七瀬さんの進め!オトメ大作戦!!(第4話) 投稿者: 将木我流
<前回までのあらすじ>

オトメになるための修行をする決意をした七瀬さん。
そしてそれにつきあわされる事になった浩平。
果して二人の行く末は!?
…って、やっぱり前回と同じ説明文なわけ〜?(^^;;
「つまり…内容がへちょいってワケね…」
うぐっ!い、いやぁ七瀬さん…これは手厳しい…(^^;;;;

Operation4『オトメの挑戦!』

『演劇部』…
俺には全く縁のない場所だと思っていた。
だが…まさか、こんな形で訪れる事になろうとは…

「それはいいけど…折原、あんた演劇部に知合いなんているの?」
「え?ああ、いるぜ。作者の都合でな」

それを言うんじゃない!(^^;;

「ふ〜ん、そうなんだ。それじゃあ…行きましょうか」
「おう」
決意した二人は、演劇部のドアを開けた。
「失礼しま〜す」
「失礼します」
「あ、あれ?その声は折原くん、それに七瀬さんまで…」
そこで出会ったのは、二人にとっては意外な人物だった。
「えっ!?み、みさき先輩!?」
「か、川名先輩って演劇部だったんですか?」
尋ねた七瀬にみさきはふふっ、と微笑んで
「違うよ。私は手伝いをしてるんだよ」
と言った。そして次の瞬間悲しげな表情を浮かべて
「雪ちゃんに強制労働させられてるんだよ。『借金返せないならそ
の身体でたっぷりと働いてもらおうか。うへへ…』って…」
「だーれがそんな事言ったってぇ!」
そんな入口での会話に気付いた『雪ちゃん』こと深山雪見が、
「第一、演劇部を手伝うから借金減らしてくれって頼んだのはみさ
き、あんたでしょうが」
「冗談だよ、冗談。それにこんな話誰も信用しないって、ね?折原
くんに七瀬さん?」
「…………………は、はぁまあ…」
「…………………そ、そうですよねぇ、あ、は、ははは…」
「…ちょっと、その間は何なわけ?」
ジト目で七瀬と浩平を見る深山。
「いや、そ、その…そ、それより深山先輩。澪はいますか?」
「え?上月さん?上月さんなら…」
と、その時。
ぐいぐい、と浩平は制服の袖を引っ張られた。そこを見ると…
「上月さんならそこにいるよ?」
「…そうでしたね」
ぺこり、とおじぎをした澪を見て浩平がつぶやいた。
「なあんだ、浩平の知合いって澪ちゃんだったんだ」
「何か不満か?」
「ううん、別に…でも、澪ちゃんって演劇部だったんだ」
などと会話をしていると、澪はその会話の間に書いたと思われるス
ケッチブックを見せた。
『何の御用ですの』
「ああ、実はな…うぐっ!」
澪の問いかけに答えようとした浩平に対して、七瀬は素早く後ろに
回り込み右手で浩平の口を塞いだ。
(何だよ七瀬!このパターン前にもあったぞ!)
(だから言ったでしょ!人前でベラベラしゃべんないでよ!)
そんな二人の様子を見ていた澪は『?』という表情を浮かべて首を
傾げていた。
「あ、えっとね澪ちゃん。実は澪ちゃんにちょっとお話があるの」
こいつにしゃべらせたら何を言うかわからん、とでも思ったのだろ
うか、右手で浩平の口を抑えたまま七瀬がしゃべり始めた。
澪は『はあ、そうなんですか』といった表情だ。
「それでね、ちょっとお話したいんだけど…ちょっと人が多いと話
し辛いんだ…だから、ちょっといいかな?」
「………」う〜ん…
澪はしばらく考えると、顔を深山先輩に向けた。そしてスケッチブ
ックに何か書こうとした時、
「別にいいけど…あんまし時間はかけないでね」
まあ、七瀬と澪の会話を聞いていれば大体の事情というのはわかる
ものである。
「本当にすいません、深山さん…」
七瀬は深山に向かって頭を下げた。
「まあ、話があるってのにダメって言うのも何だしね」
「じゃあ先輩、ちょっと澪を借りてきます」
そう言って浩平は七瀬を澪を引き連れて部室を後にした。

