第三話 そしてまた十日ほどがたった朝、少年は部屋を出て居間に姿をあらわした。 それを見た雪見達は少年に尋ねた。 「起き上がっても大丈夫なの?」 「ああ、もうすっかり良くなったよ。ありがとう雪見さん、みさきさん」 「どういたしまして」 「お礼なら浩平君にいった方がいいよ。ほんとに一生懸命だったんだから」 「分かっているよ。彼には感謝している、たとえ死んでも彼の義心に報いるつもりだよ」 「妙なところで義理堅いからね。他人に強要しなきゃ良いけどね」 そう言っていた所で、いつもの様に浩平がやってきた。 少年を見るなり浩平は心配そうに尋ねる。 「もう起き上がっても良いのか?」 「ああ、おかげさまでもう大丈夫だ。といっても起き上がるのがやっとだけど。でも本当に君には感謝している。礼を言うよ」 「別に構わないさ、それより良くなったんなら名前ぐらい聞かせてくれないか?」 浩平は笑いながら気になっていたことを聞いた。 「名前も分からないんじゃ、どうにも呼びづらくっていけない」 「僕は、出雲の国松江(今の島根県松江市)の出身で、氷上シュン」 「出雲? このあいだ、いざこざのあった?」 「そう、そこで僕は月山富田城(がっさんとだじょう)の城主、塩冶掃部介(えんや かもんのすけ)に軍学を教えていたんだ」 ここで、少し当時の出雲のことを説明することにする。 月山富田城はもともと佐々木氏の被官、尼子氏の本拠地であった。 だが、その時の当主尼子経久(あまご つねひさ)は、幕府からの河内への出兵命令に従わなかった。 さらに、段銭(たんせん)上納も支払わないなど中央へ反発しつづけた。 段銭は禁裏(きんり、天皇の住い)の修復や将軍宣下、道路修理に当てるための田畑の面積に応じた臨時特別税である。 文明十六年(1484年)三月十七日、ついに幕府は尼子追討令を発した。 多勢に無勢、尼子経久は敗北し、弟久幸とともに月山富田城を追われていった。 そして出雲守護の京極政経(きょうごく まさつね)が、新たに後任守護代に任じたのが塩冶掃部介である。 しかし、経久も黙ってはいなかった。文明十七年の大晦日の夜、事態は急変する。 ちょうど浩平達がのんびり正月気分に浸っていた頃である。 尼子経久は、年越しのの祭に乗じわずか百人前後の手勢で城に潜入すると、城主塩冶掃部介以下四百人以上を討ち取り再び城主に返り咲いてしまったのである。 この後尼子氏は勢力を伸ばしつづけ、経久の孫晴久が毛利元就に城を追われるまで中国の覇者で居続けることになる。 「そんなことになっていたのか・・・」 シュンの長い話が終わり、浩平はため息を吐いた。 「それで出雲を抜け出してきたのか?」 「いや、そのとき僕は掃部介殿の密使として、近江の佐々木氏綱の所にいたんだ」 「近江に?」 「そう、もともと出雲を治めていたのは佐々木だったから、経久を討つように進言したんだけど・・・」 「承知しなかったのか!?佐々木というと、京極氏や塩冶氏、尼子氏の本家筋じゃないか!」 浩平は思わず声を荒げた。だがシュンは、それをなだめる様に言う。 「氏綱殿は外見は勇ましく見えるけど、内心は臆病者だからね。実行するどころか、僕を近江に足止めしたんだ」 「じゃぁ、抜け出てきたのは近江か・・・」 「それで独りで故郷に帰る途中でこの病気にかかったというわけさ」 「連れとはぐれたんじゃなかったの?」 これまで話についていけなかった雪見が口を挟んだ。 「余計な気を遣わせたくはなかったんだ」 「そうとは知らず、何日も放っておいてごめんなさいね」 「そんなこと気にしなくっても良いよ。結果的には助けてくれたんだから」 「でもほっといたのも事実だわ。ということで、完治するまでここで養生してね」 「まだ完治してないのは事実だしな」 そう言って互いに笑いあう。 「寂しいよ〜」 みさきはやっぱり取り残されていた・・・ その後何日かすごしているうちに、体力も気力も全て元の状態近くまで回復した 」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」 住井「ふぅ。久々の出番かな?」 1号「あぁー―っ!!さくひんかいせつは、わたしのしごとなのにっ!!」 住井「解説ったって、何にもしてないだろうが・・・」 1号「だって、まねきねこがだらだらつづけるだけで、なんにもかんがえてないんだもん」 住井「そういや、伏線張るって言ってたのはどうなった?」 1号「エピローグに、つぎにはなしのふくせんはるんだって」 住井「はい?ってことは、本編には?」 1号「すこしはある、っていってたよ?」 住井「ほんとかよ・・・。そういや最近、上杉謙信や黒田如水の事跡を調べてるだけで、SSかいてないぞ?」 1号「つぎのつぎのつぎのはなしの、したしらべだって」 住井「何を書く気だ?第一、「雨月」シリーズ自体全然書いてないじゃないか。そんな先の話より、次の「浅茅が宿」を書けよな」 1号「とおくばかりみて、あしもとがおるすになってるんだね?いいかげんだからね」 住井「まあ、帰ってから締め上げりゃいいか。それじゃあな!」 1号「またね〜♪」