終わらない日常 〜ブルームーン〜 投稿者: ケット・シー
 気づいたとき、俺は例の空き地にいた…はずだった。
「……なんだこりゃ?」
 空き地であったはずの場所には、家が建っていた。
 新品の家はペンキが剥げているはずもなく、無性に落書きをしたくなったが、また今度にしようと思った。
「……」
 空き地がこのざまじゃ、茜は今どこにいるのか見当がつかない。
「ああっ、浩平!」
 聞き慣れたはずの声が懐かしかった。
「よう、長森。久しぶりだな」
「久しぶりじゃないよっ、今まで何してたんだよ!」
 駆け寄り、長森は俺の上着を引っ張る。
「なにって……、ちょっと…な」
 曖昧な笑みしか浮かべることが出来ない。そんな俺に腹を立てたのか、長森は俺に噛み付いてくる。
「なにがちょっとだよ! まったく…浩平にはしっかりした人が必要だよ……」
 はぁとため息をつき、肩を落とす。
「大丈夫だって…しっかりしたやつ、見つけたから」
 その言葉にきょとんとするが、やがて優しい笑みを浮かべる。
「そっか…じゃ、これからはその人に浩平の面倒を見て貰わないとね」
 良かったね、と言いながら嬉しそうに微笑む。
 そして。
「お役ごめんかぁ……ちょっぴり淋しいかな」
 ぺろっと舌を出す。そんな仕草を見て、みずかのことを思い出した。
「ああそうだ、長森。茜が何処にいるか知らないか?」
「茜って、里村さん?」
「ああ、里村さん家の茜だ」
 首を傾げ、ああそうだとポンと手を打つ。
「今日は詩子さんと会う約束があるって言ってたよ」
「なにっ、柚木だと!」
 面倒なやつがいるな……
 ……ん? 詩子さん?
「しいこさん?」
 間抜けに聞き返してしまった。
「うん、友達だよ」
 恐るべしっ、柚木詩子!
 しかし、柚木と会う、ねぇ…ひょっとして、あそこか?
 俺は心当たりを見つけたので、走りだそうとする。
「ああっ、浩平! 何処行くんだよ!?」
「急用が出来たっ!」
 長森に怒鳴り返し、走っていく。
 だが、俺は長森に伝えなければならないことがあった。
 足を止め、振り返る。
「?」
 長森は不思議そうにこっちを見ている。
「ながもりっ! ……悪かった、ありがとう」
 驚いた顔をして眉をひそめる。
「…お礼言われるような事した?」
「ああ、…待ってくれて、ありがとう」
「? 浩平?」
「……ごめんな」
 最後に呟く。
 疑問を深めている長森をそのままに、俺はあそこに走り出した。


 公園は静かで、あまり人はいなかった。
 それでも行く先は分かっていた。
 屋根のあるベンチ。ちょっとした休憩所。
 そこには……
「ああっ!」
 柚木が俺を指さしながら、驚いた声を上げる。
「やっぱりねぇ」
 なにやら納得したように頷く。
「あいつは噂をすれば現われるようなタイプだと思ってたのよ」
 相変わらず失礼だな、おまえは。
 茜がゆっくりと振り返る。
 実際に逢うと、何と言っていいか分からないもんだな。
 それでも一番に言わなきゃならない言葉が、ある。
「ただいま」
「お帰りなさい…浩平」
 今までの中で一番、綺麗な笑顔だった。


「でもね。なきたいときは、ないてもいいんだよ?」

「でも、なきやんだら、わらってほしいな……」


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 SSは…忘れた頃に投稿する……(意味ないか(^^;)
 こんにちは、ケット・シーです。
 え〜五作目です。次回でお終いですね、はい。
 もっとも、次回は意味ないかも(^^; でも、書いたからには投稿します。
 複重視まくってるな、自分(^^;
 ブルームーンって知ってる方もいるかもしれませんが、
 あり得ない事って意味です(ブルーローズなんかと同じ様なことだと思います)
 用は「あり得ないこと=浩平」がブルームーンでしょうって意味なんですが……
 わかりやすくないな、自分(^^;

 感想をくださった方、ありがとうございます……って、
 これ書いてる時点読んでないです(^^;
 でも絶対読みますので、感想書き損ではないです(私のSSは読み損かも(^^;)

 次回は本気で早く出します(^^;
 では♪