終わらない日常 〜折原浩平〜 投稿者: ケット・シー
 止むことを知らない、雨。

 変わらない静止した世界で、オレとその少女はただ景色を眺めていた。
「あめがふってるね」
「ああ」
「どうして?」
「さぁな」
 降り続ける雨。
 音はない。

 景色が変わる。
 だが、やはり雨が降っている。
「またあめがふってるね」
「ああ」
「どうして?」
「さぁな」
 少女は首を傾げ、オレの腕をつつく。
「やまないあめなんてないよ?」
「……そうだな」
 泣かせたくなかった、本当は。
 なのに……

 また景色が変わる。
 雨。
「どうしてずっとあめがふっているのかな?」
「さぁな」
 じっとオレを見る、大きな瞳。
「どうしてあめがやまないか、ほんとうにわからない?」
「わからん」
 何で降っているのかなんて、オレに分かるはずもない。
 少女はただじっとオレを見つめている。
「オレの顔に答えが書いてあるのか?」
「うん」
 ためらいもなく頷く。
「ほんとうにわからない?」
 真っ直ぐな瞳。
「……ああ」

 また景色が変わる。
 例のごとく、雨。
「……」
 いい加減うんざりする。変わる景色変わる景色、全部が雨だ。
「またあめがふってるよ?」
「そうだな」
 答え方もおざなりになってくる。
「なんであめがふってるのか、じぶんできづかないとだめだよ?」
 少女はオレの腕を引き、じっと顔をのぞき込む。
「……本当に心当たりがないんだよ、オレは」
 そう、オレは……
 そういうと、また景色が変わった。

「なぁ、楽しいか?」
「うん」
 無邪気に笑う。


「永遠はあるよ」

「ずっと、わたしがいっしょに居てあげるよ、これからは」

 永遠の盟約。
 永遠の盟約だ。

 みずかとの。


 オレは彼女をこんな所に置き去りにしてしまっていた。
 だが……
「ここから帰る方法って無いのか?」
「どうして?」
 楽しそうに笑いながら少女は言う。
「……置いてきたやつがいるんだ。帰らなきゃ…いけないんだ」
 こんな虫のいいことを言う自分に吐き気がする。
 少女はオレの顔をじっと見て、分からないと言う顔をする。
「どうして? このせかいはきみがのぞんだんだよ?」
「そうだ。オレが望んだんだ。……自分勝手かもしれないが、もう泣かせたくないやつがいるんだ」
 更に少女は分からないと言う顔をする。
「ないているのはきみなのに?」

 降り止まない雨。
 雨の示すもの、それは……


「きみのこころだよ」


 オレはただ呆然とした。
 泣いているのは俺自身。
「オレは……」
「わたしはきみがなきやむまでまっててあげる」
 にっこりと笑う。
「いや、違うんだ。もう待ってなくていいんだ」
「?」
 不思議そうに首を傾げる。
「待っててくれて、ありがとう。でも、もう大丈夫なんだ。何かあるごとに泣いてたら大人になれないんだよ」
「おとな……?」
「ああ、そうだ。大人だ。オレは大人になりたいんだ。自分で何でも出来るようになりたいんだ。もう、泣かせないために」
 少女はオレをじっと見ている。
 やがて、少女は微笑んだ。その笑顔に長森の顔が重なる……
「もう、だうじょうぶだね」
「え?」
「きみがなきやんだから」
 いつの間にか、静止していた景色は晴れ渡っていた。
「……」
 オレは静止した世界を初めて綺麗だと思った。そして、同時に悲しいとも思った。
 置き去りにされた少女。
 それでも俺を待っていてくれた。
 感謝と謝罪の言葉はいくら言っても足りないくらいだ。
 それでも。
「……ありがとう、みずか。いや、長森」
 少女は微笑んだ。それは最後に見た、少女の微笑みだった。


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 こんにちは、ケット・シーです。

 この話って変だなって自分で思ってるんです。
 永遠の世界って結局浩平が創った物で、
 明確にその世界が存在しているわけじゃないと思うんですよ、私は。
 だからみずか自身は存在しないのでは……って、
 そうしたら氷上シュンはどこ行ったんでしょうね(^^;
 それとも浩平との間に「絆」が成立(?)して、
 永遠の世界には行かなかったとか?
 う〜ん、どうなんでしょうね(^^;

 長々とすみません。
 感想くださった方、ありがとうございます。茜の方で書き忘れてしまった(^^;

 では♪