雨月物語〜浅茅が宿〜第四話 投稿者: まねき猫
第四話


浩平は住井と共に京に居た。
おりしも都は華美なものが好まれる時期で、以外に売れ行きが良い。
口が上手くそれでいて不思議と憎まれない人柄の所為か、商売人としても評判が良く、まさに天職といえた。
そんなこんなで思いのほか順調にいき、月が開けたら帰ることにしていた。

その日も浩平は仕事の後、のんびりと地黄煎(じおうせん:鎌倉時代からある飴の一種)を口に含みながら一息ついていた。
「こんなにうまく行くとはな。こんなことならもっと早く商人になるんだった」
「……どうでも良いが、お前そんなに甘いものばっかり良く食えるな」
「慣れた」
隣にいた住井の問いに一言で答えると、その原因になった妻のことを思い出した。
顔は綺麗だが、つっけんどんで無表情。周りはそう言って茜と結婚した浩平をいぶかしげに見ていた。
だが、恥ずかしがっているだけで本当は寂しがり屋だと思う。
だから一緒に連れてきたかったのだが、今はつれてこなくて良かったと思っていた。
甘いものはともかく、信州から木曽にかけての山中に盗賊が出るという話を聞いたからだ。
単なる噂と思っていたのに、どうやら本当に出るらしい。
(あいつは足が遅いからな、襲われたら逃げることも出来るかどうか……)
ドラ焼きを手に取りそんなことを考えていると、住井が呆れたようにいった。
「お前ほんとに大丈夫か? そんなものばっかり食って、舌が変なんじゃないか?」
「そんなものとはなんだ! どら焼きといえば由緒正しい食べ物だぞ!?」
「ほんとかよ……」
「文治三年(1187年)武蔵忘弁慶が江戸の寺で傷の治療を受け、出発の際銅鑼を鳴らしていったという……。
その銅鑼を持って焼いたことから銅鑼焼きといわれるんだぞ!!」
茜に聞いたうんちくを偉そうに語る。その手には既に羊羹が握られている……
「で? そのようかんにも由来があるのか?」
疑わしそうな目で住井が問い掛けてくる。
「北条幕府の時代の末に唐国(からくに)から禅僧が持ってきたらしいぞ」
「ほう。じゃあこの、ういろうはどうなんだ?」
「応永初期(1394〜)に三代目の公方様(足利義満)が大年宗奇に命ぜられて明の国から持ち帰ったのが最初だ」
「…………」
妙なことに詳しい浩平に絶句する住井を見て、実は内心ほっとしていた。
(これでネタ切れなんだよな。でも茜には感謝しとくか)
「まあ、そんな事はどうでも良いんだがな」
何とか立ち直った住井の声を聞きながら、残りの羊羹を一気に飲み込む。
「お前もうすぐ帰るだろ? その時ついでと言っちゃなんだが頼まれてくれないか?」
「別にかまわんが……何をだ?」
「近江の国の南って奴に言伝を頼みたいんだ」
「かまわないぞ。お前には借りがあるからな、そんなことならお安い御用だ」
浩平はあっさりと承知すると住井の家に戻り、本格的に帰り支度を始めた。

翌朝。浩平は下総に向けて出発した。
葉月(旧暦の八月、現在の九月ごろに相当)の残暑が厳しいさなかの旅立ちであった。
住井は元々京に住んでおり、買い出しの時以外は家に居るので帰りは一人旅だった。
だが、上京する時に旅慣れていたこともあり、何の不安も無く旅を続けた。
そこに油断があったのかもしれない。
近江の南明義への伝言を済ませると、泊っていけという南の言葉を断り足早に下っていった。
木曽の真坂に差し掛かった時には、浩平の頭には用心するという気持ちが無くなっていた。
それにも理由は在った。今回の関東の不穏な状況を聞いてしまったからだ。
故郷がどこもかしこも戦場と化し焼け野原となってしまったと聞いて、一刻も早く茜の元に帰ろうと思ったからだ。
世間話でさえ嘘の多いのが世の常である。
まして白雲が幾重にも重なっているような遠国のこと、気が気ではなかったのだ。
約束の秋まではまだ余裕があったが、その日も浩平は茜の身を案じ足を延ばしてしまうのだった。


」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

ちびみずか1号「こんにちは♪」
住井「また奴は逃げたか…」
1号「なんかね、めずらしくみじかいSSかいてるんだって」
住井「…まあ、どうせ出来はそれほどでもない。それより感想を書くべきなんじゃないか?」
1号「いまかくと、すこししかかけなくて、えこひいきになるかもしれない。っていってたよ?」
住井「言い訳だ。大体昼間寝てるじゃないか」
1号「ねむりねこ、ってよばれることもあるしね(わらい)」
住井「二週間も休んでて、お詫びにも出てこないとはいい度胸だな」
1号「そうそう、たのまれてたメモよむね」

御無沙汰しております。まねき猫です。
えっと、感想頂いた方々には、大変感謝しております。
多分わたしは書けないでしょうから、わたしの感想は期待しないでくださいね(^^;
それでは、座談会に来られる人には会えることを楽しみにしております(^^)

1号「おわったよ」
住井「休んだことに対する言い訳も無いな…」
1号「わすれてるんじゃない?」
住井「・・・・・・」
1号「それじゃ、またね〜♪」