あの人は、そう、こんな時期に消えていった.
日常だけじゃなく季節まで代わりばえしないこの時期に.
詩子が、みんなが覚えていた頃はもっと色のある季節だったのに.
思い返せばまことが消えたのもそう言う時期だった気がする.
冬でも、春でもない灰色の季節.
「なんだ茜、こんな所にいたのか」
「…まこと」
間.
「…あの人がいなくなったのはちょうど今頃だから…」
突然、雨の音を遮って言う.
「そっか…」
まことは言葉少なに頷く.
また、間.
しばらくすると、目の前のピンクの紫陽花が揺れた.
雫が花に掛かる.何もない場所にある、花束.
茜は振り向いてまことを見ていた.
「何も言わないんですか?」
首を振って見つめ返す.
季節なんて関係ないんだ.ふとそう思う.
「今日、商店街に行きませんか?」
一言.
「ん、茜からお誘いが掛かるなんて珍しいなぁ」
「…はい」
歩き始める.二人並んで.
季節なんて、一言で輝いてしまうから、関係ないんだ.
"目覚めた朝に君がいない日はsweet hurt.
離れていてもどこにいても信じている living you..."
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お初にお目にかかります。
久しぶりなので練習作です(^^;