伝えたいこと vol.1 投稿者: 吉田 樹
 努力して手に入れたものなら、その努力を怠った時に失ってしまう。
 それは、よく分かる事だった。それなら、失いたくないのならば、努力し続ければいいんだと、ぼくは思う。
 でもそれが、いつもある普通の事。ごく当たり前の事だった場合、どうすればいいんだろう?
 公園で泥だらけになって帰ってくると、怒るお母さんと、笑ってるお父さんがいて。
 そんなお父さんに、甘やかし過ぎだと言ってお母さんが怒る。
 ぼくはちょっと気まずい思いをしながら、気付くんだ。お父さんが、やれやれだな、という顔をしてぼくに片目を瞑ってくれる事に。
 背中に大きくて寄り掛かれるものを感じながら、どこまでも続く空をずっと見上げていたり。暖かくて力強い肩の上から眺めれば、荒れた海の寂しさに怯えないで済んだり。がっちりした手に包まれたぼくの手が、帰り道の夕陽に紅く染まっていたり。
 大きな草原でキャッチボールをした時に、ぼくが大暴投した球もちゃんとミットに収まっていて。なんだかそんな時に、ちょっと尊敬してみたりするんだ。照れくさくって、ちゃんと言葉で言った事なんか無かったけど。
 でもぼくは。そういった幸せな日々を手に入れる為に、努力なんか何もしなかった。だから、わからないんだ。どうすれば失わないでいられたのか。どうすれば、ずっと幸せでいられたかなんて。
 ここには何も無い。今、ぼくのいるこの場所には、なんにも無いんだ。
 でもぼくが望めば、ぼくの心の中にある、幸せの欠片を感じる事が出来る。それは、とても楽しい事だけれど。でもぼくは、それが悲しい事だって知ってるんだ。ここでは永遠に、何も変わる事なんて無いんだから。
 幸せだった日々の最後の日に、ぼくが出会った女の子がいた。
 ぼくが何をやっても、反応しない女の子。いじめても、怒っても、泣いても、笑っても。ずっと無表情のままだった。でもその子にスケッチブックと青いクレヨンを渡したら、名前を教えてくれた。ぼくは嬉しくなって、その子にそれを貸してあげたんだ。あげちゃったら、もう会えないけれど。貸すんだったら、返して貰う時にまた会えるから。
 でも、ぼくはあの時、返して貰う約束を守れなかった。行ってあげるべきだと、思っていたけれど。大きな手が無くなってしまったから。もう、肩車をして貰えなくなったから。だからぼくは、ずっと泣いて暮そうって決めてたんだ。涙が枯れてしまっても、ずっとずっと泣いていようって決めていたんだ。でも、
――えいえんはあるよ
 永遠にあの時にいたら、あの子にスケッチブックを返して貰える事なんて無かった。ぼくはもう、知っていたんだ。ずっと変わらないものなんか、いらないという事を。そして、失ってしまったら、取り戻せないものがあるという事を。
――ここにあるよ
 今、ぼくはここにいる…永遠のある場所に。

 オレは、かなり驚いていた。いや、というか驚かない方がどうかしている。
 学食に今まで余り来なかったから、なのだろうか。昼飯時である今現在、箸を投げれば生徒にぶつかるぐらい混雑している学食だが。ここまで食べっぷりがいい人は多分、他にいないだろう。他にいるのなら、オレは自分の余りの世間知らずを理由に、土下座して回ってやる。
 お代わりを持ってくると、みさき先輩は嬉しそうに食事の続きをする。カツカレー三人前がちょっと、という量だったとは。やはりオレは世間知らずなのだろう。
 以前、その容姿の綺麗さと目が見えないという事で、おしとやかな女性だと勝手に決め付けていたが。子供っぽい態度といい、この食欲といい。ん? おしとやかな女性は小食なんだろうか…これも、勝手なイメージなのかも知れないな…
 いつも学食で食べているとか、いつもはクラスの友達と食べているとか。そんな事を先輩から聞いていた。今日はその友達とは食べない事になっていたらしく、オレに食事を誘って貰って嬉しかったと言ってくれる。そんな先輩は、ちょっと子供っぽくて、ちょっと大人っぽくて。
 こうして改めて見ると、本当に綺麗な人だよな。そして、オレは少し照れつつも。なんとなくいい雰囲気に包まれながら、言っていた。
「オレなんかで良ければ…」
 いつでも…って、言えてない。なんでだ? 今、かなり大きな音がしたからか。それとも、背中が熱いからか。いや、というか熱い。すっごく熱い。
 大声を上げて振り返ったオレの顔を見て、小柄な女の子が驚いた顔をしている。いや、あのな。普通、人に何かをぶっかけて悲鳴を上げられたら。驚くよりも前に、何かする事があるだろう。と、オレなんかは思うぞ。
 オレの態度で改めて気付いたものか、その小柄な女の子はぺこぺこと頭を下げ出した。
 それよりも、オレの好奇心を刺激するものがあった。一体オレは、何をかけられたんだろう。背中に手を回すと、うどんかラーメンのような感触がある。どっちか限定する為に推理力を働かせるには…余りに背中が熱いけどな。
「上着、脱いだ方がいいと思うな。なんとなくね」
 先輩の助言に従って、オレもそれを実行する。見ると制服の奴は、湯気が立っていた。うむ、なんか下ろしたての新品みたいだ。しかし、新品の制服は湯気が立つんだろうか?
 ぺこぺこ謝りながらも、気恥ずかしさの為からか、女の子は顔を赤らめていた。丁度、オレが先輩に「わざとかけたわけじゃないんだから、許す」と言ってるところで。そこで顔を赤らめられると、まるで、わざとかけたようにも感じられるのだが。いや? オレは何か勘違いしている気がする。
 結局、オレは半ば追い剥ぎにあうような形で、その娘にクリーニングを頼まざるを得なかった。けれど、オレはこの時、気付いていなかったんだ。そう、その子が、
「あの子、浩平君の学年とかクラスとか知らないでしょ?」
 ぐあ…先輩の言う通りだよ。どうやって返す気なんだ、あの子…
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 と、いう訳で…吉田樹のお送りします、澪SSです。かなり強引な解釈の元に進む部分もありますので、飛ばす方は飛ばしちゃってください。あと、感想書くの断念しました(^^; それと、私のに感想いりません♪ 読み捨ててやって下されば幸いです(^^)
みさお「感想を頂いた皆様、読んで下さった皆さん、有難う御座いますっ」
 尚、これ書くに当たって。よもすえさんに御協力頂きました♪ 頂いたあの解釈に、かなり変更かけちゃう恐れもありますけど(^^; 有難う御座いました(^^)
みさお「会話がほとんど無いねっ。内容もまずいんじゃない? …大丈夫なの?」
 駄目かも(笑)。次回はいつになるか未定です(^^; ではでは

(改行と告知忘れの為に、いっぺん消してます(^^; 感想前後してますけど、気にしちゃ駄目ですよ(^^;)

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