彼は早乙女と名乗った。 声は声優の"上田祐二"に似ている。 妹は早々に帰してしまったが、そんなことはどうでもいい。 俺が(根拠も無く)師匠だと思ったのは当たっていた。彼は最近脇役を勤め上げた(?)所だったらしい。 彼は常に手帳を持ち歩いている。見せてもらったがそれには女の子のデータでいっぱいだった。 (藤崎?知ってる名前は無いな・・・えっ?これは!?) 何故か、長森さんや里村さん、転校してきたばかりの七瀬さんの名前もある。 「なあ、おまえの知り合いこの中にいないか?」 「そんなこと聞いてどうするんだ?」 「そりゃもっと詳しいこと聞くに決まってるじゃないか。で、どうなんだ?」 「そりゃ居る事は居るが・・・」 俺は聞かれるままに答えて行った。 長森さんのこと、七瀬さんのこと。 盲目の先輩や、口の聞けない後輩のことは初めて知った。 繭ちゃんの名前や住所、電話番号まであるのには、正直ストーカーの素質があるんじゃないかと疑いたくなった。 里村さんのことも聞かれた。他校では結構人気があるらしい。 この間他校の女生徒にも最近の行動を聞かれたらしい。幼なじみだといっていたらしいが本当だろうか? だが彼は、長森さんと折原のことをやけに聞きたがっていた。 どうやら、親友が幼なじみとのことで悩んでいるらしい。 「それでそいつがさ、どーやっても失敗ばかりでさ、まったく見てらんないよ」 「その気持ちはよーく分かる。まったく、早くくっついちまえばいいのにさ」 「分かってくれるか!実は近くの葉っぱ学園にも似たような奴等がいるらしいんだがな・・・」 折原達の事で話しているうちに意気投合した俺達は、深夜遅くまで語り合った。 帰り際。早乙女はこういった。 「ようするに、脇役として主役の手助けをしたいんだろ?」 「主役の手助け?」 「そう、脇役ってのは、主役を引き立たせるためにいる裏方、とはちょっと違うけど引き立て役みたいなものだろ」 「引き立て役・・・?」 「主役の相談に乗ってやったり、そいつが知りたがってることを調べたり。要するにサポートしてやればいいんだ」 「そうか・・・!!」 「但し、そいつが主役に相応しいかは自分で見分けなきゃな」 俺は礼を言い、再会を誓うと意気揚々と帰って行った。 そう。俺は自分に相応しい主役と思うやつを見つけ、その手伝いをしてやるのだ。 何も味方でなくてもいい。 そいつを引き立たせるためなら悪役でも、引っ掻き回す役でもいいんだ!! ・ ・ ・ ・ ・ 「ふう、書き終わった。今日の日記は結構いったな」 俺はそう独り言を言うと、日記帳の空白のままの上半分に線を引き始めた。 意味のない曲線が幾つも折り重なりまとまっていく。 その作業をしばらく続けると、かなり満足のいく出来栄えになってきた。 「よしっ、今日はこのくらいにして寝るかっ」 俺はその日記帳を閉じる。表紙にはでかでかと"よいこのえにっき"と書かれている。 この十数年続けている重要な儀式だ。 初めの頃と比べると絵もかなり上達している。 来年の十五周年記念には盛大に祝うとしよう。 俺は日記帳をしまうとベッドに横たわり明かりを消した。 明日からはまた一段と忙しくなるだろう。 そして俺の意識は緩やかに、だが確実に遠ざかったいった。 ・ ・ ・ ・ ・ 「何とか間に合ったな」 いつも通りに駆け込んでくる二人。 「そうだね、明日はちゃんと起きてよっ」 「おまえがもっと早く起こしにくればいいんだろうが」 「わたしはちゃんと早めにいってるよっ!」 「なんだとっ、だったら何故いつもいつも遅刻寸前になるんだっ!」 「浩平が起きないからでしょっ」 「俺のせいだとでも言うのか!」 「だってそうじゃないっ!」 「またなの?あんた達。いいかげんにしたら?」 そしていつもどおり言い争う。セリフまで同じなんじゃないか?どうやら七瀬さんにも止められないようだな。 しょうがない、俺がさりげなく仲裁してやるか。この二人にはうまくいってもらわなければならないしな。 それに俺は脇役の星を目指してるんだから、師匠の言う通りサポートしてやろう。 「なにおーっ」 「なによーっ」 「ふかーっ」 「うーっ」 「ようおふたりさん。朝から仲がいいね〜」 「すっ住井っ」 「・・・・・(声がない)」 何故か黙り込む二人。 俺は朗らかな笑顔を浮かべながら二人に話し掛けた。 「折原、毎朝起こしに来てくれるんだから少しは感謝しなきゃなっ」 「あっ、ああ・・・」 「長森さんも、こいつのことは分かってるだろ?だからそう目くじら立てないで」 「そっ、そうだね・・・」 「ほら気持ちのいい朝じゃないかっ。今日も元気よくいってみようっ!!」 ふっ、完璧だ。これで二人とも朝っぱらからいがみ合ったりはしないだろう。 こうやってさりげなく助けてやればいいのか。結構楽かもしれないな。 ありがとう師匠!俺はこれでやって行けそうですっ!! 「はっはっはっはっは。これで、俺は脇役の星だ!!」(声に出てる) 「・・・・・」 「・・・・・」 「・・・なあ、長森」 「・・・わたしもそう思ってたとこ」 「・・・あたしも賛成」 「「「住井(君)昨日より変」」」 」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」 こんばんわ、まねき猫です。紛失物が見つかったのでやっとアップできるよ〜 「自業自得だ、って前も言ったな。床に転がしとくからだろう」 でも猫が蹴飛ばして、机の下に潜り込むなんて予想のしようが・・・ 「因果応報というやつだ。部屋で猫とじゃれてるからそうなる」 ・・・・・ 「どうした?いきなり黙り込んで」 さて!何とか終わったということでっ!次の作品はシリアスでいきます!!前に予告した『雨月物語』ですぅ〜 「・・・ごまかす気だな?謝らんで良いのか?」 うぅっ、まもちゃんがいじめるよ〜 「まもちゃんはやめんかっ!川名先輩の真似しても許さん!!」 ちっ、駄目か・・・では次回も見かけたら読んでやってくださいね〜 「聞いてるのか!勝手に終わらすなっ!!」 でわ〜☆ P.S.私信ですぅ〜 吉田さん&まてつやさん、メール確かに届きました〜 ありがとうです〜