雨月物語〜菊花の約〜第一話 投稿者: まねき猫
第一話

ときは文明十七年(1485年)、播磨の国加古の宿(今の兵庫県加古川市)に折原浩平という学者がいた。
彼は貧しいながらも清らかな生活に満足していて、書物と身の回りのもの以外はあれこれと物があるのを好まなかった。
彼には年老いた母があった。
孟子の母にも劣らないほどの賢母で、糸を紡ぎ機を織り浩平を支えていた。
浩平の妹は、同じ里の住井家に嫁いでいた。
この住井家は非常に裕福であったが、折原親子の人柄を慕い、何かと援助しようとしたが・・・
「お兄ちゃん起きてる?」
「おう、起きてるぞ。なんだ、夫婦喧嘩でもして帰ってきたか?」
「そんなわけないよ。あの人、とっても良くしてくれるから」
「そうか・・・よかったな、みさお」
「あーっ、お兄ちゃんもしかして嫉妬してるでしょっ」
「ばっばか言えっ、誰が妹に嫉妬なんかするかっ」
「あ、照れてるーっかわいーっ」
「用がないなら帰れっ」
「用はあるよ。この間の話なんだけど・・・」
「いらん、必要ない」ォヵァ
「えーっ、でもさっ、由起子さんの収入だけで生活できるの?」
「おまえがいなくなった分、生活にゆとりができたぞ」
「じゃあ、お嫁さんでももらったら?隣村の長森さんちにちょうどいい年頃の人がいるみたいだし」
「嫁なんてもらえるほどの金があると思ってるのか?」
「結納のことなら心配しなくてもいいようちが出してあげるから」
「要らんことはするな。自分のことぐらい自分でやってけ無い様じゃ、嫁をもらっても養っていけないだろうが」
「ほんとは、瑞佳さんが苦手なだけでしょーっ」
「(なんで顔見知りだと知っている!?)」
「さては図星だなっ。白状したら?」
「やかましいっ、とにかく誰の世話にもならないっ」
「はぁっ、強情なんだから」
という具合にいつも断っていた。

年が改まり正月気分が抜けてきたある日、浩平は同じ里の友人のところを訪ねた。
「へぇーっ、じゃあ、こないだの餅、四半時でみさきさんが全部食ったのか」
「そうなのよ」
雪見の言葉に浩平は目を丸くした。
「(荷台に山のようにつんであったよな?たしか・・・)がんばったな」
「一生懸命がんばったよ。でも雪ちゃん怒るんだよ、ひどいと思わない?」
「何も怒らなくても」
「ねえ浩平君先月の食費どのくらいかかったと思う?」
少しおびえたように話すみさきを見てすかさず助け船を出すが、逆に問い返される。
「へっ?  さあ予想もつかないけど」
「・・・じゃあ俵二表買うのにいくらかかると思う?」
「・・・まぢ?」
「そうよ、ほんとにこの子の食欲には呆れさせられるわ」
顔は笑っているが、目は・・・恐い。
「ううっ雪ちゃんが苛める・・・」
「(そりゃ怒るわ)家計が苦しいのは家だけじゃないのか・・・」
俵一表というのは、一人が食べるお米の一年分に相当した。
「だから、日持ちするお餅ぐらいはとっておこうっていったのに」
「・・・ごめんなさい。あ、浩平君お茶いらない?今いれてくるね」
足早に去っていくみさき。
「逃げたな」
「逃げたわね」

その時、隣の部屋から苦しげな声がした。
「雪見さん、なんかうめき声がするけど?」
「ああ、あれね。西の方からきた旅人らしいんだけどね。連れとはぐれたから泊めて欲しいって言われたの。お侍さんみたいな風格が合ったし、身なりも立派そうだったから泊めてあげたんだけどね・・・」
そこまで話すと、顔を曇らせる。
「それで?」
「その晩からなのよ、高熱を出して寝込んじゃってね。寝起きもろくにできないまま二、三日たったんだけど、ほら何処の人かも分からないし失敗したなって思ってるのよ」
「看病もしてないのか?」
「流行り病だったら大変でしょ?  だからみさきにもあの部屋に入らないように言い聞かせてるの」
といって、台所を見る。・・・なにやら騒音もするが。
「まったく何もしていないわけじゃないけどね」
「みさきさんを心配するのも分からないでもないけど、旅先で一人じゃ心細いだろ?  ちょっと様子を見てみるよ」
そう言って浩平は、隣の部屋へ入ってみた。
(へぇ結構いい服着てんじゃないか)
顔は黄ばみ、肌は黒ずんでやせこけてはいるが、立派な身なりである。ふとその少年がこちらに気づき、苦しそうに話し掛けてきた。
「・・・すまないが、お湯を一杯もらえないかな」
「えっ?ああ、今もって来る」
なんとなく放っておけないような気がして浩平は承諾した。
部屋を出ると、ちょうどみさきは湯飲みを持って戻ってきたところだった。
浩平がそれを一つ手にすると、みさきが申し訳なさそうに言う。
「ごめんね浩平君・・・お茶っぱが何処だか分からなくて、白湯を持ってきたんだけど」
「ちょうどいい。もらってくよ」
そう言うと、再び隣の部屋に入っていった。それを飲むと落ち着いたのか、少年はそのまま寝付いてしまった。
手が空いた浩平は蒲団を架け直してやりながら、時折苦しげな呻き声をあげながら眠る少年を見ていた。
何か懐かしいものを感じながら・・・


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えっと、こんかいから、さくひんかいせつをすることになった“ちびみずか1ごう”だよ。よろしくね☆
このはなし「雨月物語」は、まねきねこがほんやさんで、しょうどうがいしたほんなの。
ほんとは、そのなかのほかのはなしをかきたかったらしいんだけど、これもよさそうだっていったかいたんだって。
でもぜんぜん かんじんなぶぶんにはいれなかた、っていってたよ。むけいかくだね(わらい)
しばらくはこのはなしがだらだらとつづくけど、がまんしてね?よみとばしちゃっていいから。
きょうはこんなとこかな?
それじゃ、またね☆