二人の失敗
投稿者: みのりふ  投稿日: 2月21日(月)21時48分
12月22日

 雨の音だけが聞こえてきた。
 一人になると、急に雨の音が耳について不快だった。
 オレは長森と別れた後、あの場所に向かった。
 アスファルトの上に泥の足跡を残しながら、雨の街を走る。
浩平「……」
 その場所で立ち止まる。
 傘の水滴が、サーーーーっと、流れ落ちる。
 寂しい場所。
 その中心に…。
 茜が立ち尽くしていた。
浩平「よお、茜。今日も元気なさそうだな」
茜「……」
浩平「…茜?」
 少し様子がおかしかった。
 うつろな瞳でオレの方を見る。
茜「…浩平」
 いつにも増して小さな声だった。
浩平「もしかして、本当に体調悪いんじゃないか?」
茜「…そんなこと…ないです」 
 囁くと同時に、糸が切れるようにふっと茜の体が傾く。
浩平「おいっ…!」
 慌てて駆け寄る。
 しかし柔らかな泥がオレの進行を阻む。
 べちゃっ。
茜「……」
 生々しい音を立てて茜の顔が泥の中に沈んだ。
浩平「…えーと」
茜「…浩平」
 地獄の底から響くような声が俺の体の動きを止める。
 雨は…やみそうもなかった。

1月26日

 水しぶきの舞う住宅街。 
 その中で、いつもと変わらない佇まいを見せる場所。
 オレと茜がはじめて出会った場所。
 居るのか…。
 ここに居るのか…。
 視界が濁ってよく見えない。
 居ないのならそれでいい。
 ……
 …だけど。
 …その場所に
茜「……」
 …茜は立っていた。
 傘も差さずに、両手をぶらんと力無く下げて。
浩平「…茜っ!」
 上空から頭を押さえつけられるような大粒の雨に遮られて、その表情までは伺うことができない。
浩平「あかねっっ!」
 声が届いてるのかさえ分からない。
 それでも懸命に、ぬかるんだ地面を蹴って、茜の元に駆け寄る。
茜「……」
 ばしゃばしゃと沼地の様な地面を蹴り上げ、少しでも茜との距離をつめる。
茜「……」
 微かに、本当に微かに茜の唇が音楽を紡いだような気がした。
浩平「…あかねっ! こんなところで何をやってんだっっ」
茜「ラジオ体操です。邪魔をしないでください」
浩平「え?」
 ぷつっと糸が切れた人形のように、オレの身体が茜の方に寄りかかる。
茜「嫌です」
 あっさりと避けられた。
 べちゃっ。
 ……今度はオレかい。
 薄れゆく意識の中でオレは最後にこう思った。
 茜、その曲はラジオ体操第二だ……。 





あっはっは、もう笑うしかないですね。
まあ、思いついてしまったものはしょうが無いということで。
では逃げるように感想へ。

>から丸&からすさま
七話を読んで、もうすぐクライマックスだと思ったのですが、まだ一波乱も二波乱もあるようですね。
翼がやけを起こして浩平を連れていこうとしなければいいんですが。
パッピーエンドで終わればいいなあ。