なつきレベルアップ? 投稿者: みのり
 なつきは悩んでいた。
「うーん、どうしてなつきは報われないんだろう」
「おい……なつき」
「ピンクの映えるストレートな髪、ちょっぴり大きなつぶらな瞳、あどけない笑顔。どこ
をとってもスター性抜群なのになあ」
「…………」
「私だって立派なヒロイン、CGだって豊富にあるのに。なんだが気分はシンデレラ、継
母のひどい仕打ちにだって耐えて見せる……」
「いいかげんにどけええ!!」
「きゃああぁぁぁ!!」
 浩平はなつきを一蹴すると、顔をしかめてベッドにうずくまった。
「くそー、あばらが」
「うう、ひどいよー、目がちかちかするよ」
 病室の床ではなつきが額を押さえている。
「おい、その台詞はみさき先輩の専売特許だ、おまえが使っていい言葉じゃない」
「そういう問題じゃあないと思うんだけど」
「それよりいい加減退院しろ、おまえがいるとうるさくてかなわん。俺はこの静かな日々
を楽しみたいんだ」
「それは絆を求めてる人の考えることじゃないよ」
 浩平は無言で蹴りをいれた。
「いったーい、それがけが人に対する仕打ちなの?」
「心配するな、俺もけが人だから五分五分だ」
「…………、そうだ、浩平おにいちゃんも考えてよ」
「なにをだ?」
「なつきのイメージアップ作戦」
「ぐー」
「寝ないでよ!」
「あのなあなつき、身分相応という言葉を知っているか。アヒルは所詮アヒル、どんなに
努力したって白鳥にはなれないんだ」
「なつきはヒロインだよ! 一枚絵のない雪見さんや詩子さん、真希さんよりもなつきの
ほうが格が上のはずよ!」
「おおっ、なんて命知らずな発言を……どうなっても知らんぞ」
「え?」
 どがああああああああぁぁぁぁぁぁぁん!!!
 なつきは爆発した。
「……完……さて、寝るか」    
「完結しないで!」
 なつきは復活した。
「ええい、しつこいわ!」
「なつきも必死なの! というより、今の何?」
「はん、今のは深山先輩たちのファンからの不可視の力だろう………そうだ、確かイメー
ジアップをしたいとか言っていたな」
「うん」
「今から学校の食堂に行ってあいつらから不可視の力でも教わってこい。いまどきのヒロ
インは不可視の力のひとつやふたつ簡単に身に付けられないようじゃ生き残れんぞ」
 浩平はもっともらしくうなずく。
「あの人たちから?」
「知ってるのか」
「うん、いつもいつも混んでる食堂に居座って不法占拠してる人たちのことでしょ。まっ
たく関係ないのにしゃしゃり出てきて往生際が悪いよね、年寄りは黙って去って、大人し
く縁側で茶でもすすってればいいのよ」
 どかあああああぁぁぁぁんんんんん!!!
「おまえも懲りるということを知らん奴だな……」
 再び不可視の力を食らい床に伸びたなつきを見下ろして浩平は溜め息をついた。
「長森もこういうときに溜め息をつくんだろうな」



「……というわけで、晴香さん、なつきに不可視の力を教えてください」
「何が『というわけ』なのかよく分からないんだけど」
 あれからなつきは病院を抜け出すと浩平の言うとおりに食堂に来ていた。ちなみに今ご
ろ浩平の方はシュンに悩まされていたりする。
「決まっているでしょう。くっくっく、この力で邪魔なヒロインを一掃するんですよ」
「はあ」
「で、どうすればその力を使うことができるんですか」
「あのねえ、私は教えるなんて一言も言ってないわよ」
「そんなあ」
「そんなこと言われてもねえ、めんどくさいから私はパス、郁未にでも聞いてきなさい」
「なつきは晴香さんが頼りなんです」
 とお願い光線を発射するなつき。
「ううっ、晴香さんはなつきのことが嫌いなんですね」
「いや、嫌いも何も私はあんたのことなんか知らない……」
「そんなあ、なつきと晴香さんは固い絆で結ばれた仲間じゃないですか」
「はあ? 仲間ってどういうことよ」
「ブラコン」
「…………」
「そう、自分の兄弟にしか恋愛感情を抱けないという傷を持った友……」
 ゴゴゴゴゴゴ……。
「……分かったわ、今から不可視の力をあんたの身体にいやって言うほど刻み込んであげ
る」
「晴香さん、目がマジですけど」
 ひきつった笑みを浮かべるなつき。
「何か言い残すことはある?」
「ほんとに関係するのはまずいんじゃないかと」
 ばしゅうううううううう!!!
「きょあああああああああ!!!」
「あっ、待て、逃げるんじゃないわよ!!」 



