七草粥は禁断の味  投稿者:みのり


「浩平、もう朝だよ。起きてよ」
「ううーん、あと3ミリバールだけ寝かせてくれ」
「今はヘクトパスカルだってば。いいから起きてよ。せっかく今日は7日だから七草粥作
ってあげたんだよ。温かいうちに食べてよ」
「うーん、分かった。せっかくだから食べてやる。ありがたく思え長森」
「うん」
「いただきまーす」
「……って、なんで私の服を脱がそうとするの!」
「いや、ありがたくお前を頂こうと」
「はあっ、違うよ、私が言ったのは七草粥のことだってば」
「と言いつつ、まんざらでもなかった長森であった」
「わあー!! 浩平、勝手なナレーション入れないでよ! もういいもん、私帰る」
「冗談だって、長森機嫌直してくれよ。今度パタボ屋で(新発売激甘)クレープおごって
やるからさ」
「ほんと? うん、約束だよ」
「じゃあ、着替えてくるからお前は下で待ってろ。すぐ行くから」
「分かった」


「あ、浩平早かったね」
「おう、……それより、なんだその巨大な鍋は。どこから持ってきた」
「ああこれね、みさき先輩の家から借りてきたんだよ」
「みさき先輩の? まあ、確かにみさき先輩のなら納得してしまうな。けど、そんなに大
きい鍋なんかいらなかったんじゃないのか。いくらなんでも俺はそんなに食えないぞ」
「え? あはは、それよりさっそくお粥を食べてみてよ。……はいっ」
「ん、どれどれ、……ふむ、さすが長森、絶妙な塩加減だ」
「えへへへ」
「米もべちゃべちゃになりすぎず、入れた野菜もちゃんと歯ごたえを残している。言うこ
となしだ。10点をやろう」 
「何点満点で?」
「10点。……しかし、さっきからあの鍋揺れてないか? なんか変だぞ」
「えっ!? なんでもないよ、煮立ってるだけだよ」
「火がついてないぞ」
「じゃ、じゃあきっと空耳なんだよ」
「それは違うぞ」
「そ、それより、もっとお粥を食べてよ」
「なにか俺に隠してるだろ」
「な、なにも隠してないもん」
「……ますます怪しい。……あっ!? 長森向こうで黒猫がタンゴを踊ってる!!」
「えっ、どこどこ?」
「いまだっ! ……うっ、ふたが重い」
「ああっ、浩平、見ちゃ駄目!」
「げ!? なんじゃこりゃああああ!!! 女の人が米の中に埋まってる!?」
「…………」
「『来栖川芹香です』!? はあ、初めまして折原浩平です。……って、そんな場合かあ
あ!! ……長森、これはどういうことだ!」
「……えっと、その、芹だけ用意できなくて、つい」
「…………」
「…………」
「…………」
「……じゃ、じゃあ、そういうことで」
「ま、待てー!!」
「…………」 



初投稿させていただくみのりという者です。
りーふ図書館を伝わってやってまいりました。
いや、ほんとみなさんすごいですね。
これからよろしくおねがいいたします。