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「日常ものがたり」 第3話「沢口くん登場!」 投稿者: 渡部いちごう
 うっす! みんな元気かい? おいら沢口ってんだ! なに?フルネームで
紹介しろ? ・・・・・・・・・なあ、細かい事は気にすんなって、みんな長森に言われてる
んだろ? だったらいいじゃんか! 「口ではああ言っても体は正直だ」ってよく
いうだろ? ま、そういう事で、今回は仮に第3話となっているけど実質的には
番外編なんだ。したがって、おいら沢口の登場となったわけだ。おおっと待った!
ちゃんと読んでくれなきゃ困るぜ。なんたって第1話で謎だった「アレ」が今回
明らかになるだ! 読まなきゃソンてもんだぜ!!

 さ〜て、まず言っておく事があるんだけど、おいらの存在している世界っていう
のが、浩平たちの存在する世界とは少し異なっているということだ。
具体的に説明すると、つまり、「浩平が現在存在する世界」と「永遠の世界」のあいだ
の世界が存在していて、「あいだの世界」から「浩平たちの世界」へは一方的に道が
開かれているけど、その逆はない。「浩平たちの世界」においらは物理的には存在する
けど、「おいら」としてではなく単なる「物」としてしか存在していない。「浩平たち
の世界」の人々は「あいだの世界」に入れないから、おいらを「おいら」として認識
する事ができないのさ。おわかりかい?
 堅苦しい話は無しのはずだったけどさ、これの作者が文才に乏しくて、本編中に
理解させる事が出来ない、との事なので、かわりにおいらがこうやって説明してあげ
たのさ。ほんとはおいらも作者も堅苦しい事は大嫌いなんだけどさ。
 どうだいみんな、おいらの事を少しは同情したかい。そういえば『同情したなら金
をやれ!』ってことわざがあったよな? なかったっけ? まあどっちにしろおいら
には金は必要ないんだけどさ。欲しいものはどこからでも手に入るからさ。
 この間なんかゲーム会社に見学に行ったんだけどさ、開発室に青いプレステがあった
から、これは貴重だ!と思ってマニアに高く売ろうと思って持ち帰っちゃったんだよ。
だけど、よくよく考えてみたらおいらには金は必要ないって気がついてさ。しかたが
ないから学校の視聴覚室でゲームをやろうとしたら、おいらの方をじーっとみつめて
いる女の子がいたんだよ。ハンバーガーをたくさん抱えてさ。最初はまさかそんな
はずはないだろ、と思ってその場を通り過ぎようとしたんだけど、その子の視線は
ず〜っとおいらの居る方、というよりおいらそのものを見ていたんだ。ためしに
フェイントを交えて軽快なステップであちらこちらに移動したけど、やはり、どう
あがいてもこちらを見ている。しかたないから話し掛けてみることにした。これで
反応があれば、その子にとってはおいらが存在している事になるのだ。

   1. ねえキミ! おいらが見えるのかい?
   2. うらぁーーーっ! ハンバーガーよこさんかーーーいっ!

 ・・・・・・・・・・・・・・・・あのさ、・・・・・ちょっと作者に言いたいんだけどぉ・・・・
 「番外編でもコレやるんかぁぁぁーーーーーーーっ!!!」
 「・・・・・・・・・・ふぇっ・・・・・」
 「え?」
 「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
 「ええーーーーーっ?」
 「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
 「わぁ〜〜〜〜っ!ま、まった! 今のは・・・・・・」
 「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」

