耐える! 乙女たち 後編  投稿者:みのり


 最初に飛び出したのはやはりというか留美であった。猛然と眼前の氷の塊と格闘をはじ
める。
「なめないでよ、私、七瀬なのよ」
 イチゴシロップを豪快に振りかけてスプーンを動かしつづけるそのさまには、さすがに
瑞佳も危ういと思ったのか動きを止めて表情を曇らせた。
「非常にまずいんだもん、こうなったらなりふり構っていられないんだもん、……ああっ、
七瀬さん!」
 突然瑞佳が叫んだ。留美が振り向く間に素早く何かを仕込む。怪訝そうに瑞佳の顔を見
たあと何気なくスプーンで一口。
「ぐっ!?」
「成功だもん」
 激辛キムチ味シロップに留美悶絶。しかしここからがさすがだった。最後の力をふりし
ぼり、懐から何かを取り出したかと思うと素早く瑞佳の氷へ。
「そうはさせないんだもん!」
「かかったわね瑞佳」
 瑞佳が慌ててブロックすると、留美はにやりと笑いそのビンを無理やり瑞佳の口にねじ
込んだ。
「うぐ、こ、これは!?」
「特選すりおろしにんにくよ! 食らうがいいわ瑞佳!」
 留美は瑞佳の腕がだらりとぶら下がるまでその手を放さなかった。
「……さっ、さすが七瀬さんなんだもん」
 がくっ。
「ふっ、あんたもね」
 留美は瑞佳の崩れ落ちるさまを見届けると、同じように机につっぷした。
「おおーっと!! ここで両者相討ちか!! まさに見事な攻防でした」 
 そのころ繭は、
「みゅー、美味しくない」
 あっさりとリタイアしていた。当たり前だ。
 えぐえぐ。
 どうやら澪もリタイアらしい。その隣りでみさきもぐったりとしていた。
「ううー、甘すぎて食べられないよー」
 ということは、
「私の優勝ですね」
 茜が優雅にかき氷を口に運んでいた。スプーンを口に含んで小首を傾げる。
「ちょっと、甘さが足りませんね」
 と、前に置かれたシロップ置き場に目をやった。するとそこにあるオレンジ色のジャム
の入ったビンに目が止まる。
「これはなんでしょう」
 茜はしばらくビンを見ていたかと思うとおもむろにジャムを氷にかけた。そしてスプー
ンですくって口の中に入れる。
「………ぐっ!?」
 沈黙。茜の顔色がどんどん白くなってゆく。カラン。スプーンが落ちる。そして、深い
眠りへと落ちていく。ときどき起こる痙攣。
 その様子を震えながら見ていた青い髪の少女がいたのだが、それはどうでもいいことで
ある。
 そして試合は終わったかのように見えた、が、
「はははははは、これで浩平君は僕のものだね」
 すっかり忘れていたシュンが高らかに腕を突き上げた。しかし、
「そうはさせるかー!!!」
 いきなり復活したヒロインズによってシュンはお空の星にされてしまった。
「ええっと、これは全員リタイアです! この勝負引き分けに終わりました!」
 住井がゴングを激しく打ち鳴らすと、どこからともなく救急隊員が現れて瑞佳たちを担
架に乗せて運んでいく。
 戦いは終わりを告げたのだった。
 ちなみにその後、
「今度は節分の豆まき大会で決着をつけるんだよもん!!」
 と叫ぶ瑞佳の姿があったとかなかったとか。
 そして、凍死寸前の浩平が発見されたのはあれから三日後のことであった。
 



はあ、ようやく完成しました。
短いのにこんなにかかってしまって溜め息です。
初めは寒中水泳大会にしようと思ったのですがみさき先輩がそれでは参加できないのであっさり没になりました。
しかし私は誰属性なんでしょうか?
誘われればどこまででも行きそうですが。
こんな作品ですが感想お待ちしております。
うー、続き物は初めから見てないと感想が……。