佐織 vol.2 投稿者: 由代月
<!――# 前回のあらすじ。告白相手に浩平が選んだのは、長森の親友の佐織だった。結果はひどく曖昧で。そしてまた、いつも通りの退屈な一日がはじまる。>
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○ 自室、夜。

トゥルルルルルル…
トゥルルルルルル…
 電話の音が鳴っている。由紀子さんは今日も仕事で遅いから、オレが出なくちゃいけないわけなんだよな。起き上がって受話器を取りに行こうと思った時…呼び出しの音が止んでいた…
 …立ち上がってしまった事を無駄にしない為には、どうしたものだろう。
 うん、そうだな。明日の朝、長森が起こしに来た時に…これなら絶対、驚くだろう。では、お休みなさい。ぐぅ…

○ 自室、朝。

カシャア!
いつもの様に、カーテンの開かれる音。目蓋に差す白い光。聞こえる幼馴染みの声。
「浩平、こうへ…きゃあ!!」
「ん? どうした?」
 突然聞こえた幼馴染みの悲鳴に、オレは眠い目をこすりながら開ける。悲鳴で起こそう、とは。長森もなかなか、起こし方のパターンに創意工夫があるな。
 ただ。何故だか知らないが、長森の身長はいつもより縮んで見える。というか、オレの身長が伸びてるんだろうか? あれ? 起きてすぐなのに、オレは何故立ってるんだろう?
「い、生きてるの…?」
「勝手に殺すな。だいたい、死んだ奴がこうして喋るかよ」
「だ、だって。なんだってそんな格好してるんだよっ!」
 格好? 言われてふと思う、何故か背中の辺りがごわごわする…ああ。そういや、昨日、パジャマの下に丈夫なハンガーを入れて、オレごと吊るしてたんだっけ。そして、首の回りには、天井からぶら下がった縄の輪をかけておいたんだった。
「長森っ! お前、オレを殺す気かっ!?」
「浩平が自分でやったんでしょっ! 本当に自殺したのかと思っちゃって、びっくりしたよっ!」
「なんでオレが自殺しなくちゃいけないんだ?」
「それはこっちが聞きたいくらいだもんっ!」
 とりあえずハンガーを外して降りようとして、ふと思い当たった。
 …縄を先に外さないと、本当に首を吊ってしまうではないか。

○ 登校中

 いつものように、学校へとダッシュをする。それにしても、毎朝鍛えてやっているというのに、長森の顔は不満そうだ。
「今日は早めに起こしに行ったのに、なんで走ってるんだろうね…」
「長森の起こし方が悪いからだろう?」
「浩平の寝方が悪いんだもんっ! 普通、首吊り自殺の真似して寝たりしないんだもんっ!」
 …まあ、確かに。
「なんだってあんな事してたんだよ」
「いや、昨日の夜に電話が鳴ってな。取りに行こうと立ち上がったのはいいが、切れちまって。ついでだから、長森を驚かせてやらなくちゃいけないと思ってだな…」
「なんでそこで、私を驚かせるのが義務みたいな方向に考えが行くんだよ…」
 そこでいつも通りのため息を、長森がつく。
 …息切れしてるってのに、器用な奴だ。

○ 教室

 髭との勝負に勝ったオレ達は、教室での出席に間に合っていた。ここのところ、負け知らずだ。
 全員の点呼を終えて、担任の責務を終えた髭が教室を後にする。暇を持て余した七瀬が、遊んで欲しそうな顔をしている。よし、ここはその期待に答えてやらねばな。
 すると、何かの気配に気付いたのか七瀬が振り返った。
「…あんた、また妙な事考えてるんじゃ無いでしょうね?」
「いや、お前と遊んでやろうと思って」
「遠慮しとくわ。それに…可愛い彼女が待ってるじゃない」
 七瀬が目でくいっと示す方向にオレが顔を向けると。その途中で、よく聞き慣れたはずの女の声が聞えてきた。長森の親友だけあって、オレだってよく喋っているんだから。こいつの声に、今更なにかを感じるのもおかしな話だ。
「まだ彼女じゃ無いわよ、七瀬さん。折原君は、今日も瑞佳に起こされたみたいだし」
『別に、どっちでもいいわよ』
 そんな、興味の無さそうな顔をして七瀬は前の方に向き直った。まあ、なにはともあれ…オレが重症を負って病院に担ぎ込まれる事態だけは、杞憂だったらしい。
「ところで、何だ、今のって?」
 佐織の言った事の意味が分からず、オレは尋ね返した。すると、佐織は呆れたような顔をしてから、にやにやと笑って言った。
「照れない、照れない。瑞佳に起こされずに学校に来れたら、ちゃんとつきあってあげるって言った事。忘れたふりしなくたっていいわよ」
 …忘れてた。
「え? なに? その顔、まさか、本当に忘れてたの?」
「あ、ああ…というか」
 佐織とも、結構な長さのつきあいだ。オレが長森に起こされて学校に来るのは、ごく当たり前の事だって知っているだろう。だから、あの言葉はフったものだとばかり思っていたのだが。
「結局、色々な事を忘れて人は生きて行くのよね。大事な事だって、ね…」
 ? ふっと真面目な顔でそう呟いた佐織は、すぐに笑顔で打ち消して去って行った。大事な事だって忘れる? 大事な事、大事な事…
 …佐織の苗字、なんて言ったっけ? …

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 というわけで第二話です。メールアドレスを取れたので公開出来ます(^^;。共用だったので、公開出来無かったんですよぅ(汗)。
 感想を下さった皆様、有難うございます(^^)。 読んで下さった皆さんもありがとうございます(^^)。本当、とても励みになりますねーっ☆

 書けてたので、先週出そうと思ってたんですけれど…皆さんの一周年記念SS読んでて遅れちゃいました(^^;。後は、鈴うたやっていたもので(^^;。今週金曜発売のあのソフトも買いますので、次回も早くて再来週でしょうね(^^;。
 …本当に書けるのかなあ?(汗)。

>感想というか
 パロディやMOON絡みの作品が多くて、私にはよく分からない話とかが多かったもので(^^;。なんか、こういう作品群っていいですよね(^^)。

http://garden.millto.net/~yusiro/