 もーれつダッシュで人気の無い場所に連れて行く。

 「わかった、おいらが悪かったから! ごめんよ、怒鳴ったりして・・・・・」
 「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
 「あううっ、どうしたらいいんだ?」
 「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
 「よ、よし! わかった! このプレステあげるから! 青いやつだぞ、マニア
だったら涙流してひざまずいて喜ぶ代物だぞ! 略して青プレ!」
 「ぐすっ・・・・・・・ぷれすて?」
 「そう! プレステ! 欲しくないか?」
 「・・・・・ほしい」
 「よしきた! はいっ、と、あっ・・・」
 おいらは女の子にプレステを手渡そうとしたけど、女の子は、両手でたくさんの
ハンバーガーを抱えていたので、このままでは渡せない。
 「ところでキミさ、名前は何て言うの?」
 「しいな」
 「下の名前は?」
 「まゆ」
 「って、どんな字書くの?」
 まゆは指で複雑な軌跡をなぞった。
 「??? ・・・・・・お蚕さんのまゆ?」
 「うんっ」
 おいらはお蚕さんのまゆがどんな字か分からなかった・・・・・・。
 「わかった! それじゃ、まゆちゃん、とりあえずハンバーガーをプレステの上に
乗っけてくれよ。そうしないとコレ渡せないからさ」
 「みゅっ」
 まゆは掛け声付きでハンバーガーをコロコロとプレステの上に置いた。」
 「じゃあ今度こそ、はい、どうぞ」
 「みゅ〜っ♪」

 嬉しそうにプレステを抱きかかえるまゆを、ぼ〜っと眺めながら、ひとり考えに
耽った。
 「ほぇ?」
 そんなおいらの様子を、まゆは時々不思議そうにみつめる。
 おいらは思った。
 この子は今、「おいらの住む世界」と似た世界にいる。いや、逆だ! まゆ自らが
他人を抹消した世界。 誰も必要としない世界。 だけどおいらには分かる。まゆは
自ら作った世界から抜け出そうと必死にがんばっている。誰かを必要だと感じ始めて
いる。 誰かを・・・・・・・。 誰を必要としているのだろうか?
・・・・・まず、浩平なんてことは神に誓ってもないだろうな。
 関係ないけど、親友だった南・・・・・元気でやってるかな? もう、顔も忘れて
しまったなぁ・・・・ていうか、最初から知らないぞ!
 そして、さらに思った。

 「なあ、まゆちゃん」
 「みゅ?」
 「ひょっとして・・・・・・・・計算してた?」
 「♪」

               お し ま い

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 お待たせしました。・・・・・って、待ってる人いるんかいっ!!
 さあて今回は第3話と言いつつも番外編ですのじゃ。しかもプレステの謎が明かされ
てるし(笑)。まあ、シリーズ3作目は過去に戻って謎明かし、って、いいつたえにも
あるじゃないですかぁ! だけどあれですよ、浩平はいまだにプレステの入手方法は
知らないわけです。沢口くんの存在は知っていると思うんですけど・・・・・。ただし
いまの浩平は、南くんと沢口くんの事をごっちゃにして捉えています(あくまでこの
お話の中の事ね)ONE本編で浩平が南くんの事を沢口って呼んだのは冗談なのでしょ
うけどね。「日常ものがたり」ではそれを利用し、故・藤子F不二雄せんせの国民的
作品である「ドラえもん」に登場するアイテム、石ころぼうし的なシチュエーション
を混ぜて使わせていただきました。
 「なあ、沢口って誰だ?」の沢口です。まさかあのような展開になろうとは、ぼくも
想像していませんでした。いや、オチだけは考えていて、あとはギャグで突っ走るぜっ!
てな感じでいこうとしたんですが、なんか、沢口くんの世界を造ったら、な〜んか
雰囲気がシリアス路線になっちゃって、これどうやって選択肢だしたらいいんだよーっ
(笑) なんて真剣に考えてしまいました。選択肢を出したはいいけど、その後の
ギャグもなんか煮え切らないし・・・・・・。
 だけどラストの、独り思いに耽る沢口くんは自分で書いておいて、なんだか気に入っ
ちゃいました。あと、繭が癇癪起こすシーンは、自分で書いておいて心が締め付けられ
たかんじ。「こりゃあぁぁぁーーーっ、沢口ぃぃぃぃぃっ! 繭を泣かすでなぁぁぁぁ
ぁぁぁいっ!」て感じですね(笑)。
 え〜と、いいかげん長くなっちゃうので、この辺で。

 P.S.例の伏せ字は「本編」、「おもしろく」でした。

                          それではっ!