【81】 SWEET LIFE VOL.05
 投稿者: 丸作 <dtsunoda@apricot.ocn.ne.jp> ( 男 ) 2000/4/1(土)16:00
ONE 輝く季節へ ショートストーリー

SWEET LIFE

第5話「予兆」



<あらすじ>

 ONEヒロインズによる浩平争奪戦は、場所を中庭に移して更に白熱!!
 繭の「間接キス」、澪の「ふ〜ふ〜」、長森の「口移し(未遂)」…
 浪漫な大技が、昼の中庭に次々と繰り広げられる。
 一方住井軍団は、着々と折原浩平天誅計画を実行に移しつつあった…


 夢…
 夢を見ている…
 それはどこか懐かしい夢…
 不確かな予感に似たもの…
 遠ざかる声…
 薄靄の中に没していく笑顔…
 儚い淡雪のような面影…
 夢が…白く染まっていく…
 全てが白く染まるその瞬間まで、少女は微笑ってくれていた…
 その笑顔は…誰のものだっただろう?
 思い出せないまま…俺の夢は覚めていった…

 「…い…うへい…」
 誰かの呼び声が聞こえる…
 「こうへい…浩平…」
 今度はもっとはっきりと、誰かが俺を呼ぶ声だ。
長森「もうっ…浩平!!もう放課後だよっ」
浩平「んあ…」
 そう…これは長森の声…
 そっと目を開け、ゆっくりと伸びをする。
 何故か長森は困った顔をして、手に箒とちりとりを持っていた。
長森「今日は浩平とわたしが掃除当番の日だよ」
 そう言って、手の箒とちりとりを差し出してくる。
茜「終わったら一緒に帰りましょう…」
七瀬「恋人と一緒に下校…乙女にしか為せない技よね…」
繭「みゅ〜っ!!いっしょにかえるぅ…」
 顔を赤らめて、何時の間にか俺の席を包囲していた3人が言った。
 この調子だと、じきにみさき先輩や澪も来るな…
 周りを見渡せば、クラス中の男子の痛い視線が集中していた。
 しかし、その急先鋒たる住井軍団は不気味な沈黙を守っていた。
 …何故か、昼から沢口の姿が見えないが。
長森「ほらっ、浩平早く♪」
 嬉しそうな顔で、なおも箒とちりとりを差し出してくる長森。
 はっきり言ってタルい…
 何とかこの状況を打開するために、俺の頭脳はフル回転を始めた。
 そして、4つの結論を導き出すに至った。

 1:「あっ!!UFOだ!!」と言って隙を作り、その隙に脱出
 欠点:追いつかれて捕獲される危険性あり

 2:窓を突き破って脱出
 欠点:七瀬並の生命力がないかぎり、生還の可能性薄し

 3:ワープする
 欠点:不可能

 4:4人を仲間割れさせる

 我ながらしょーもないことばっか思いつくもんだ。
浩平「……4」
 少しゲンナリしながらも、一応一つ選んでおく。
浩平「…で、帰りにどこか寄っていくか?」
 唐突に切り出してみる。
 すると…
長森「パタポ屋がいいもん」
茜「山葉堂でワッフル道楽がいいです…」
繭「はんばーがーだもぅん」
七瀬「ここは乙女らしく、洒落た喫茶店で午後のティータイムがいいわよ」
 かかった!!俺は心中でほくそ笑んだ。
 俺の術中にハマった4人は、俺を放って喧喧諤諤の大論争を始めた。
長森「パタポ屋で浩平とクレープで間接キスだもん!!」
茜「やっぱり甘い生活には、甘いワッフルが欠かせません!!」
繭「なうでぽっぷなやんぐめんには、はんばーがーがいちばんだもぅん!!」
七瀬「乙女らしくティータイムだってば!!」
 今のうちに…
 俺は4人の包囲から、こっそりと抜け出した。

 で、虎口を脱した俺は、取り敢えず屋上へ向かった。
 屋上なら、多分みさき先輩はいるだろうからな。
 まぁ、暫く隠れるなら丁度いいかも知れん。
 階段を昇り、「折り曲げ禁止」と書かれた注意書きのあるドアの前に立つ。
 ドアに付いた窓から差し込む夕陽が、視界を真っ赤に染める。
 そのドアを開いたとき、そこに立っていたのは…

女の子「うぐぅ…祐○くん、○波届いた?」

 バタン!!
 見なかったことにしよう…
 そう思い、速攻でドアを閉めた。
女の子「うぐぅぅぅぅぅぅっ!!」
 後ろから何かの声がするが、気にしない。
 つうか、ゲーム違う上にパロディだろうが…(汗)
 作者のあざとさに舌を巻きつつ、俺は屋上を後にした。

 その頃…
長森「パタポ屋だもん!!」
茜「山葉堂です!!」
繭「BOSばーがーだもん!!」
七瀬「サ店だって!!…って、あれ?折原がいない!!」
 不意に七瀬が驚きの声を上げた。
 今頃気付いたのか…

