雨月物語〜浅茅が宿〜第二話 投稿者: まねき猫
第二話


夜が明け住井が迎えに来ると、浩平はさっそく出発した。
見送る茜を見た住井は、にやにやしながら話し掛けてきた。
「なかなか綺麗な嫁さんじゃないか。うらやましいねぇ」
「いいからいくぞ」
怒ったように言うと浩平は足を速めた。
「顔が赤いぞ」
笑いながら住井がからかうのを尻目に、西へ向かって旅立って行った。

その年、享徳四年の夏。上杉方が今川範忠の支援を受け一斉に背き、攻めかかった。
6月、ついに鎌倉公方の館はその戦火で焼け落ち、16日には足利成氏は下総の古河に味方を頼って落ち延びていった。
それらのことが重なり合い、関東はたちまちに乱れ平穏を失っていった。
年寄たちは山の中に逃げ隠れ、若い者は兵士にかりだされた。
今日はここを焼き払う、明日は敵が攻めてくる、噂が飛び交い女子供は西に東に逃げ惑った。

年号が康正に変わったころ、主のいない折原家に客がやってきた。
「茜ぇーっ! 茜も早く逃げた方がいいんじゃない? 一緒に行こう?」
「……詩子」
茜を尋ねてきたのは幼なじみの詩子で、茜が浩平の元へ嫁いできて以来暫く会っていなかった。
茜が家を出ようとしないという噂を聞いて、心配になりやって来たのだ。
「私は……」
茜がためらっていると、詩子は強引に引っ張っていこうとする。
「ほら、行こうよーっ! ここにいると危ないって、みんなそう言ってるよ」
「……はい」
迷いつつも茜が頷くと、詩子は嬉しそうに話し掛ける。
「そうそう。ここに居たって危険なだけで、なあんにも良いこと無いって」
「……はい」
「それにもうすぐ、太田さまが攻めてくるって」
「太田左衛門大夫さまが?」
「そう」

太田左衛門大夫資長(一説には持資)。後に入道して太田道灌。
だが、この時はまだ居城江戸城も無く無名に近いが、山内上杉家の名将・太田資清の子としてだけは知られていた。
この「享徳の乱」で30を超える戦いに参加し、武名を馳せることになる。
「だから早く逃げた方が良いよね」
「手ぶらでは行けません」
「そういえばそうね」
詩子は納得すると、家に勝手に上がり込み荷造りを始めた。
何処へ逃げよう、と独り言を言いながら荷物をまとめている。
「西から攻めてくるんだから、東か北に逃げるべきよね」
「北は危ないです」
茜の言葉に詩子は不思議そうな顔をする。
「どうして?」
「上杉さまや太田さまは古河の公方さまをお攻めになるんでしょう? だから北は危険です」
「なるほど〜。だったら東ね」
古河はこの真間の里から北北東の50Kmほどの位置にある。
「これでよしっと。さ、いこっか」
「……はい」
詩子は、まだ躊躇う茜を強引に連れ出した。
茜がここに居たがる理由も分かっていたが、それでも連れて行くつもりだった。
「ほら、はやく〜〜。日が暮れちゃうよ?」
「まだお昼です」
「そういえば、お昼何食べたの?」
「食べてません」
「お腹空くよ?」
「平気です。最近、あまり食欲ないですから」
詩子は一瞬顔を曇らせたが、すぐにまた話し掛ける。
「じゃあ、向こうに着いたらおいしいもの食べよう? 知り合いが居るんだ上総の国に」
「初耳です」
「そう? 従姉が大宰府のお役人に嫁いだって話はしたっけ?」
「聞いてないです」
「そっかぁ、じゃ、道々話したげるよっ」
明るくそういうと、詩子は茜を引っ張っていった。


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ちびみずか1号「みなさんこんばんは♪こんかいは、いがいとはやかったね」
住井「…おい、まねき猫はどうした?」
1号「いないよ、にげたんじゃない?」
住井「またか…なに考えてるんだ?」
1号「しいこおねえちゃんが、むずかしいんだって。それより、なんかずぶぬれだよ?」
住井「さっきまで海に浸かってたからな…(だから逃げたのか?)」
1号「べつにせつめいするようなことないし、これでおわりね」
住井「いいのか?そんなことで…」
1号「いいんだよ♪じゃあね♪」
住井「いいかげんな…」

1号「ついしんっ! ケット・シーのSSもよろしくね♪」