第六話
月日はたちまちのうちに過ぎ去る。
ぐみの実が赤く色づき、垣根の野菊は美しく咲き始めた。
山々は赤く染まり、風は優しく流れている。
そして九月になった。
九日の朝。
浩平はいつもより早く起き出し、質素な家であるが座敷を綺麗に掃除していた。
「おや珍しい。早く起きただけでも雨が降りそうなのに、掃除までするとはね」
「雨が降りそうで悪かったな。どうせ滅多にこんなことしないよ」
不貞腐れている浩平に由起子はにやにや笑いながら続ける。
「瑞佳ちゃんでも来るのかな?最近仲が良いって噂よく聞くからね〜」
「そっ、そんなんじゃねーよっ。あいつんちには、結構色んな本があるから見にいってるだけだっ」
慌てる浩平が面白いのか、由起子は止める気配がない。目が三日月型になっている。
「そんなこと言って、本当は瑞佳ちゃんに会いにいってるんじゃないの?」
「違うって言ってんだろ! おっ、おれ菊の枝取りにいってくるからっ」
そう言うと浩平は財布を持って家を飛び出していった。
「まったく、素直じゃないんだから。今日帰ってきたらシュン君にも何とか言ってもらわなきゃね」
「まったく、余計な事を。今日帰ってきたら兄貴にもいってもらわなきゃな」
由起子が同じようなことを考えているとはつゆ知らず、浩平はそう言いながら住井家へ行く。
「こんちわーっ。だれかいないかーっ」
「はーい」
返事とともにみさおが現れる。
「どうしたの?こんなに朝早く」
「そんなに早くないだろ?」
「他の人ならともかく、お兄ちゃんだからね」
やけにきっぱりというので言葉に詰まっていると、みさおは追い討ちをかけてきた。
「毎朝おこすの大変だったからねぇ」
「ぐっ、そ、そんなことより庭にある菊の枝もらえないかな?」
「え? あっ、今日は菊の節句だったね。ちょっと待ってね聞いてくるから」
そう言うとみさおは奥に引っ込んでいった。
しばらくして、一緒に出てきたみさお夫婦に許しを得ると二、三本枝をもらって家へ戻った。
菊の枝を小がめにさすと、財布の中身を確かめ浩平はお酒を買いに出かけた。
この村には酒屋が無かったので、隣村へ向かった。
「ちわーっす、瑞佳いるか?」
「どしたの浩平?今日はお父さん居ないよ」
この長森屋の主人は結構学問好きで、四経五書はもちろん古今東西色々な本を集めていた。
浩平とも仲がよく、浩平自身学者でもあることからしょちゅう遊びにきていた。
「今日はおじさんに用があるんじゃないぞ。酒を買いに来たんだ」
「そう言えば今日は茱萸(ぐみ)の節句だよね。今日帰ってくるんでしょ?」
「普通は菊の節句といわないか?」
浩平が呆れたように言うと瑞佳は不思議そうに首を傾げた。
「でもお父さんがそう言ってたんだよ?別に変じゃないもん」
「まあいいや。それより酒くれ、上等のやつな」
「うん、ちょっと待ってね」
瑞佳が用意しているさまを浩平はなんとなく見ていた。
「どしたの?」
「ただなんとなくな」
「 ? 変なの。それよりお父さんが考えを変える気はないかって言ってたよ?」
「『死生交』か?あれでいいんだよ」
「あれって?」
瑞佳の言葉に彼女が聞いてなかったことを思い出し、苦笑しながら簡単に説明することにした。
「鶴の恩返しってしてるか?」
「知ってるよ」
「そんな感じの話だ」
「 ? 他の動物が恩返しするの?」
瑞佳のセリフにやや呆れた顔をしながらも重ねて質問をする。
「恩返しをすることは良いことだよな?」
「そりゃあね」
「そういう話だ」
「なら浩平の言うことの方が正しいよね?」
「そう言っとけ」
瑞佳からお酒を受け取ると、浩平は酒食の材料を買い集め家に戻った。
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まねき猫「皆さんお久しぶりですっ!忘れられてそうで恐いよ〜」
住井「さっさと出さないからだろうが、毎日出したらどうだ?」
ねこ「ストックが尽きるわい。この話だってもうすぐ終わるというのに」
住井「結構なことじゃないか、他の人見習ってどんどん書けばいいんだって」
ねこ「無茶言うな!私にそんなことが出来るわけ無いだろうが!」
住井「自慢にならんこと大声で言うな。・・・1号は何処いった?」
ねこ「ゲスト呼びに行った。ちなみに、先方の都合は聞いてないから断られる可能性もある」
住井「ほう、まあいいや。で、次回はいつだ?感想は?」
ねこ「・・・さぁ?」
住井「おい!さっさと出せ!!」
ねこ「しょうがないだろ家に居ないんだから。田舎から帰ってきたらすぐに出すって」
住井「信じられん!」
ねこ「・・・時に住井君。ここにワイヤーがある。当然切れない奴だ。引いてもいいね?」
住井「勝手にしたらどうだ(ニヤリ)」
ねこ「そうする(グイッ)」
シーーーン
ねこ「をや?」
住井「ふっ。そう何度も同じ手を食うかっ!今度こそ俺の勝ちだなっ!!」
ねこ「しょうがないな。予備のリモコンで、っと(ピッ)」
住井「え゛!?」
ドッボ〜〜ン
ねこ「さて帰るか。それでは皆さん、お達者で〜」