【83】 高くついた嘘 |
今日はいわずと知れたエイプリルフール、公然と嘘がつける日だぜ。となればやることひとつ、あの柚木に受けた借りを返してやるしかない。 茜とつきあうことになってからも柚木にからかわれまくっていた俺はひそかに復讐することを考えていた。 「どうしたんですか、浩平」 「ん、なんでもないぞ。やっぱり茜は綺麗だなあと思ってさ」 「恥ずかしいです」 と言って顔を赤らめる茜、ああ幸せ。 しかし好事魔多し、月に群雲花に風と言うことわざにもある通り、こういうときに限ってやつが現れる。 「やっほ〜、茜、げんき〜」 ほら来やがった。しかし今日は逆に好都合というもの。 「おお来たか柚木、今日は歓迎するぞ」 「な、なに? 変なものでも食べた?」 いつもと違う言葉に柚木が怪訝そうな顔をする。それを見て俺はほくそ笑んだ。 よし、先手必勝だ。 「前からおまえのことが好きだったんだ。俺とつきあってくれ!」 「ええっ?」 「柚木、俺の目を見てくれ」 「えっ? ちょ、ちょっとなに言ってるのよ」 くくく、動揺してるぜ。 「本気なんだ……柚木のことを考えてると胸が締めつけられてしまって苦しいんだよ、もう限界なんだ」 「あ、あの」 顔を真っ赤にさせて柚木がもじもじとしている。 じゃあそろそろネタばらしをするか。 そのときだった。 「うん、いいよ」 へ? 「折原君とだったら、うれしいよ」 ちょ、ちょっと待て〜!? 「まさか折原くんから言ってくれるなんて思わなかったな」 な、なんかおかしいぞ。 俺の動揺をよそにいきなり俺の腕を掴む。 「な、なんだ?」 「折原君、あたしとキスして」 「えっ?」 「恋人同士だったら別に不思議じゃないでしょ」 そう言うとはにかむようにゆっくりと目を閉じていった。 ちょ、ちょっと待て、なんかいまさら嘘だとは言えない雰囲気になってるぞ。 「ねっ、折原くんも目を閉じてよ」 わけが分からなくなっていた俺は思わず柚木の言う通りにしていた。 そして二人の間に甘い時が流れ、 「きゃはははは、だまされた、だまされた」 ……なかった。 「えっ? ゆ、柚木貴様!」 慌てて目を開けると柚木が腹を抱えて笑ってやがる。かっと頭に血が上るのが自分にも分かった。 「へっへ〜ん、騙されるほうが馬鹿なんだよ〜、それよりいいの?」 「何が」 聞き返そうとした俺の体を強烈な悪寒が駆け巡る。 「……浩平……」 うっ、この突き刺さる視線は……。 「ひどいです浩平」 しまったあああ!! 茜のことすっかり忘れてた!! 「い、いや、今日はエイプリルフールだから」 しどろもどろになりながら必死に弁解する俺。 「それでもやっていいことと悪いことがあります。浩平なんか嫌いです、もう話しかけないでください」 そう言うとぷいっと横を向いてしまった。柚木が笑っているが、そんなのには構ってられない。 「悪かった、なんでもするから許してくれ! 茜がしろって言うなら土下座でもなんでもするからさあ」 俺は必死に謝った。 「嫌です」 ああっ、またなんか永遠の世界が……。 「冗談です」 へ? 「今日はエイプリルフールですから」 「じゃ、じゃあ」 茜が小さくうなずいてくれた。 「はい、許してあげます。でももうそんなことは言わないでください」 「わ、わかってるよ、もうしない」 よ、よかったあ。俺はほっと胸をなでおろした。 「あ〜あ、すっかり茜の尻にひかれちゃってるねえ」 「う、うるさいぞ」 「ひどいよ、もともと折原君が悪いんじゃない」 「うっ、それは」 「あたしだって女の子なんだよ。告白されたらうれしいじゃない。あ〜あ、傷ついちゃったなあ」 「ゆ、柚木」 俺にどうしろと? 「今日は全部折原君のおごりね」 そういうことかい。 「浩平」 茜にまで見つめられた俺には断るすべを持っていなかった 「分かったよ、今日は二人まとめて面倒を見てやるぜ」 「言い方がいやらしいです」 くそ〜、柚木、来年こそはみてろよ。必ずぎゃふんと言わせてやる。 固く心に誓った俺を見て、 「やめたほうがいいんじゃない」 柚木の言葉に俺は何も言い返せなかった。 …………また負けた。 なつき「どうしたの」 ……別にいいんだ。 なつき「しっかりしてよね、こっちまで暗くなっちゃうじゃない」 はいはい、分かったよ。……にしてもまいったなあ。 なつき「なにが?」 ちょっと気になって、去年はどうだったか調べてみたんだよ。そしたらあのPELSONAさまがおんなじように詩子と茜で書いていたんだよな。 なつき「ふうん」 さすがにうまいよなあ。でもせっかく書いたんだし、もったいないから出してみたけど。 なつき「そう」 はあ、駄目だ、駄目だ。もう投稿やめにしようかなあ。 なつき「へ、まだ3ヶ月しか書いてないじゃない」 パトラッ○ュ、僕はもう疲れたよ。 なつき「誰がパ○ラッシュなんだよ!」 わたし、もう笑えないよ。 なつき「だめだこりゃ……」 |