そして浩平の先導により3人がたどり着いたのは…屋上だった。
この時期の屋上にはやはり人気(ひとけ)はない。春や夏にはなか
なか人気(にんき)の高い場所なのだが、その理由はやはり…
『寒いの』
という事であろう。ちなみに、今まさに澪は『寒いの』と書かれた
スケッチブックを浩平に見せていた。
「悪い…でもすぐに終わるからちょっと我慢してくれ、な?」
「………」うん。
「…でも、本当に寒いわね」
「そりゃあ、もう冬だからな。寒くて当り前だ」
「ロマンも何もない言い方ね」
「こんなくだらない会話でロマンを求めてどうする…」
そんな会話をしていると、澪が浩平の制服の袖を引っ張った。
「…ん?ああ、悪い悪い。早く済ませるんだったな」
「………」うん。
と澪がうなづいた所で、浩平は話を切り出した。
「実はな、澪。お前に七瀬の演技指導をしてやってもらいたいんだ
が…」
『どうしてなの』
「どうして…って、まあ色々と理由はあるんだが…ダメか?」
「………」う〜ん…かきかきかき。
『できないの』
「なんでだ?お前、一応演劇部なんだろ?」
…こくり。
「だったらなんでだよ?」
…かきかきかき。
『まだまだなの』
「まだまだ…って、何がだ?」
『えんぎ、うまくないの。今練習してるの』
それを書き終えると、澪は急いでスケッチブックの次のページを開
いた。そしてさらさらと書き込んで、
『とても教えることなんてできないの』
スケッチブックを浩平と七瀬に向けた。さらに澪は次のページを開
いて書き込む。そして再び二人に見せる。
『無理なの』
そして再び書き込もうとした時、
「…わかったわかった」
浩平が澪を静止させた。
「う〜ん、澪に頼むのは諦めるか」
「ええっ!?浩平!なんとか澪ちゃんを説得できないの?」
「…でもなぁ、こんなに嫌がってるのに無理に頼んでもなぁ…」
「う、う〜ん。そうだけど…」
と言って考え込む七瀬だったが、しばらくしてはぁ、とため息をつ
いて「仕方ないか…」とつぶやいた。
「…だけど、これで振りだしか。演劇部がダメだとなると…」
「ああ、そうだな。何か別の方法を考えなきゃいけないなぁ」
う〜ん、と考え込む浩平と七瀬。
ひゅぅ、と冷たい風が屋上を駆け抜ける。とその時、浩平はぐいぐ
いと制服の袖を引っ張られた。もちろん澪である。そして澪はスケ
ッチブックを2人に見せる。
『いいこと思いついたの』
「いいこと?いいことて何だ?」
『頼んでみるの』
「…頼む?一体誰に?」
『深山せんぱい』
「え?深山先輩にか?…でも、いいのか?」
『自信はないの』
「…おいおいおい。大丈夫なのかよ…?」
『それしか思いつかないの』
「まあ、本人に直接尋ねた方がいいとは思うけどね…」
『頼んでみるの』
「わかったわかった、じゃ、部室に戻るか」
「そうね」

そんなこんなで、再び場所は演劇部の部室に戻る。
「あら?お話は終わったの?」
部室に入ると、深山先輩が台本らしきものを読んでいた。彼女は浩
平らに気付くと台本を机の上に置いて浩平達の方に近付いてきた。
「…ほら、澪」
「………」う〜っ。
ちらりと澪は先程書いた『自信ないの』のページを浩平に見せた。
「自信ないって…言い出したのは澪だぞ。それに深山先輩に頼める
のは澪しかいないんだからな」
「………」う〜っ。
どうしよう、という表情を浮かべながらも澪はサインペンのキャッ
プを開けてスケッチブックに書き始める。
『せんぱい』
「…ん?何かしら上月さん?」
と尋ねられた澪は、そこで筆(正しくはサインペン)の動きを止め
てしまった。
「どうしたの?」
と深山先輩に聞かれ、困ったような表情を浮かべるような澪。書こ
うとしても筆が進まない…
『せんぱいに、おね…』
「おね…?」
そこで澪のペンは動かなくなった。
言いにくいならぬ、書きにくいというやつであった。
「…上月さん、それから?」
「………」う〜っ。
「あ、あの…俺が話していいですかね?」
澪の姿にたまりかねた浩平が深山先輩に尋ねた。
「えっ?あ、ま、まあ別にいいけど…」
訳がわからない深山先輩は、とにかく話を聞かせてくれないかな、
と浩平に頼んだ。

