佐織vol.3 投稿者: 由代月
<!――前回までのあらすじ。告白相手に佐織を選んだ浩平は、平穏な日常を味わっていた。佐織の苗字や、いつ出会ったかを忘れている事を、ぼんやりと思いながら…。>

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○ 自室朝

カシャッ!!
いつものように開かれるカーテンの音。聞える幼馴染みの声。
「ほらほら、起きた起きた」
 半分以上寝ている頭に、なにかが引っ掛かっているように感じられる。なんだろう? あ、そうか。佐織の苗字が何というかが気になってたんだっけ。
「なあ、佐織の苗字、何て言ったっけ?」
「…水川」
「ああ、そうだそうだ…これで安心して寝られるな」
 では、お休みなさい。ぐぅ…
「って! 寝ちゃったら遅刻しちゃうでしょっ! ほら、起きなさい、折原君」
 言われて目が醒めた。折原君? 長森の奴も偉くなったもんだ、呼び捨てから苗字に君づけで呼ぶ…って、名前を呼び捨てにした方が偉そうか。
「起きた?」
 笑いながら制服を投げつけてきた長森は、顔が変わっていた。
「な、長森!? いくら俺を驚かすためとはいえ、整形手術までしたのか?」
「いいからとっとと着替えて」
 …ノリの悪い奴だ。
 この辺りの間合いについて、しっかりと議論を重ねてもいいのだが。時計を見るとその余裕は無さそうだった。っていうか、遅刻する可能性の方が高い。これはさすがに、これ以上寝ている余裕は無さそうだった。

○ 通学路

「…なあ、佐織」
「なに?」
 にこにこ微笑みながら隣を歩く佐織に、俺は思いきり抗議の視線を浴びせてやる。敵もさるものらしく、こたえた様子は微塵も無い。
「なんでオレ達、歩いて登校してるんだ?」
「良かったじゃない。ゆっくり学校に行けて」
 慌てて家を飛び出して、遅れる佐織を見捨てるか迷う為に覗いた腕時計は…始業時間まで、かなりの時間がある事を示していた。
「お前、こんな起こし方が二度も通用すると思うなよ?」
「大丈夫。まだまだいくらでも、作戦はあるから」
 いや、なんというか…オレ、やっぱり朝は長森の方がいいかもしれないと思わないでも無きにしもあらずだ。
「ところで今日、クリスマスだよね?」
「そうなのか?」
「折原君は予定とかあるの?」
 通学路の先の方を見ながら言った佐織の顔は、オレの位置からは見えなかった。
「さっきまで知らなかったくらいなのに、予定も何も無いだろう」
「それもそうか」
 笑った佐織が、嬉しそうに歩き出した。他には何も言わず…って、普通この展開だと…
 ま、いいか。

○ 体育館前

 二学期最後のおつとめとはいえ、これから長い話を聞かされる事になるかと思うと嫌になってくる。周りのクラスメートもそんな顔ばかりで。隣にいたクラスメートも、似たような顔をオレの方に向けていた。
「なんか、終業式前から疲れてくるよね」
「全くだ」
 ぴったりと意見の合うところから、オレと佐織のつきあいの長さも分かってくる。最も、さっき『全くだ』と答えたのは住井だったけれど。
 …考える事は一緒だって事か。
「ところで折原。今日、クラスの男子でパーティーをやるんだが。お前も当然、参加だよな?」
「残念。ごめんね、住井君。折原君は、放課後私と出かける事になっているから」
「あ、そうか。悪い悪い」
 …オレの発言の無いままに、オレの運命は決まってしまっていた。いや、なんというか…まあ、いいんだけどな。

○ 教室(放課後)

「じゃ、行こっか」
 すぐさまオレのところに走り寄って来た佐織が、にこにことオレの手をひっぱって歩き出す。途中で出会った長森は、嬉しそうに手を振っていた。あいつは、恐らくオレと佐織が恋人同士の時間を過ごすとでも思っているんだろう。
 他人の幸せで喜べるなんて、安上がりな奴だ…っていうか、
「おい。長森に起こされてる間は、つきあわないとか言ってなかったか?」
「だから私が起こしに行ったんじゃない」
 ぐあ…って、待てよ? それじゃ、
「ほら、行くわよ」
「行くってどこに?」
「いいからいいから」
 なんだろう。オレに向ける佐織の顔は、確かに笑顔だったけれど。どうしてだかオレには、それが今にも泣き出してしまいそうな顔に見えていた。

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 まだ全然、何も出てきてませんねえ(^^;。あと、描写がやや雑になっちゃってますぅ(^^;。ONE小説版で佐織の苗字が『稲木』というのは知ってるんですけど…あの扱いだったら、無視しちゃっていいですよねっ(^^;。
 では、少しですけど感想を(^^;。

▼Sashoさん
>約束
 タイトルから予想し過ぎちゃって、別の方向ばかり考えちゃってました(^^;。丁寧な作品ですよね(^^)。日常的な情景の積み重ねって、ONEらしくていいです(^^)。

▼ 狂悦炉さん
>小曲集〜天使達のラブソング〜
 おまけSS楽しいです(笑)。みずかのところで、特に笑わせて頂きました(笑)。それにしても、たくさんの感想御苦労様です(^^;。私も見習わないと(^^;。

▼から丸さん
>幻想猫の魔法第4話
 住井に「最近出来た」はずのお兄さんと、既に馴染んでる辺り。今後の展開とかありそうで面白そうです(^^)。ブローカー住井っていいですね。

 うわん(^^;。感想書くのって大変です。皆さん面白かったですよぉ〜…なんて書いたら怒られるでしょうねぇ(^^;。それではまた、二週間後くらいに(^^;。でも、このペースでも維持するの大変だったりします(^^;。
 今回は刑事版の宣伝を頼まれました。↓の掲示板を、後記や伝言(通常掲示板目的?)などに使って下さいとの事です(^^)。

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