戦う乙女たち!! 投稿者: いちごう
 ONE女子プロレス‥‥‥そこでは日本の選りすぐりのレスラーたちが、日夜熱い戦いを
繰り広げていた。
 そして今日も、ここ両国国技館で‥‥‥

 『女子プロレスファンのみなさま、お待たせしました! いよいよここ両国での、WWWWF
公式タッグリーグ戦の優勝決定戦が始まろうとしています! え〜、実況はオレ、住井護がお伝
えしていきます。そして解説は折原浩平さん、どうぞよろしくお願いします!』
 「どうも、よろしく」
 住井の左に座っている折原はぺこっと頭を下げた。
 『え〜、スペシャルゲスト解説として、元WWWWWF王者の柚木詩子さんにお越しいただき
ました! よろしくお願いします!』
 「どうも〜、って、Wが一つ多いわよ(笑)」
 どうでもいいことでも柚木はツッコミを忘れない。
 『まあまあ柚木さん(笑)』

 「ただいまより、選手の入場です!」
 南リングアナの告知と同時に会場内の照明が落とされ、入場口付近から派手にスモーク
が吹き出して、色とりどりのスポットライトが会場内を駆け巡る。
 『さあ、いよいよ選手入場です! まずは赤コーナーから、アニマル七瀬、長森瑞佳、里村 茜
が入ってきました! おおっと、さすがは現WWWWFチャンピオン、アニマル七瀬!表情が
自信に満ち溢れています! 歩き方にも風格が備わっていますねえ』

 七瀬たち3人は、観客席の間の通路をリングに向かってゆっくりと歩いて行く。
 「アニマルーっ!!」
 「アニマルさ〜〜〜ん!!」
 「負けるなよー、アニマルーッ!」
 周りの観客が次々と七瀬に声をかけてゆく。
 (はぅ〜、アニマルアニマル言わないでよぉ、恥ずかしいんだから‥‥‥。それにしても
なんであたしだけこんなリングネームなのよ〜?)
 七瀬は観客を睨みつけながら心の中で訴えていた。
 長森はにこにこしながら声援に応えている。
 そして里村はどこを見るでもなく黙々とリングに向かっていた。

 ここで説明しておくが、アニマル七瀬というリングネームは七瀬の意思とは関係無く、会社側
で勝手に命名されたものなのだ。ちなみに七瀬はこのリングネームがすごく嫌なのだ(笑)

 『さあ、まずは赤コーナーの3人がリング内に納まりました。続いて青コーナー側の選手、
川名みさき、上月 澪、椎名 繭が入場してきます!』

 「川名ぁーーーっ! がんばれよーーーっ!!」
 「上月ーっ!」
 「椎名ぁ〜っ! 勝てよ〜っ!!」
 青コーナーの3人にも様々な声援が飛んでいる。
 『がんばるの』
 上月は持参したスケッチブックにサインペンで書き込み、観客に見せている。
 川名は落ち着いた表情で声援に応える。
 椎名はみゅーみゅー言いながらぱたぱたと走り、さっさと一人でリングにあがってしまった。
 
 『さて折原さん、この決勝ラウンドは折原さんの予想としてはどうなると思います?』
 「そうですねえ‥‥‥まあ、七瀬選手らのチームの方が総合的にパワーでは勝ってるとは思い
ますが、しかし川名選手のチームは個性的な技を使いこなしますから、その持ち味がうまく出せ
れば、この勝負どう転ぶかは見当がつきませんねえ‥‥‥」
 『ほ〜、なるほど、そうですか。では、柚木さんはこの勝負どう見てます?』
 「そうねえ、やっぱ七瀬選手は現役チャンピオンだし、七瀬選手がうまく引っ張れば負ける
要素は無いんじゃないの?」
 『ほほぉ〜、さすが元チャンピオン! やっぱりチャンピオンは強いと?』
 「そーゆーこと」
 柚木は笑って答えた。

 そして、南リングアナが選手を読み上げ、両チームの選手がリング中央に対峙し、広瀬真希
レフェリーのボディーチェックを受ける。
 「ちょっとレフェリー! 上月選手のスケッチブック‥‥凶器なんじゃないの?」
 七瀬がむっとした表情で抗議する。
 『凶器じゃないの』
 上月は泣きそうな顔でスケッチブックに書き込んで広瀬レフェリーと七瀬に見せた。
 「だってさ。別にいいじゃん」
 広瀬レフェリーはかなり投げやりな態度で七瀬を言いくるめた。
 「じゃあ試合開始よ。先発以外はリング外へ!」

 赤コーナーの先発は七瀬、青コーナーは椎名だ。
 『おっと、七瀬チームの先発は、いきなりチャンピオンのアニマル七瀬だぁっ!! これは
いきなり短期決戦で勝負をつけるつもりでしょうか〜〜〜っ!!』