「…演技指導?」
「ああ、七瀬の奴に演技指導してもらえないかな…ってね」
「でもどうしていきなり…?あ、まさか七瀬さん演劇部に興味ある
の!?」
「えっ!?あ、えっと…」
急に聞かれて答えに困る七瀬。だが深山先輩はそんな様子の七瀬な
ど構わずに話を進めていた。
「ああ、演劇部ならいつでも入部OKよ。よかったらここに入部届
があるから、名前書かない?あ、折原くんもついでに」
「なっ…なんで俺も!?」
「今裏方の人が足りないのよねー。それに折原くんって結構力あり
そうだし…じゃ、そーいうことで」
「…って、書かないでください!」
「えー」
「『えー』じゃないです!」
残念そうな顔をする深山先輩に浩平は叫んだ。
「う〜ん、残念だなぁ〜。まあ、演劇部はいつでも入部可能だから
興味が出たら入ってね」
「は…はぁ…」
「ところで、今日は何の用なの?入部願いじゃなかったら、何?」
「…だから言ったでしょう…演技指導だって…」
「だから何で?」
まあ、深山先輩のその質問は至極当然だろう。いきなり演劇部にや
ってきて『演技を指導してくれ』なんて言われたら、普通は誰だっ
て勘違いすると思うのだが…
「う〜ん…それは説明すると長くなるんだが…」
「別に私は構わないわよ。説明してくれるかな折原くん?」
「え?え〜っと…実際に指導を受けるのは七瀬だから、説明は七瀬
の方から…」
「…何とも情けない補佐ね…」
はぁ、とため息の七瀬。
「とにかく、どっちでもいいから説明してくれない?」
「…じゃあ私がお話しします」
と言ったのは七瀬だった。
「あ、あの、でもあんまし人前で話すのも何なんで…」
「え?人前では話せないような事なの?」
「できればあんまり…」
「…じゃあいいわ。奥の部屋に行きましょう。そこでなら話してく
れるわよね?」
「あ、はい」
「じゃ、そうしましょう…七瀬さん、折原くんはどうする?」
と尋ねられて、七瀬はう〜ん、と考えた後に
「いいです」
と言った。
…それは俺は邪魔という事か?と聞いてみたかったが、場所が場所
だったのでやめておいた。命拾いしたな、七瀬…(?)
「そう?じゃあ澪ちゃん、折原くんが入ってこないように監視して
おいてね」
「監視って何ですか!?」
と叫んだ浩平の横で澪がうんうん、と大きく2回うなづいた。

そして深山と七瀬は部室の奥の部屋に入っていった。
残された浩平はぼーっ、と立ってるしかなかった。その横では澪が
じーっ、と浩平の顔を見上げていた。
『監視なの』
じーっ…
じーっ…
じーっ…

5分経過…

じーっ…
『監視なの』
じーっ…

10分経過…

「長いなぁ…」
じーっ…
『監視なの」
じーっ…

15分経過…
「なぁ、澪。ちょっといいか?」
『監視なの』
「ちょっとお前のスケッチブック貸してくれない?」
『監視なの』
「伝言を書きたいんだ、深山先輩に」
そう言った時に、ようやく澪の『監視なの』が外れた。そして澪は
白いページとサインペンを浩平に渡した。
「悪いな澪。さてと…」
と言って浩平はスケッチブックにサラサラ、と書き始めた。
「…なぁ澪、2枚使っていいかな?」
浩平の問いかけに澪はうん、と頷いた。
「悪いな。じゃあ…」
サラサラと文字を書く浩平。
「よし出来た。じゃあ澪、伝言お願いな」
浩平は澪にスケッチブックを差し出した。澪に返したスケッチブッ
クの最初のページには、
『折原からの伝言です。次のページを見て下さい』
と書かれていた。
「じゃ、頼む」
と頼まれた澪はとてとてと奥の部屋に歩いて行った。
さぁて、あの伝言はどう出るかな…?そんな事を考えながら浩平は
澪の背中を見送った。

こんこん、とノックをする澪。しばらくして中から深山先輩が出て
来て澪が持っているスケッチブックに気付く。それを見て深山先輩
は浩平の方に視線を向けた。浩平はうん、と首を縦に振る。
「…澪、これ、ちょっと貸してくれる?」
「………」うん。
「悪いわね。すぐに返すわ」
澪にそう告げると深山先輩はスケッチブックを持って再び部屋の中
に入っていった。
「…どうなるかな……」
「………」じ〜っ。
部屋の中の2人が気になる浩平の横で、澪は再び監視モードに入っ
た。しかし、それはほんの2分程度で終了してしまった。
なぜなら、深山先輩が奥の部屋から出て来たからだった。
部屋から出て来た深山先輩は澪にスケッチブックを返すと『七瀬さ
んから話は聞いたわ』と浩平に言った。
「あの…先輩。それで七瀬の件は…?」
浩平の問いに深山は一拍の間を開けて、言った。
「…ま、いいでしょう。手伝ってあげましょうか」
「本当ですか!?」
「そのかわり…約束は忘れないでよ、折原くん?」
「うっ…!ま、まあそれは…」
言葉に詰まる浩平。とその時、七瀬も奥の部屋から出て来た。
「おう七瀬、よかったな!」
「…えっ?あ、うん。良かったよ、本当に…」
「………?」
浩平には、七瀬が慌てて笑顔を作ったように見えた。何でだろう?
と思ったが、きっと気のせいだろう、と思うことにした。だって、
これでオトメへの道が開けたのである。嬉しくないはずがないのだ
から…
「七瀬さん。練習は明日からね。練習メニューはこっちで準備させ
てもらうから」
「あ、はい…本当にありがとうございます」
「いえいえ…そのかわり、覚悟はしといてね」
「はっ…はい…」