 屋上を後にした俺は、今度は紅い夕陽の差し込む廊下を歩いていた。
 暫く歩き、ある一室のドアを開ける。
 「軽音楽部」…ドアに貼られた張り紙には、そう書かれていた。
 訳もなく涙腺を刺激する紅色に満ちた部屋の中…
 「やあ…」
 奴はこちらを見て、ごく自然に軽い挨拶をした。
 男のわりに色の白い肌…どこか虚無感を感じさせる涼やかな瞳…
 俺は奴に見覚えがあった。
浩平「氷上…」
氷上「やあ、折原君…」
 自然と俺の体に緊張が走る。
 しかし氷上はそれに頓着した様子も見せず、ごく自然な様子で口を開いた。
氷上「僕との絆を深めに…」
浩平「違う」
 言葉の途中で即答され、氷上は少し寂しそうだった。
 しまった…ここは部室だった…
 漢・折原浩平、一生の不覚っ!!
 と、俺が心中で叫んでいる間に、氷上が俺の背後に廻りこんだ。
 ガチャ
 不吉な音が、氷上の後ろのドアから聞こえた。
 脱出不能…そんな言葉が頭をよぎる。
氷上「折原君…君は気付いているかい?」
 唐突に氷上がそんなことを聞いてきた。
浩平「…何のことだ?」
氷上「…そうか。まだ気付いていないんだね…」
 怪訝な顔で俺は尋ねたが、氷上は少し残念そうな顔をしてため息をついた。
 しかし気を取り直したのか、氷上は再び薄笑いを浮かべて言った。
氷上「君はきっと気付く筈だよ…君の想いが…絆が本当のものならね…」
 意味深な笑みを浮かべたまま、氷上が1歩、ずいっとにじり寄る。
 それに合わせて、俺もじりじりと後ずさる。
浩平「…これは何のつもりだ、氷上」
 じわじわと接近を図る氷上…ただただ後退するだけの俺…
 震える声で、俺は氷上に尋ねる。
 すると氷上は、にっこり笑顔のままで…
氷上「いや…手っ取り早く思い出させてあげようと思ってね」
 上着のボタンを外しながら、そうのたまったのだった…
浩平「何をだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
 俺は絶叫しながらバックダッシュをかける。
 どんっ
 しかし後ろはもう壁だった。
氷上「折原君…さぁ、僕との絆を深めよう…」
 獲物を狙う、飢えた狼の目をしながらにじりよる氷上…
 今のコイツなら、漢の奥義・ルパンダイブ(ルパン脱衣)もできそうだ。
浩平「やめろ…来るな…」
 未だ嘗てない恐怖に、体ががくがくと震え出す。
 じゅるり☆
 氷上の舌なめずる音が聞こえる…
 折原浩平、絶体絶命の(貞操)の危機!!
 しかし気まぐれな天使は、俺に奇跡をもたらした!!
 ドゴォッ!!
長森「浩平っ!!やっぱここにいたっ!!」
茜「さぁ、帰りましょう」
繭「みゅ〜っ!!」
七瀬「もうっ!!何こんなトコで油売ってんのよ!!」
みさき「おなかすいたよ〜早く帰ろうよ〜」
澪『一緒に帰るの』
 鍵のかかったドアを蹴破り、ONEヒロインズが城内に突入した。
 …城内?ま、いいや。
 途中で合流したのか、みさき先輩と澪もいる。
氷上「残念だよ…もう少しで折原君と絆を深められたのに…」
 心底残念そうに言う氷上。
浩平「氷上…覚悟は出来てるだろ〜なぁ?ンンン〜!?」
 異様な殺気を孕んだONEヒロインズを背に、俺は氷上に詰め寄った。
 しかし氷上は、それにひるんだ様子も見せず…
氷上「こうなったら…サラバだ!!少年探偵団の諸君!!」
 そう言って、氷上は窓ガラスに突っ込んだ!!
 …何故に少年探偵団?
 がっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!
 けたたましい音と共に、煌くガラスの欠片が飛び散った。
 そして…
氷上「折原くぅぅぅぅんっ!!僕は諦めないからねぇぇぇぇぇ…」
 どすん!!
 何やら重い音がしたが…気のせいということにしておこう。
浩平「さて、悪も滅んだことだし…帰るか」
 俺はそう纏めて、みんなの方を振り向いた。
 そして、固まった。
長森「浩平!!パタポ屋だよっ!!」
茜「山葉堂ですよねっ!?」
七瀬「サ店よっ!!」
繭「はんばーがー!!」
みさき「カレー屋だよ〜!!」
澪『おすし屋なの!!』
 振りかえるとそこには、今にも噛み付かんばかりの勢いで迫るヒロインズ…
 ぐはっ・・・さっき逃げ出すために使った方便…
 それを真に受けちまったのか…しかも、みさき先輩と澪が増えてる…
一同「「「「「『さぁ、どこ行くの!?』」」」」」
浩平「ぐはぁ…」
 ヒロイン一同に詰め寄られながら、俺の頭の中にはある言葉が浮かんでいた…

 教訓
 「策士、策に溺れる」

==============あとがき=================
 ども、丸作っす。
 今回も程よく壊れたなぁ…(爆)
だよもん団長「はぁ…壊れすぎだよ…」
 くっ…貴様は西部署のだよもん団長!!
 ズドォォォンッ!!(発砲)
だよもん団長「はぁ…さっさと感想行くよ」
 はい…(血まみれ)

感想

いばいばさん>
 ご感想どうもです〜!!
 笑っていただけて嬉しいです〜♪
だよもん団長「鼻から牛乳は嫌だよっ」
 みさき先輩…健気ですねぇ
 これからもよろしくです〜!!

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我がHPっす
丸作の書いたSSや、投稿SSもありまっせ〜!!
って、連載モノがやたら多いような…(汗)
お暇だったら、是非見に来てください〜♪
http://www.geocities.co.jp/Playtown-Domino/8142

次回は『はだえぷ』か『冥土』か…(謎)