 結局、なつきは不可視の力を得ることができず、前よりぼろぼろになって病院に帰って
いった。医者もどうやったらこんな怪我を負うのかと首をひねっていたが、その影で、し
ばらくなつきにつきまとわれずにすむと喜んでいた浩平の姿があったりする。
「折原さん、何かうれしいことでもあったんですか? 顔がほころんでますよ」
「いやあ、なんでもないですよ」
 看護婦との会話も弾む浩平であった。



「……だから、浩平のお見舞いに行くのはわたしなんだよ!」
『澪がいくの』
「私です」
「留美ちゃん、そろそろ放してくれないかな。私だって女の子なんだよ」
「そんなわけの分からないこと言ってもだめよ」
「みゅー」
「あ、こら。待ちなさい、繭!」
「抜け駆けするのはずるいです」
『ずるいの』
「図書館に本を返すのを忘れてたんだよ」
「むだよ、乙女の目は誤魔化せないわ」
 瑞佳たちはまだもめていた。

 


今回もお約束な上におちも弱い作品を出してしまいました。
私は珍しくプレステのほうから入ったのでなつきを出しているんですが、
やっぱりパソコンで知った人の方が多いですよね。
そんなところで私も不況ネタを

茜「浩平、今日はワッフルを作ってきました」
浩平「ひょっとしてあれか?」
茜「はい、どうぞ」
浩平「くぅ、茜の作るワッフルは……って甘くないぞ」
茜「砂糖がもったいないので」
浩平「茜が砂糖をけちるなんて何が起こったんだ!?」

……だめだ、感想いきます。


>から丸&からすさま
なんという投稿スピード、それでいてこの質の高さ、恐るべしです。
TOSA(勝手に略)3〜9話について
南死んでるし……。住井もなんだか危うい。
それはともかくバイオレンスでかっこいいアクション。読んでいて血が滾ります。
物語はいよいよ佳境に入りましたね、浩平は無事に瑞佳の元へ帰ることができるのでしょうか、気になります。
はたして少女の正体は……やっぱりみさおなのでしょうか。
竜の話
竜に羽と足がなくなったらそれは巨大な蛇だよ、じゃなくて哀れですよね。
不思議と駄々をこねる子供のように思いました。

>高砂蓬介さま
「歌姫」も「想い」も始めから読んでないので作品の感想を言うことはできませんが、オリジナルのキャラクターを主役にして書くのは大変だなと思います。
でもどちらの作品も違和感なくとけこんでいて素晴らしいです。
しかし七瀬家って裕福なのね。

>変身動物ポン太さま
作品の感想ありがとうごさいます。
やはり「温泉」は最初から読んでないので(ああ!見たいです)すが、広瀬が出てきたと言うことはやはり次は七瀬とのからみなのでしょうか、気になります。 
どうなるのかな。

>はぐさま
茜の物語ですね。やはり永遠の世界からは本人の戻る気がないと帰ってこれないのでしょうか。
その点は小説と同じですね。でも小説より茜と幼馴染の関係が詳しく書いていて素直に納得できるものになっています。小説版のは少し不親切だったので。

>PELSONAさま
まさかみさき先輩が自殺してしまうなんて。
そんなストーリーを見たのは初めてなので正直ショックを受けました。
歌を作品に絡ませるのは冒険ですね、センスが光っています。私にはとてもできません。