「雪ちゃん。本当にいいの?」
二人が帰った後の演劇部部室で、みさきが深山に尋ねた。
「本当に…って、どういうこと?」
「だって七瀬さんって……あっ」
言っちゃマズイかな?と直感したみさきは思わず手で口を塞いだ。
「…みさき、まさか聞いてたの?」
「別に盗み聞きするつもりはなかったんだよ。ただ、ドアの近くで
ずーっと作業してたら聞こえてきただけで…」
「…確信犯ね、あんた…」
「え〜っ?そんなんじゃないよ〜」
嘘おっしゃい、と思ったが、敢えて言わない事にした。
「まあ彼女も真剣だったし…少しは手助けしてもいいかな、って思
っただけよ」
「ふぅ〜ん」
「それに…思わぬ収穫もあったしね」
「収穫?」
首をひねるみさきに深山はふふふっ、と微笑んだ。

一方、こちらは帰り道。
「よかったな七瀬。先輩のOKがもらえて」
「うん、そうだけど…でも…」
「でも何だ?」
相変わらず七瀬は浮かない顔をしていた。
「深山先輩…一体何をやる気なのかしら?」
「さあ?それは明日にならねーとわかんないじゃないかな」
正直な所『それくらい聞いとけっ!』と思ったが、深山先輩には何
か考えがあるのかもしれないしな…ま、いいか。
「これじゃ折原の補佐の意味もなくなるわね」
「お、なら俺はこれで御役御免になるのかな?」
ちょっと期待した浩平だったが、七瀬の返答はというと…
「残念ながら、私の修行が完成するまでは私の補佐だからね」
「あ、そ…」
浩平、思わず『ちぇっ…』
「ところで浩平、深山先輩への伝言って、何なの?」
「伝言?ああ、アレか。気にするな」
「…気にするなって言われたら余計気になるんだけど…」
七瀬のその気持ち、よくわかるぞ(笑)
「それでも気にするな。それよりもお前は明日からの特訓の事だけ
を考えろ。いいな」
「うっ、うん…」
浩平はそう言うものの、気にするなという方が無理な注文だった。

…やがて、二人はそれぞれの家路についた。
全ては、明日から始まる…本当にぃ?(^^;;


"次回予告!"

果して深山先輩の練習メニューとは何なのか!?
そして七瀬と、なぜか浩平の前にも立ち塞がる試練!

普段とはうって変わって、演技には厳しい深山先輩!
セットの影から心配そうに見守る澪ちゃん!
そんでもって、やっぱりなぜか出て来るみさき先輩!(笑)
それと全然出て来ない瑞佳とか茜とか住井とかの出番は…!?
作者『出したいんだけどねぇ…(^^;;』

そして…事件は怒った、もとい、起こったのだった…

作者の遅筆にもめげずに読んで下さるみなさまに感謝しつつお送り
する、次回『七瀬さんの進め!オトメ大作戦!!』
Operation5『オトメの素質』に進め!七瀬さんっ!!

<追伸>
相変わらずなのですが…
諸処の事情により内容が予告と異なる場合がありますので、その点
につきましてはあらかじめご了承下さい(爆)

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どもども。研究室から失礼、の将木我流です。
第4話、なんとか公開にたどり着きました〜。

ところで、『どうして浩平はすでに澪が演劇部員だと知っているの
ですか!?』という疑問が浮かんだ方がいらっしゃるかも知れませ
んが…まあ、それはご愛嬌という事で…(^^;;
それを言ったら、どうして七瀬とみさき先輩・澪ちゃんが顔見知り
なのかというのもかなり謎のような気が…(^^;;

さて、次の第5話なのですが…実はラストを悩んでます。
『ONE』本編の七瀬シナリオとシンクロさせるか、させないか。
シンクロしたら、次回ラストで『あの』事件の発端が起こります。
シンクロしなかったら、七瀬さんの身にとんでもない事が…(^^;;
僕的にはシンクロさせよっかな、って思ってるんですけど、それも
なんだかうーろんがましい…もとい、おこがましいような気がする
のですが…う〜ん。どうしようかなぁ〜。考えてときます。

…それにしても、なんだか自分のSSって時代を逆行してるような
気がしてなりません…シリアスなSSが数多く出ている中で僕のと
言えば、作者の頭の中のようなすっからかん…あうぅぅぅ(;_;)
でも、僕なりに頑張っているので、そこの所はご勘弁を〜。

それでは、これで失礼します。
毎度の事ながら、叱咤下さい。激励もついでに下さい。では。