うんなら他の人にも聞い
てごらんなさいよ!」
 浩平はとりあえず、長森、住井、茜など、身近な人物に聞いてみたが、帰ってきた答えは全て
七瀬と同じだった。それでも納得できない浩平は日直にも聞いて、日誌まで見せてもらった。すると
日誌の欠席欄には七瀬の隣の席の女生徒と思われる名前が記されていた。
 「じゃ、じゃあひょっとして、おれが見た女生徒って‥‥‥ゆ、幽‥‥‥」
 最後に長森が、トドメとばかりの発言をした。
 「あのさ浩平、七瀬さんの隣の席の子ねぇ、里村さんみたいに髪は長くないんだよ。かわいい
おかっぱ頭だもん」


 放課後の学校に、浩平の悲鳴がこだました‥‥‥。

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 殺人的にお久しぶりのいちごうです(^^;;;
 おれのHPに遊びにいらっしゃってる方の中でもおれが以前SS書いてたなんて知らないっていう
 方もいるのでは?(笑)
ゾゴック茜ちゃん『みなさん既にあなたの事なんか忘れてます‥‥』
 うわああっ!茜ちゃんがなぜかモビルスーツのゾゴックに乗ってるぅぅぅ〜〜〜(^^;;;
 そんなおっかない物に乗ってないで降りてこいよ〜っ!
ゾゴック茜ちゃん『‥‥嫌です』
 ‥‥‥‥‥。
 今回の、一見ギャグ物と見せかけての怪談物‥‥。 いかがだったでしょうか?
ゾゴック茜ちゃん『無視しないでください‥‥』
 い、いや、別に無視してるわけじゃないんだけどね(^^;;;;
 ちなみにこのお話通りにテストをやるとほんとに0点取れます(笑)
 ちょっと七瀬には可哀相ですけど(^^;;;
ゾゴック茜ちゃん『今度操縦を七瀬さんに代わってもらいましょう‥‥』
 頼むからそれだけはやめてくれ。命が一億万個あっても足りなくなる(−−;;;
ゾゴック茜ちゃん『それは残念です‥‥‥』
 な、なにが残念なんだよ(^^;;;
ゾゴック茜ちゃん『いえ‥‥別に‥‥‥。他に連絡事項がないんでしたら帰ります‥‥』
 おいおい、ちょっと待ってくれよぉ!
 うちのHPのリレーSSが寂れちゃってるんで、誰か書いてくださいましぃ〜(泣)
ゾゴック茜ちゃん『人任せはずるいです‥‥。第2期シリーズになって、まだ1回も書いてない
           じゃないですか‥‥‥』
 あう、それを言われると‥‥‥。
 ‥‥‥。
ゾゴック茜ちゃん『‥‥‥』
  ‥‥‥。
ゾゴック茜ちゃん『‥‥‥』
 あとは任せたっ!
ゾゴック茜ちゃん『‥‥ずるいです!‥‥‥あ、もうレーダーから消えてる‥‥』

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