ONE 澪編 −1− 投稿者: レス(本家)
 薄れゆく時間、空間、人々。
 浩平の存在が除序に薄れかけていた。消えゆく存在、彼はそのことを望んでいるの
であろうか。夢の中の少年は彼にこう言った・・・もう辛くはないよ、何も考えなく
てよい世界がそこにはあるよと・・・。

「あと一ヶ月か」
 廊下の窓から空を見上げながら浩平はこう呟いた。空は澄み渡り、たまにクラブの
生徒達のかけ声がこだまする。時間はゆったりと流れ、澄んだ空気が開かれた窓の外
から流れ込んでくる。ゆったりとしている穏やかな風。浩平は周りの存在を忘れてし
まいそうな感覚を肌で味わっていた。後2時間もすればこの場所も今の景色が嘘のよ
うに暗くなり、誰もいない静かな世界が訪れるだろう。この世界にもう未練はないが
、世界を離れれば2度とこの感覚を味わうことがないと思うと、少々寂しい気持ちも
ある。それまでに浩平はこの澄みきった世界の未練をも断ち切るつもりで、空を眺め
ていた。ほんの少しの喜びや嬉しさと引き替えに、苦しみ、悲しみ、寂しさを忘れら
れる世界へと旅立つために。

  瑞佳は悲しむだろうか?ふと少年の心にそんなわだかまりが浮かんだ。だが、それ
もすぐに心から薄れていく。そう、浩平が消えた後、長森の心には彼の想い出は残ら
ないことが約束されているのだから。そう考えながら浩平は、ずっと空を眺めながら
悠久とも思える時間を過ごしていた。

 さっき窓から見上げた時は日の光に照らされ青々としていた景色も、段々と太陽が
西に傾き夜のとばりが降りるにしたがって、色が霞み除序に朱色の濃艶さがまし、今
度は明るさのトーンが落ち、徐々に黒みがましてきていた。

「もう遅くなったし、帰ろうかな」
 浩平は美しい景色に別れを告げ、教室のある方向に顔を向けた。廊下はもう人影も
まばらになり、多くの生徒達が家路についたことを表していた。景色に心を委ねてい
る間に下校時刻を少し過ぎるまでになっていたのである。

「そろそろ帰るか」
 そう思って浩平は教室に置いた鞄を取りに行こうとした。だが、彼の体は小さな力
で引き留められる。

「つんつん」
 ふと足の方を一差し指でつつかれたので、浩平は下を見下ろしてみる。そこにはつ
ぶら瞳と丸顔、黒い髪をした小さな少女がたっていた。その少女は、彼女には不似合
いな程大きな画用紙をたどたどしい感じで開くと、手に持っていたマジックで大きく
文字を書いた。

かえすの。

 彼女はそう書くと、画用紙をそこに置いて、いそいそと男ものの制服を彼の前にだ
す。その時、浩平は食堂で彼女とぶつかり、ラーメンをかけられた時のことを思い出
した。

「あっそうか、君は食堂でぶつかった・・・」
 ふと考えてみると目の前にいる小さな少女の名前が思い浮かばない、そこで彼は名
前を聞いていないことを思い出す。

 一心に彼に視線をおく大きな瞳。
「えっと君の名前は?」 
 彼女は忘れていたものを思い出したかのように少しあせりながら、また画用紙を取
り出す。

澪なの。

「えっと・・・」
 浩平は自分の不勉強さを少し恨みながら、黒い髪を肩口まで伸ばした少女に頭をか
きながらもこう言った。
「わからないんだけど」
 すると画用紙の次のページをいそいそと開けて、彼女は大きな文字でこう書いた。

みおなの。 

 澪、そう愛らしい下級生との出会いはこうして訪れた。彼女は昔あることがきっか
けでしゃべれなくなったらしい。だが、澪は精いっぱいに自分を表現し、少し古くな
った画用紙片手に言葉を伝える。私はしゃべれないことなんて関係ないですよーとで
も言っているかのように・・・。彼女は演劇部で演技するのが大好きだとも言った。
  浩平の持たないものを持つ澪、この後、浩平は彼女との出会いで今までの彼には考
えられない必死さで彼女と関わることになる。浩平がいた軌跡を残すために・・・。
 浩平17歳、澪16歳、季節は冬から真冬に近づき、もうクリスマスも後わずかに
ひかえた時のことだった。

(つづく)

なんか皆さん会話形式で書かれているのでワシ^^:も踏襲(爆)

浩平:なんか今一お話が盛り上がらなかったような。
作者:本当は一回で終わらすつもりだったから^^:。
澪:それはむりなの(画用紙ことば)
浩平:企画者の力量不足じゃ?
作者:それはいうなあ〜。
澪:それはあまりにも酷すぎるの。
作者:おおわかってくれるか、澪。
澪:せめて、才能がないと書くくらいにしておくの。
作者:こら〜。
ナレーション:こうして時間が過ぎていく、果たしてこのSSが読者の目に触れるこ
とがあるのだろうか?
作者:こら・・・お前。(ナレーションをひきづっていく)
ナレーション:なぜ私だけ〜差別じゃないの〜〜〜っ。
作者:あっそうそう。感想も懲りずに続けますんでよろしく。

以上。