佐織 vol.5 投稿者: 由代月
<『意中の相手に告白出来るくじ』を引き当てた浩平が選んだ相手は、佐織だった。返事は、あっさりオーケーで。ありきたりな日々を過ごす浩平は、クリスマスの日。佐織に連れられて、屋上に向かう。誰もいない事に驚き、困惑し、泣く佐織。いるはずだった、思い出せないそいつと同じように、浩平も消え行くから。だから二人は、盟約を結んだ。有限の盟約を>

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○ 自室 <朝>

オレ達の朝は忙しい。
「はい、浩平、パスっ!」
「トスっ!」
「アターック!」
「ぐあ…お前、人の制服にスパイクを決めるなっ!」
「浩平がトスなんかするからでしょっ!」
 …言われてみれば、オレに非がある可能性もなきにしもあらずかもしれない。
 何にしても。既に時間が無い事が分かっているので、気楽なものだ。遅刻確定な朝は、早起きした朝よりものんびりした時間を過ごせるような気がする。
 爽やかな朝という言葉は、こういう朝のために用意されたようなものだな。
「ほら、急いでっ! まだ間に合う」
「佐織…すまない。オレはもう無理だ、お前だけでも、先に行ってくれ。頼む」
「ばかっ! そんな弱気でどうするのよ!」
 そうだな、オレが間違っていた。弱気じゃいけないよな。
 強気でいこう。
「では、おやすみなさい。ぐう…」
「ばかやってないで、とっとと。ほら」
 …かなりの力技を駆使したはずなのだが。それの全てに、見事なまでの切り返しがやってくるとは。さすがだな、佐織…などと浸る余裕は、腕をひっぱられて玄関を飛び出したオレには少しも無かったんだけどな。

○教室 <朝>

 キーンコーンカーンコーン
 始業のベルと同時に飛び込んだ教室には、髭の姿は無かった。全力疾走がむくいられた事を知って、オレは勝利の笑みを浮かべる。息をきらせて追いついてきた佐織も、隣で荒い息を整えていた。
「折原…」
「住井」
 目の前に現れた親友と、勝利を分かち合う為にオレは腕を伸ばす。けれど、
 けれど…住井がオレを見る目は、余りにも残酷なものだった。友の戦死の知らせを聞いたような、悲しみに満ちた瞳で。オレの事を静かに見つめたまま、住井が、その重い口を開いた。
「ホームルームはもう、終わってしまったんだ」
 ぐあ…
 な、なんて事だ。これでは、折角の全力疾走も、全くの無駄になってしまう。こんな事なら、当初の計画通り、眠ってしまえば良かったんだ。
「甘いわね」
 後ろから聞こえる、佐織の頼もしい声。
 その自信たっぷりな様子に、救いを見つけたようにオレは明るい笑顔で振り返る。満面に自信を浮かべ、両腕を組んだ佐織は。勿体ぶるように唇に指をつけてから、光る眼差しを住井に向けた。
「瑞佳に代返を頼んでおいたのよ!」
 オレは感動の余り、目の前が見えなくなっていた。そう、いくら長森だって、オレの代返までは出来無いだろうからな…
「確かに、長森さんは代返してたけどな」
 住井が悲しそうな目を向ける。そうか。わかったよ、住井。お前のその表情を見れば、それがどのような代返だったのかがな。
「勝負は下駄を履くまでは分からないわ。見なさい」
 言って教壇に駆け寄った佐織が、出席簿を開いて住井につきつける。住井の表情は、余りにも愕然としていた。その堂に入った愕然ぶりに、オレも出席簿を覗く。
 遅刻、欠席。0人。
 …
「ばかな…」
 今だ驚愕を残したままの住井に。ふと、疑問に思って長森の方を見た。すると、長森の奴は。何も聞かないで欲しい、という顔をしていた。
 …い、一体。今朝のホームルームで、何があったんだ?

○ 昇降口 <放課後>

「また明日ね、佐織」
「あ、うん」
 七瀬は、佐織に手を振って通り過ぎようとした。
 ふと足を止めて。たった今、オレを無視した事に気がついたみたいで。少し慌てながら。そして、ちょっと首を傾げながら。オレに笑顔を向けていた。
「また明日ね、折原」
「おう」
「…あんた今。顔、違わなかった?」
「お前じゃ無いんだから、そんな器用な真似が出来るかっ!」
「あたしだって出来無いわよ…っと…ううん。ごめん、なんでも無い。またねっ」
 七瀬は明るく笑うと、大きく手を振って帰って行く。七瀬より更に元気良く手を振ったオレは。袖が伸びきってしまう前に、佐織を離さなければないだろうな。
 佐織は雑巾でもしぼるみたいに、両手で袖にしがみついている。
 …まあ、袖くらい別にいいか。

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 御無沙汰しております(^^;。
 いやあ…書きたかった事を書いてしまっただけに、筆が進まなかった事(^^;。ようやくラストの目星がついたので、投稿する踏ん切りがつきました(^^;。
 続きは…なるべく早く(^^;。遅くても一週間後くらいには(^^;。後四回で終わります(^^;。『他人の目』を入れたら、予定より長くなっちゃいまして(^^;。
 …冷や汗だらけですね(笑)。
 感想はいりませんよ〜(^^;。ちょっと書こうとしたら挫折しました(^^;。やっぱり、大変ですから(^^;。
 ではでは〜☆

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