 「ファイトッ!」
 カァーーーーーーーーーーーーーン!!
 広瀬レフェリーの試合開始の合図と同時に、ゴングの音が軽快に鳴り響いた。
 「みゅーっ!」
 恐れを知らない椎名は大胆にもいきなり七瀬の髪を豪快に引っ張った。
 「ぎゃあーーーーーーっ! イタイイタイイターーーーーーーーイッ!!」
 「みゅーっ♪」
 「イタイイタイッ!!」
 七瀬は苦痛の表情で叫ぶ。
 『おおっと!椎名選手、いきなり大胆な攻撃だ! 七瀬選手のおさげを思いっきり引っ張っ
てます。心なしか楽しんでるようにも見えてなりません!』
 「完全に楽しんでるわね」
 柚木が楽しそうにつぶやいた。

 「みゅー‥‥」
 椎名はどうやら飽きてしまったのか、ぱたぱたと自軍コーナーに戻り上月とタッチした。
 『どこからでもかかってくるの』
 リング内に入ってからすばやくスケッチブックに書き込んだ上月は、それを七瀬に見せた。
 「くっ!もうやってられないわ。タッチよっ!!」
 七瀬は長森と里村にすかさずタッチを求めた。
 「う〜ん、もうちょっとがんばろうよ」
 長森はタッチをあっさりと拒否した。
 「ええ〜〜っ?ちょっとぉ瑞佳ぁ‥‥、じゃあ里村さん!」
 「‥‥‥嫌です」
 「な、なんでよぉーーーっ!?」
 里村にもタッチを求めた七瀬だったが、それも無駄に終わった。
 (がしっ!)
 そのスキを逃さずに上月は、ぶらさがるように七瀬の腕にしがみついてきた。

 「ああ、あれあれ、おれはしょっちゅうあれをやられてるんですよ」
 折原がしみじみと語る。
 『そ、そうなんですか? 折原さんと上月さんって、どういうご関係なんですか?』
 住井はすかさず突っ込む。

 「ええいっ!離しなさいっ!」
 七瀬は無理に上月を引き離そうともがいたため、重心バランスを崩し二人ともマットに倒れ
込んだ。
 「ぎゃあーーーっ!」
 七瀬がまたもや苦痛の表情叫んだ。どうやら自然に脇固めの体勢に入ったようだ。
 「く、させるかぁーーーっ!」
 体勢が不充分だったため、強引に上月を投げ飛ばした七瀬は、ひとまず難を逃れた。
 「はぁ、不覚を取ったわ」
 『ひどいの』
 急いでスケッチブックに書き込んだ上月は自軍コーナーに戻ってゆき、川名にタッチした。
 「しまった、あたしもタッチよ! 瑞佳っ!!」
 七瀬はすかさず長森にタッチを求めた。
 「ええっ?わたし?無理だよぉ‥‥」
 「くっ!なら試合に出るなぁぁぁーーーーっ!! じゃ、じゃあ里村さん!」
 「‥‥‥嫌です」
 二人ともあっさりとタッチを拒否した。
 「あ、あんたらね〜〜〜っ!」
 七瀬の頬は怒りでひくついていた。
 「もういい、もういいわ!こうなったらあたしひとりでやってやるわよ! それこそ乙女に
しか成し得ない技よーーーーっ!!」
 そう叫んだ七瀬はものすごい勢いで、リング中央で待ち構えている川名に頭突きを浴びせて
いった。
 (ごちぃーーーーーーーーーーーーんっ!!)
 頭と頭がぶつかり合ったすごい音が辺りにこだました。

 「ああ〜、先輩の頭突きものすごく痛いんですよ!」
 折原が住井に語りかける。
 『先輩? いや、頭突きしたのは七瀬選手の方ですが‥‥‥。それはそうと川名選手とは
どういったご関係なんですか?』
 住井は折原に二重突っ込みをかける。

 「ふぇ〜ん、痛いよ〜〜っ」
 七瀬の頭突き攻撃をなんとかしのいだ川名は、両手を額に当てて痛みを堪えていた。
 そして七瀬選手のほうは‥‥‥
 「‥‥‥‥‥‥」

 4分52秒、青コーナー川名チームの見事なKO勝ちだった。



                         お し ま い

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どうも凄まじくお久しぶりです♪ いちごうです。
ここに来たのも久しぶりなので、これから、溜まった50件分の作品を読んで行きます(笑)
なので、何の感想も書けなくてゴメンナサイ(ぺこっ!)

さて、今回は日常シリーズのような選択肢を入れずに、しかも楽な三人称の手法で攻めたため、
アイデア的には詰まらずにサクサク進める事ができました。
ちなみに今回のお話、続きも考えてあるんですよ(笑) だけどオレの事だから、いつ書き始め
る事やら(笑)

じゃあそう言う事で、また会いましょう♪